クライ・マッチョ
クライ・マッチョ,クリント・イーストウッド(監督)
約一年ぶりで映画のレビュー.イーストウッドの映画はいろいろ見てきたのですが,主演作品となるとこれがおそらく最後のものになるかもしれません.御年91歳で監督・主演した作品です.
映画の企画としてはかなり古く,75年に出版された同名タイトルの小説が原作です.元ロデオスターの老人が主人公.仕事の雇い主に頼まれて,メキシコに住む彼の息子をアメリカに連れて帰る,そのロードムービーになっています.当初はシュワルツネッガーが主演俳優に選ばれたのですが,当人のスキャンダルで製作が中止され,2020年にイーストウッド本人が主演も務めることが発表され,COVID-19 のさなかに撮影が行われました.
実際に観て思ったのは,やはり高齢のイーストウッドはもう演技に耐えられないということです.セリフ回しは問題ありませんが,動きは良くありません.馬に乗るシーンもあるのですが,引きのショットばかり.女性とダンスを楽しむ姿もかろうじて,という感じです.グラン・トリノでは非常に良い演技だったのですが,あれから13年の歳月が残酷に流れたのだと思わざるをえません.一方,若者に人生の教訓をとつとつと話し,マッチョの意味を考えさせる演技はとても良いです.この作品のハイライトの一つでしょう.
一方,息子役の俳優ですが,私に言わせればちょっと良い子すぎてアクが無さすぎです.これはちょっとキャスティングを間違ったのではないでしょうか?もう少しクセの強い若手俳優が良かったと思います.子役のころのディカプリオとかリバー・フェニックスとか.まあこういう逸材はいつも見つかるわけではありませんが.
ドライブ中の主人公たちを迎え入れかくまう役の女優ナタリア・トラヴェン.派手な顔立ちで微笑が絶えない魅力的な人ですが,ちょっと場違いな感じのキャスティングだったと思います.掃き溜めにツルですね.もう少しリアルで殺伐とした演出にしたほうが私の好みには合っていますが,こういう救世主がいたほうが安心して観ていられるのは確か.
全編を通してラテン音楽がとてもよかった.非常に端正なラテンで,これに合わせてダンスをするシーンは非常にしっくりします.キューバ音楽もそうですが,端正なラテン音楽には非常に惹かれます.
かなり長いエンドロールがあるのですが,私はエンドロールもきっちり最後まで観るタイプです.前半は非常に美しいデザインで驚かされました.このような美しいエンドロールは初めて見ました.ただしエンドロールで使われていたカントリー音楽は私の好みには合わず,ちょっと残念.最後までラテンで通してほしかった.
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