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2022/06/27

梅雨明けの猛暑と電力ひっ迫

昨日早朝にフィールド調査のために里山を歩いた以外は,猛暑のために家に引きこもっています.これが私の真夏の過ごし方.お陰でこのブログの更新もネタが無くてさぼり気味です.

今年の夏は電力がひっ迫しているそうで,昨日あたりから騒がしくなってきました.電力不足に関しては 3 月にこの記事この記事で意見を述べたのですが,今日はもう一つ昔から思っていることを.

今回の電力不足は,原子力発電所の再稼働が遅々として進まない中で,脱炭素の風潮の中で発電事業者が老朽火力の設備更新を行わなかったり,場合によっては廃止したりすることが原因と説明する記事を多く見ます.まあ一つの説明としてはその通りなのでしょうが.

まず原子力発電についてですが,私は原子力規制委員会からダメ出しを食らっている柏崎刈羽(通称 KK )のようなプラントの再開を急がせることには反対です.そもそも国有化以降の東電はどうもおかしい.よほど現場の声を聞かなくなっているのか,それとも現場が腐っているのか,こんな記事も出てくる始末です.

東京電力社員が明かす柏崎刈羽原発の実態

経産省やエネ庁は共同責任の与党も巻き込んで深く省察すべきでしょう.

しかし再稼働ができたとしても,日本の原子力発電の宿痾である使用済み核燃料の再処理と高レベル放射性廃棄物の長期保管は全く見通しが立っていません.前者に関して言えば,メーカーではない動燃原燃という中途半端な研究開発組織に任せたことがそもそもボタンの掛け違いだったでしょう.またたとえメーカーに任せたとしても,現実にはイギリスとフランスからの技術導入に頼らざるを得ず,動燃や原燃より速く進行していた保証はありません.しかし日本が原子力発電を始めてすでに 60 年以上.いまだにそういう技術がないとは,過去の原子力政策の再点検が必要です.

後者の高レベル放射性廃棄物に関しては政治の無責任と不作為のたまものです.行政に任せてどうにかなる話ではありません.過去のように札束と一升瓶を並べれば原子力プラントの立地が出来たこととはレベルが違いすぎます.この辺りの政治家のセンスと覚悟の無さには呆れるばかりです.そもそも覚悟が持てないのであれば原子力発電を諦めるべきです.政治家が仕事をしていません.

さて火力発電に関しては, LNG への先行投資と長期契約の恩恵を受けている日本は, LNG の価格高騰の影響はまだ小さいままです.ここは欧州の惨状を知ったうえで冷静に評価する必要があります.ただし火力プラントの更新や保守が滞りがちというのは見過ごせない状況です.特に最近になって金融の世界が火力プラントへの融資を行わなくなりつつあることは由々しき事態です.

ベース電源となる原子力発電が脱落してしまった日本において,ベース電源の役割を果たせるのは火力発電しかなく,そのベース電源の上に変動の大きな再生可能エネルギーをうまく乗せざるを得ません.またベース電源が何であろうと,再生可能エネルギーの変動を吸収できるのは火力プラントだけです.しかもそのためにはプラントを待機運転させておかねばならず,プラントの利用効率が悪いことも覚悟しなければなりません.

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Samuel FaberによるPixabayからの画像

従ってそういう役割を課せられた火力プラント設備には余裕がなければなりません.そのためには火力プラントへの継続的な投資が必要なのです.ここで政治や行政が動かなければなりません.現状では企業にとって火力からの撤退は経済合理的だからです.

蓄電池を変動吸収のために使うことができればよいのですが,それには莫大な投資が必要なので,送電網の建設と同様,投資は極めて緩慢です.これも政治や行政が覚悟できないことの一つです.投資回収のために電力料金が高くなるので産業界からの反対は目に見えているからです.しかし EV 用の蓄電池があふれ出てくるようになれば条件は変化します.そしてそのためにはここでも先行投資が必要となるのです.

ということで,KK の再稼働が当分見込めないここ数年間,東電管内の電力ひっ迫は避けられそうにありません.企業は自家発を活用できても高騰した燃料代に苦しみ,家計は物価高騰と節電の圧力に苦しむでしょう.今後 10 年程度は長期ビジョンを欠いた過去の政策の後始末を強いられるわけです.

そんな中でも少しずつ変革が進むことを祈りたいと思いますが,そういう事を参院選で主張している政党や候補者がいないように見えるのは,単に私が知らないだけなのでしょうか?

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