風切羽がめくれ上がるのは?
昨日の散歩で,岸に釣り人が点在する川べりを歩いていたときのこと.このあたりに定着しているコブハクチョウのうちの 8 羽の群れがいたのですが,その中の 1 羽がもう 1 羽をしつこく追い回していました.
カモ程度の普通のサイズの鳥であれば,どうということはないのでしょうが,何しろ大きなコブハクチョウがそのようなことをすると,大きな羽音,水面を駆けるときの水しぶきの音,そして彼らの大きな鳴き声で,あたりは大騒ぎになります.釣りをしていた人たちは,これでは釣りにならないと困ったことでしょう.
コブハクチョウが水面から飛び立つ過程をよく見てみると,足が水面から離れても水面すれすれの状態が結構長く続き,地面効果を最大限利用して飛んでいることがわかります.しかも翼を打ち下ろしているときには,風切羽の先端はめくれ上がっています.非常に面白い光景です.
ちょっと荒っぽい計算をしてみましょう.コブハクチョウの翼開長は 220 cm 程度らしいので胴体の幅 30 cm を除いた片側スパンは約 0.95 m.片側アスペクト比を見た目から荒っぽく 4 として,両翼面積は (0.95 ^ 2 / 4) * 2 = 0.45 m^2 程度だろうと当たりをつけます.Hmmmm,けっこう大面積ですね.
これが体重 10 kg を支えて平衡状態にあると,翼面荷重は 10 * 9.81 /0.45 = 218 N/m^2 となります.したがって翼の上下面の圧力差は,N/m^2 を単に Pa と言い換えて 218 Pa です.感覚的にわかりやすいように換算すると,218 Pa とは 218 / 9.81 / 10,000 * 1,000 = 2.22 gf/cm^2 の力となります.
これだけの圧力差で風切羽がめくれ上がるか?ということですが,風切羽の先端部分の面積を 10 cm^2 程度と見積もると,その部分にかかる力は 22.2 gf です.これは十円硬貨 5 枚分の重さに等しい力です.どうでしょうね?めくれ上がるでしょうか?私はいい線行っているのではないかと思いますが,不足しているかもしれません.
不足する場合には,翼面荷重は翼面上均等にかかるわけではなく,特に羽ばたきの打ち下ろし相では,打ち下ろし速度の最も大きい翼端部に強くかかるという(もっともらしい)仮説をでっち上げてみましょう.翼面荷重が均等にかかる場合に比べて 2--3 倍の力が翼端にかかるとすれば,十分ではないかと思いますし,この 2--3 倍という仮説もさほど無理はないと思います.風切羽の先端に重りをのせて実験してみたい気がします.
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