ブラックアウトやってみれば?
先週 3 月 16 日の福島県沖を震源とする強い地震で,首都圏に電力を供給している複数の火力発電所が被災・停止しました.これだけでも需給は非常にひっ迫していたことに加えて急な低温と降雪で暖房需要が急増し,かつ太陽光発電の出力が低下しました.資源エネルギー庁と東京電力は中部電力と関西電力からの融通をあてにしていますが,もともと電力会社間を跨ぐ広域連携線の容量は小さく,かつ途中で周波数変換に伴うボトルネックがあるため,その容量を超えて融通することはできません.
これらは元々わかっていたことですし,東日本大震災後に活発に議論が行われて増強計画は進みつつあるのですが,実行速度が伴っていませんでした.ということで,このままいくと首都圏で初のブラックアウト(大規模停電)が起きる可能性があります.いったんブラックアウトすると,北海道で経験したように,復旧には 48 時間以上が必要なので社会機能が大幅に損なわれます.
実際にはブラックアウトする前に,大需要地から少しずつ停電させていって,ブラックアウトを回避する措置が取られるはずで,これが先週の地震の直後に首都圏の一部地域で自動的に発動・実施されたものです.自動的ではなく事前に計画して細かい粒度で行うのは輪番停電.東日本大震災の時にやりました.またあるかも.
まあしかし不謹慎との謗りを覚悟のうえで言うと,一度ブラックアウトを経験しておくことは,エネルギーに関するリテラシーを身に着けたり,今後の節電やエネルギー政策を議論するための良い下地になると思うので,やってみたらいいのでは?と思います.もちろんほとんど全員がもうこりごりという気分になるはずですが,電源のポートフォリオ,発送電分離の体制,また設備設置の地域コストなどを,事業者だけではなく消費者も加わって真剣に議論する良い機会になると思います.
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