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2023/07/23

メディアの貧困

最近テレビのニュースを見ていて,違和感を感じることを二つほど.

囲碁や将棋の対戦

囲碁や将棋の対戦,特に将棋のタイトル戦はしばしば報道されるのですが,どちらがどういう手を指しているかは一切言わないくせに,昼食に何を食べたかを映像付きで長々と紹介します.これは実に視聴者を馬鹿にした報道の姿勢だと思います.

メディアが考えていることはおそらく

どうせ一般視聴者は将棋の手なんかわからないから(俺たち自身もよくわかっていないし),食い物の話でもしておけば視聴率取れるに違いない.

ということでしょう.コアなファンは ABEMA などで解説付きの実況中継を見ているはず(2017 年の藤井聡太と佐々木勇気の竜王戦決勝の AbemaTV の視聴数は 1,240 万を越えた)なので,一般向けのニュースではこの程度の画の出し方が一番視聴率が取れる,という安易な発想だと思います.

しかし,実況中継を見るほどではないが囲碁や将棋はある程度知っているという人口は多いはずです.序盤はこういう手でどちらが攻めて,中盤にどういう展開になって,終盤にこういう手でどちらが投了した,くらいの情報は15秒もあれば伝えられます.将棋を知っている人はそれを聞いただけで盤面の展開が頭に浮かぶはずです.対戦の最も基本的な情報を伝えずに,食い物の画だけ出して視聴率取ろうというのは実に姑息.報道する側のリテラシーの無さも情けないです.

東京ドーム何個分?

これはニュースに限らずバラエティや情報番組でも氾濫している無意味な表記法.

そもそも東京ドーム何個分の面積,東京ドーム何杯分の体積と言われて定量的なイメージが湧く人がいるのでしょうか?私はいないと思います.湧くという人がいたとしても,そのイメージは実際とは大きくずれているでしょう.

東京ドームのグラウンド面積は 13,000 m2,たったの 1.3 ha,114 m 四方です.野球場なんてこんなものでしょう.ほかに東京ドームの建築面積というものもあって,こちらは 46,755 m2 もありますが,これが何を意味するのかよくわかりませんし,そもそもメディが使う東京ドームの 1 個分が何 m2 のことなのか,それに言及して言葉を使っているメディアは皆無です.これも視聴者を馬鹿にした受けねらいの表現です.

東京ドームの容積は 1,240,000 m3 だそうです.一辺が 107 m の立方体と同じですが,こう言ったほうがよほどわかりやすくありませんか?あるいは直径が 100 m の円柱状の桶に入れたとすると,深さが158 m ほどになります.ちなみにクフ王が建てたギザの大ピラミッドは,底辺が 231 m の正方形,高さが 146 m なので,その体積は約 2,600,000 m3.東京ドームの 2.1 倍です.これも東京ドームよりはわかりやすいと思います.

東京ドームを特に体積の単位として使う場合のわかりにくさは,扁平なドームの容積を使っているからだと思います.東京ドームは外から見ると平べったく丸っこい背の低い建物です.その容積がどれくらいかは非常にわかりにくい.内部に入ると非常に大きく感じますが,それは印象にだまされた錯覚で,実際には上述の通りピラミッドの半分以下です.

このような分かりにくい単位を使って面積や体積を比較するのは,東京ドームという「良くわからないがとにかく大きいとされているもの」を持ち出すことによる印象操作であって,何ら定量的な表現にはなっていません.このような感覚的な表現で大きさを強調して伝えるメディアは,数量リテラシーの貧困を再生産しているとも言えます.そろそろほかの表現に改めてほしいと思います.

こんなサイトもあります.

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コメント

俊さん

東京ドーム基準というのは全く意味がわかりませんね。同感です。

東京にいても面積や容積が砕い的に分からないでしょう。地方にいるともっとわかりません。

ただ大きいとか広いというイメージしかありません。

まだhaとか平方キロ、立法メートルとかドラム缶何本分のほうがマシですね。

投稿: きたきつね | 2023/07/24 22:12

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