雲湧き立つ
Maysak こと台風9号の余波で,日本の南海上から暖かく湿った空気が押し寄せ,雨雲が湧いてはにわか雨を降らせています.昨日もかなり強いにわか雨が降りましたが,当地では今日も午前中に何度もパラパラと降られました.1,000 km 位離れていてもこのように影響を与えるというのは,やはり台風とはすごい気象現象だと思います.
我が家の2階の窓から南側を見ると,ちょうど千葉から東京にかけて積乱雲が連なって湧いていました.
台風9号は去っていきましたが,それよりもずっと強い台風10号 Haishen (海神)が週末に西日本に接近するそうです.これは怖いですね.伊勢湾台風級の強さらしいので,送電用鉄塔が倒されたり,車が飛ばされたり,家の屋根が剥がされたりと,竜巻級の災害が起きないかと心配です.
私が子供のころは,台風が持つエネルギーは原爆何10個分あると言われていたものですが,最近はこういう言い方はしなくなりました.比較する対象が適当ではないので,そう言われてもエネルギーが大きいのか小さいのかピンときません.
この記事によれば,一つの台風が持つエネルギーは 4,500 京 J = 4.5 x 10^19 J とあります.これはいくら何でも大きすぎるというのが私の直感ですが,ちょっと計算してみましょう.
核爆発のエネルギーには TNT 換算という単位が用いられ,1 kt が 4,184 GJ = 4.184 x 10^12 J となります.台風1つのエネルギーを TNT 換算で表現すると,4.5 x 10^19 / 4.184 x 10^12 = 1.075 x 10^7 kt ということになり,これは広島型原爆が 15 kt だとすると,1.075 x 10^7 / 15 = 71.7 万個分ということになりますが,やはり大き過ぎる気がします.
台風の力学的エネルギーをものすごく大雑把に見積ってみます.中心に集中した渦度がある2次元のポテンシャル流れが台風だとします.鉛直方向には海抜 0 m から 8,000 m まで一様だとします.非常に強い台風を想定して中心からの距離 10 km で 風速が 60 m/s あるとします.この台風が持っている全力学的エネルギーを,台風の中心に近い半径 0.1 km から 1,000 km の範囲で合計すると,計算の詳細は省略しますが,ごく大雑把に 1.0 x 10^17 J と見積ることができました.
これを先ほどの 4.5 x 10^19 J と比べると,2桁以上の開きがあるので,その差を埋めるのは容易ではないという気がします.もっとも私の計算は力学的エネルギーだけなので,水蒸気が持っている潜熱のエネルギーを考慮に入れていません.しかし,水蒸気量が皆目見当がつかない(無理やり最大可能量を見積ることはできますが)のと,潜熱がすべて解放されるわけではないこと,また解放された潜熱は台風内部で力学的エネルギーに転換されるので,転換された分は上の見積もりに入っているはずです.
従って潜熱のエネルギーを考慮したとしても,2桁以上も異なるとは考えにくく,朝倉書店の「台風の正体」に書いてあるという見積もりがどのような根拠に基づくのか,知りたいところです.海面からどんどん水蒸気が補給されてそれが1週間も続くと,2桁くらい大きなエネルギーが補給できるということなのかなぁ?でもそれが全て解放されるわけではないからなぁ・・・
接地面で粘性によって散逸されるエネルギーを水蒸気の潜熱で補い続けて勢力を維持すると仮定すると,その期間の散逸されたエネルギーをすべて積分すれば,1桁以上は大きな値が出せそうな気はしますが,これはある時点での台風が持っているエネルギーではなく,台風がその生涯を通してばらまいたエネルギーということになります.
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