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2021/01/15

ヒドリガモと交雑種

昨日の都市公園の池で見た渡り鳥の続きです.この池ではカモ類のほとんどがヒドリガモ.午前中は水面にいる個体よりも,岸に上がって日向ぼっこをしながら顔を背中の羽毛に突っ込んでまどろんでいる個体が多いように見えました.

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オスのなかには顔に緑色味が強いものもいますが,これはあくまでヒドリガモ.これがもっと強く明確になり,他の特異的な特徴も加わればとアメリカヒドリということになるのでしょう.Wikipedia の記事によれば,東シベリアにはヒドリガモとアメリカヒドリの繁殖地が重なっている地域があるそうで,そういうところでは交雑が起こる可能性があるとのこと.実際,交雑種と思われる個体の観察記録は珍しくありません.

大胆な仮説を立てると,純粋なヒドリガモと純粋なアメリカヒドリの中間には,さまざまなレベルの交雑個体が存在しうる.その広い遺伝子スペクトルの密度分布の中で,外観特徴も中間のものが出現しうるが,外観上は純粋なものと区別ができない交雑個体が大部分を占める.実際,日本の都市部のカルガモの多くはアヒルやアイガモとの交雑種らしい(Wikipedia のカルガモの記事).

これは単なる仮設で,検証するには数多くの個体を捕獲して遺伝子を調べなければなりません.またどの細胞のどの遺伝子断片を調べるかで解釈が異なる可能性もあります.しかしこれまで外観だけで識別されてきた「種」という単位が,実は遺伝子レベルでは連続スペクトルを構成している可能性はあるわけで,もしもそうであれば,進化生物学や生態学の根本的概念をひっくり返すだけのインパクトがあります.

それぞれが狭い範囲に凝縮された遺伝子スペクトルを持つ異種個体群が複数あったとして,それぞれのスペクトルは絶えず幅を広げようと揺動しながらも淘汰圧で狭い範囲に押し戻される,というのが遺伝子で見た場合の種というものではないか?種間交雑が起こり,たまたま淘汰圧が弱かったとすると,種間領域のスペクトル密度が上昇していき,亜種や新種となる個体群が生まれてくる,というシナリオです.地理的隔離も同時に考えなければならないので,話はもっと複雑になります.すでにこのような数理モデルは研究されているとは思いますが.

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