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2020年9月

2020/09/29

アレチウリ爆発的繁茂

昨日の散歩のときに川沿いの藪で遭遇したのですが,昨年までほとんど目立たなかったアレチウリが爆発的に繁茂していました.これはかなりマズイ状況です.

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もともとは畑の休耕地でセイタカアワダチソウの群落があるところだったのですが,ここ数年は衰退してクズに覆われていました.困ったものだと思っていたら,今年になって急にアレチウリに覆い尽くされ,さらに困ったことになりました.

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鋭い棘があり,高木にも巻き付いて枯死させてしまうので厄介です.もちろん特定外来生物に指定されており,駆除法も確立しているようです.しかし,田んぼの疇の雑草すらラウンドアップで処理するほど人手のない農村の現況では駆除に人手をかけることはできず,このあたり一帯に広がりそうで不気味です.在来種のカラスウリが絶滅するかもしれないと心配です.

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2020/09/28

ようやく秋の気配

長かった夏と秋の長雨がようやく終わり,この秋初めて大陸育ちの移動性高気圧が日本列島を覆いました.今日は気温は高め,かつ雲が湧きやすかったのですが,近場の里山を2時間ほど散歩.

ソメイヨシノは落葉が進み,もう完全に葉を落としてしまった個体も多くなっています.夏の高温の影響でしょうか?残念ながら今年はソメイヨシノの紅葉はもう望めないと思います.

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森の中はまだほとんど夏のような景観ですが,ガマズミは赤い実をつけ,足元にはクリのイガがたくさん落ちていて,さらにキノコがそこここに育っています.落葉が始まると一気に景観が変わるので,秋を実感できるようになるでしょう.

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渡りの途中のサシバを何羽か見かけました.山からはカケスが下りてきて,森の中でジャージャーと鳴いていました.

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2020/09/26

コブハクチョウの家族

心配していた台風は大きく東に逸れ,海水温が低かったのかまもなく温帯低気圧に変わり,風も雨も大したことがありませんでした.しかし台風一過とはいかず,台風の後を前線上進んできた低気圧の影響で,湿りがちの天気が続いています.昨日は午前午後ともに外出の用があったのですが,ずっと細かい雨が降り続いていました.

今日は朝から雨が降っていなかったので,ちょっとだけ近所を散歩.しばらく足が遠ざかっていた川に行ってみると,ちょうど橋の辺りでコブハクチョウの家族と思しき集団5羽と出くわしました.そのうち1羽はまだみにくいアヒルの子状態なので当歳子,2羽も嘴の色が薄いので昨年生まれの子のようでした.

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橋の上から餌を投げる人がいるらしく,それを期待してこの辺りにいるのではないかと思いますが,私たちが見ている間は羽繕いに余念がありませんでした.大型で力の強い外来種なので,在来種の繁殖を阻害したり食害が発生することが懸念されていますが,当地ではまだ目立った事件は起きていないようです.

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S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像

散歩コースにしている遊水池に行ってみると,だいぶカモの数が増えていました.約半分は換羽前のコガモ,残りがカルガモですが,オナガガモも1羽入っていました.まだ定着しているわけではないと思いますが,今シーズンはどのような種類のカモがどの程度来てくれるのか楽しみです.

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2020/09/22

チカラシバとキクイモ

ようやく日中散歩できる程度の気温になり,自宅の周辺を歩くようになりました.夏の間に茂った草の丈が高くなり,視界が遮られて遊水池の水鳥たちの姿を十分に見ることができないのが残念.それにしてもオオブタクサというのは背が高くなるのですね.人の背丈よりもはるかに高く,3 m ほどにもなるので,これが道の両側に群生しているとまるで竹矢来の中に居るよう.この草の花粉症の人も多いのではないでしょうか?

茂るだけ茂ったクズの花は終わり,今はキクイモの花がまだ残っているのですが,その一方でチカラシバは力強く穂を伸ばしています.

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台風が近づいているのがちょっと心配.

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2020/09/12

Refsort on Excel v2.11 Released

辞書参照型ソーティング・フィルタ Refsort/Ruby(新しいほうから *1 *2 *3 *4 *5)を表計算ソフトの Excel から使うためのインターフェースである Refsort on Excel v2.11 をリリースしました.

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先月,8月8日に Refsort/Ruby v3.20 のリリースと同時に Refsort on Excel v2.10 もリリースしたのですが,その後軽微なバグが見つかったので,改訂版をリリースしたものです.機能やインターフェースなどに変更はありません.

Refsort/Ruby とそれに関するソフトウェアのアーカイブを Microsoft One Drive に置いています.画面右側コラムの "Archive" の中の "Refsort/Ruby Archive" をクリックしていただくと,私の OneDrive 上に設けたライブラリが開きますので,そこから過去分も含めてファイルをダウンロードすることができます.

来月初めには,Refsort/Ruby 3.22 をリリースするつもりです.バグの修正や機能の追加は一切含まれておらず,ソースコードを多少スリムにしただけですので,現状の v3.20 を使い続けても構いません.

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2020/09/07

PCR 検査狂想曲

ここ半年ばかり,新型コロナウィルスこと SARS-CoV-2 に関する報道があふれていて,中でも感染の有無を判定するための PCR 検査に注目が集まっています.これまでメディアも一般の人も PCR というものがどういうものか,全く知る機会が無かったことに加えて,この種の検査につきものの統計的過誤に対する理解が(いまだに)低いため,狂想曲のようになっています.

PCR をはじめとする遺伝子増幅法には,今から15年ほど前に仕事で関わったことがあるのですが,その話は置いておいて,今回は PCR 検査結果の解釈について議論したいと思います.キーワードは母集団とその事前確率です.

PCR(ここでは RT-PCR のこと)検査の品質は,プライマーの選択や塩基長,試薬メーカー,温度サイクルのパラメーター,バイオクリーンルームの運用,検体の採取法や取扱いの巧拙などで変わるのですが,ここでは感度 70 %,特異度 99.9 % とします.

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Belova59によるPixabayからの画像

まず,パンデミックの初期段階で全国民を無作為抽出して 10 万人の被験者を選び,PCR 検査をしたとします.このとき感染率はまだ低いでしょうから,全国民の 0.1 % が感染していると仮定しましょう.つまり母集団は全国民,事前確率は 0.1 % です.

次にパンデミックが進行した段階で,発熱などの症状がある人だけを対象に再び 10 万人を対象にして PCR 検査を行ったとします.このときの事前確率はそれなりに高いはずなので,例えば 10 % としてみます.すると検査結果は以下のようになります.

事前確率 0.1% 10%
被験者数 100,000 100,000
感染者数 100 10,000
真陽性者数 70 7,000
偽陽性者数 100 90
陽性者合計 170 7,090
適合率 41.2 % 98.7 %
真陰性者数 99,800 89,910
偽陰性者数 30 3,000
陰性者合計 99,830 92,910
偽陰性率 0.03 % 3.23 %

まず注目していただきたいのは適合率です.これは陽性と判定された人のうち,本当に感染者である人の割合です.1 番目の検査でこれが 41.2% しかないということは,「あなたは陽性です」と言われたとしても,本当に感染している確率は 4 割しかないことになります.従ってこのような段階で陽性者をすべて隔離したり入院させたりすべきかどうか,そのために医療資源がひっ迫するのであれば非常に判断が難しいでしょう.現実には陽性者に再検査,再々検査を受けてもらうことになると思います.ところが 2 番目の検査では適合率は 98.7 % ですから「あなたは陽性です」と言われたらまずほとんど確実に感染していると言えるので,直ちに必要な医療措置を取る必要があります.

次に注目していただきたいのは最後の項目の偽陰性率です.これは陰性と判定された人の中に紛れ込んでいる感染者の割合です.1 番目の検査では 0.03 % に過ぎないので,「あなたは陰性です」と言われたらほぼ確実に感染していないと言えますから,陰性者は無罪放免,場合によっては「陰性証明(非感染証明ではない!)」なるものを出してもよいでしょう.しかし 2 番目の検査では偽陰性率は 3.23 % もあるので,100 人の陰性者の中には実は 3 人は感染者がいることになります.これではとても陰性証明など出せないでしょう.

このように,全く同一の検査を行っても,母集団の事前確率によって結果の解釈を大きく変えなければなりません.問題は,感染症の場合,事前確率は事前にはわからない点です.これは事後に推定するしかありませんので,パンデミックの進行途中では手探りで複数の事前確率を想定しながら慎重な解釈を行うしかありません.ここに専門家の間でも大きな意見の差異が生まれる原因があります.

特に母集団の選び方は重要です.日本は PCR 検査資源に乏しいため,できるだけ事前確率が高い母集団(有症状者や夜の街関係者)を選んで検査を行う傾向にあります.すると適合率は高くなるので医療措置を取るかどうかの判断はしやすくなります.しかし同時に偽陰性率も高くなるので,陰性者には複数回の再検査を行って検査資源を消費することにもなっています.

一方,巷には無症状者にも幅広く検査を行う意見も強いのですが,これは事前確率が低い母集団で検査しろと言っているわけなので,適合率が低くなり,陽性者への再検査の必要性が高まり,ただでさえ乏しい検査資源がさらにひっ迫します.このあたりの一般への説明は大変難しいので省略しがちですが,私はワイドショーなどの時間が取れる番組では丁寧に説明すべきと思います.もちろん検査資源が膨大にあれば話は別です.しかし RNA の検出が簡単ではないことはあまり知られていないのではないでしょうか?

武漢では SARS-CoV-2 に対する PCR 検査の特異度は 99.997 %,オーストラリアでは 99.97 % あったという報告もあります.試しに武漢の数値を入れてみると,事前確率が 0.1 % であっても適合率は 95.9 % という高い値になるので,陽性判定は非常に楽になります.しかし偽陰性率はほとんど変わらず 3.23 % のままです.偽陰性率を下げるには感度を大幅に,例えば 95 % 以上に上げるしかないのですが,これは現在の遺伝子増幅法ではなかなか難しいようです.

当座の私の結論は,今からでも遅くないので PCR 検査資源を拡充すること,特に民間の臨床検査センターの質と量を向上させること.さらにこれまで行ってきたすべての検査データを一元管理できる体制を整え,事後の検証を厳密に行うことです.検査と医療の間をつなぐには再検査を増やして統計的過誤を減らすしかありませんので,検査資源の拡充と統計値の随時更新が最も本質的です.

一般社団法人「日本疫学会」のこのページに Q and A が掲載されていますので,参考にしてください.

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2020/09/06

年金請求書が来ちゃった

先週ポストした記事で介護保険証が来ちゃったという話をしましたが,今度は「年金請求書」というものが来ました.65歳というのはいろいろな制度の節目になっているようです.

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このはがきに記入して提出しないと年金を受け取ることができません.また年金を繰り下げて(その分増額されて)受け取るためには,該当箇所にチェックして提出しなければなりません.どうしたものかなぁ?受け取りを繰り下げると年金は増額されるのですが,その分,健康保険や介護保険の保険料が増額されるので,手取り額があまり増えないことはあまり知られていません.これら保険の会計は大変苦しいので,取りっぱぐれがないように非常に細かく保険料体系が作られています.

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2020/09/05

台風のエネルギー

一昨日ポストした記事では,台風のエネルギーについて大雑把に評価して,それが従来言われてきたものとオーダーが異なるという悩みを書きました.その後もう少し視野を広げて評価をやり直したところ,だいぶ従来の定説との整合性が得られるようになりました.

まず従来の定説を調べてみると,以下の3つが見つかりました.

  1. 一昨日の記事に載せた「台風の正体」(朝倉書店,2014年)に 4.5 x 10^19 J という記載があるそうです.
  2. 国土交通省中部地方整備局が設置した「中部地方の天変地異を考える会 第6回検討会」による「天変地異のエネルギー(試算値)(2006年)」があります.オリジナル資料には当たれないのですが,1976年の台風17号の降雨量を 837 億トンと見積もり,それをもとにこの台風のエネルギーを 1.8 x 10^20 J と推算しています.
  3. 放送大学愛媛学習センター客員教員の岡野大氏による推算が,同センターのニューズレター「坊っちゃん」(第98号,2019年12月)に掲載されており,降雨量を 1,000 億トンとしてエネルギーを 2.2 - 2.5 x 10^17 J と見積っています.

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skeezeによるPixabayからの画像

次に台風の持つ力学的エネルギーですが,台風のモデルを修正し,ある半径より内側の剛体回転するコアと,その外側の渦なしのポテンシャル流れという2層構造にしました.そしてコア半径を 10 km,コア外周部の最大風速を 80 m/s,台風の外縁半径を 1,000 km,台風の鉛直方向の広がりを 8,000 m として計算をやり直し,全力学的エネルギーを 7.8 x 10^16 J と見積りました.前回の評価よりも値が小さいのは,コアを導入したので,中心の特異点周辺の非現実的に高い風速を評価せずにすんだためです.なお鉛直方向の温度や密度は一定と簡略化していますので,上記は過大な評価になっており,もう少し厳密に計算すれば,この半掛けくらいが良いところだと思います.これは以下の見積もりでも同様です.

で,このままでは潜熱との関係が不明なので,次に潜熱の評価を行いました.台風が半径 1,000 km,高さ 8,000 m の円柱状の空気の塊であるとして,その内部が飽和水蒸気で満たされていると仮定すると,そこに含まれる潜熱は 1.4 x 10^21 J という膨大な量になります.これは定説 (1) の 4.5 x 10^19 J よりもずっと大きな値ですが,これはあくまである瞬間に保持可能な最大の潜熱なので,水蒸気が凝結して熱が解放されなければ外部に対する作用はありませんし,時間が経つとともに放出されていく潜熱の時間積分を評価できているわけでもありません.

それでは放出される潜熱をどうやって見積もるかというと,降雨量を見積ればよいのです.つまり以下のようなモデルを考えます.海面から水蒸気が台風内部に補給されますが,そのうちのある割合が凝結して雲となり潜熱を放出します.雲の密度には上限があるはずで,それを超えた分が雨となります.そのような定常状態を想定すると,単位時間当たりの降雨量を見積れば,単位時間当たりに放出された潜熱がわかることになります.

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WikiImagesによるPixabayからの画像

そこで台風の半径 1,000 km の範囲のうち,5 % の面積割合で 10 mm/h の降雨があると仮定します.これがどれくらい実際の現象と整合しているのかわかりませんが,まずはオーダーを見積ってみます.すると降雨量は 1.6 x 10^9 t/h,潜熱の放出は 3.8 x 10^18 J / h であることがわかります.つまり上記の割合で降雨があり,途中のエネルギー変換効率が 100 % であれば,1時間もしないうちに運動エネルギーを賄えることになります.このことから,降雨量の多寡と変換効率の大小によって台風が発達する速さが変化することもわかります.実際の変換効率は非常に小さい,おそらく数 % 程度のオーダーだと勝手に想像しています.すると台風の発達には少なくとも 24 時間程度は必要だということになります.

シナリオを再構成してみます.海面から水蒸気が補給され,その一部が凝結して雨となり潜熱が放出されます.そのようにして台風内部に潜熱由来の運動エネルギーが蓄積されていくのですが,変換効率の低さから,台風が十分に発達するにはある程度の時間がかかるということになります.運動エネルギーの一部は粘性で散逸され再び熱に変わりますが,降雨や外部への熱伝達により台風内部に回収されないエネルギーがあるはずです.台風が発達して最大風速が上がるほど回収できない散逸エネルギーも増えるので,どこかで潜熱から供給されるエネルギーと散逸されるエネルギーが均衡して台風の発達は止まり,そこが最大勢力ということになります.

このシナリオで何を以って台風のエネルギーと定義するかですが,私は当初,各瞬間の運動エネルギーのことだろうと考えました.しかし従来の定説とはあまりに桁が異なるので,これは定説で定義されているものとは異なるようです.定説ではおそらく,台風が発達して衰退する数日間の間に,潜熱から供給されるエネルギーを積分したものをエネルギーとして定義しているのではないでしょうか?つまり総降雨量から推定できるということになるので,推算根拠となる降雨量が併記してあることと整合します.このエネルギーが台風の進路に当たる領域で暴風や暖かい雨として散逸されていくので,被害の規模を見積るにはこのほうが適切なのでしょうが,変換効率の低さを考慮に入れないのは気になります.

上記の見積もり例では,潜熱からのエネルギーの補給を 48 時間積分したものが 1.8 x 10^20 J となるので,これでちょうど定説 (2) の値と等しくなります.ちなみに,定説 (2) の総雨量 837 億トンは,私の上記の見積もりの時間雨量 1.6 x 10^9 t/h を 52 時間分積分した量に当たるので,かなりいい線行っています.

この考察がどの程度正しいのか,専門家に評価してもらえないかと思います.上記の本「台風の正体」を読めばわかるのでしょうね.

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2020/09/03

雲湧き立つ

Maysak こと台風9号の余波で,日本の南海上から暖かく湿った空気が押し寄せ,雨雲が湧いてはにわか雨を降らせています.昨日もかなり強いにわか雨が降りましたが,当地では今日も午前中に何度もパラパラと降られました.1,000 km 位離れていてもこのように影響を与えるというのは,やはり台風とはすごい気象現象だと思います.

我が家の2階の窓から南側を見ると,ちょうど千葉から東京にかけて積乱雲が連なって湧いていました.

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台風9号は去っていきましたが,それよりもずっと強い台風10号 Haishen (海神)が週末に西日本に接近するそうです.これは怖いですね.伊勢湾台風級の強さらしいので,送電用鉄塔が倒されたり,車が飛ばされたり,家の屋根が剥がされたりと,竜巻級の災害が起きないかと心配です.


私が子供のころは,台風が持つエネルギーは原爆何10個分あると言われていたものですが,最近はこういう言い方はしなくなりました.比較する対象が適当ではないので,そう言われてもエネルギーが大きいのか小さいのかピンときません.

この記事によれば,一つの台風が持つエネルギーは 4,500 京 J = 4.5 x 10^19 J とあります.これはいくら何でも大きすぎるというのが私の直感ですが,ちょっと計算してみましょう.

核爆発のエネルギーには TNT 換算という単位が用いられ,1 kt が 4,184 GJ = 4.184 x 10^12 J となります.台風1つのエネルギーを TNT 換算で表現すると,4.5 x 10^19 / 4.184 x 10^12 = 1.075 x 10^7 kt ということになり,これは広島型原爆が 15 kt だとすると,1.075 x 10^7 / 15 = 71.7 万個分ということになりますが,やはり大き過ぎる気がします.


台風の力学的エネルギーをものすごく大雑把に見積ってみます.中心に集中した渦度がある2次元のポテンシャル流れが台風だとします.鉛直方向には海抜 0 m から 8,000 m まで一様だとします.非常に強い台風を想定して中心からの距離 10 km で 風速が 60 m/s あるとします.この台風が持っている全力学的エネルギーを,台風の中心に近い半径 0.1 km から 1,000 km の範囲で合計すると,計算の詳細は省略しますが,ごく大雑把に 1.0 x 10^17 J と見積ることができました.

これを先ほどの 4.5 x 10^19 J と比べると,2桁以上の開きがあるので,その差を埋めるのは容易ではないという気がします.もっとも私の計算は力学的エネルギーだけなので,水蒸気が持っている潜熱のエネルギーを考慮に入れていません.しかし,水蒸気量が皆目見当がつかない(無理やり最大可能量を見積ることはできますが)のと,潜熱がすべて解放されるわけではないこと,また解放された潜熱は台風内部で力学的エネルギーに転換されるので,転換された分は上の見積もりに入っているはずです.

従って潜熱のエネルギーを考慮したとしても,2桁以上も異なるとは考えにくく,朝倉書店の「台風の正体」に書いてあるという見積もりがどのような根拠に基づくのか,知りたいところです.海面からどんどん水蒸気が補給されてそれが1週間も続くと,2桁くらい大きなエネルギーが補給できるということなのかなぁ?でもそれが全て解放されるわけではないからなぁ・・・

接地面で粘性によって散逸されるエネルギーを水蒸気の潜熱で補い続けて勢力を維持すると仮定すると,その期間の散逸されたエネルギーをすべて積分すれば,1桁以上は大きな値が出せそうな気はしますが,これはある時点での台風が持っているエネルギーではなく,台風がその生涯を通してばらまいたエネルギーということになります.

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2020/09/01

カモ目がキジ目より前に

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Jan TemmelによるPixabayからの画像

これはちょっとしたニュースです.これまでも IOC は鳥類目録のシーケンス(掲載順序)を修正していたのですが,せいぜいあるの中のの順序を修正する程度でした.ところが次回,2021年1月の v11.1 において,カモ目 (Anseriformes)キジ目 (Galliformes) より前に持ってくるつもりのようです.これは8月22日の作業日誌に書いてあったので,強い反対がなければ実行されると思われます.

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WikiImagesによるPixabayからの画像

北半球温帯地方に住む私たちにとって,これまで鳥類リストの最初に来るものはキジ目,次がカモ目と決まっており,それに長年慣れ親しんでいたのですが,これが入れ替わることになります.

キジ目とカモ目はともにキジカモ類 (Galloanserae) にくくられており,新顎類 (Neognathae) の中では最も原始的なグループとして分類されていますが,その中の順序が入れ替わるということです.より古い時代に生まれた系統を先に持ってくるという基本方針によるものだと思います.分子系統学比較ゲノミクスの進展に伴って,カモ目の系統確立が先だったと認定されたのでしょうかね?詳しい根拠を知りたいものです.

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