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2024年11月

2024/11/19

Joby はアルバトロス号の夢を見るか?

先々週あたりに,ドイツのスタートアップ企業 Lilium GmbH が経営破綻したというニュースが入ってきました.それから一週間ほど遅れて日本の Web でもこのニュースが見られるようになりました.Lilium はいわゆる空飛ぶタクシー,すなわち少人数が乗れる垂直離着陸が可能な固定翼機を開発してきたスタートアップ企業です.

仕事がらこの手の技術やニュースにはアンテナを張っているのですが,実際には投資詐欺まがいの泡沫スタートアップが多い中で,ほとんど唯一と言っていいくらいまじめな会社だっただけに非常に残念です.どこかアラブの大金持ちがポンとお金を出して買い取って開発を継続してくれないものかと思います.

もう一つのニュースはアメリカのスタートアップ Joby Aviation 社にトヨタが追加出資したという話です.今日はこの Joby 社が開発中の空飛ぶタクシー Joby S4 が本当に飛べるのか,簡単に見積もってみたいと思います.Joby についてはこの記事が詳しい.

1082pxjoby_aviation_s4_experimental_evto 写真は Wikipedia の記事より引用


eVTOL では離着陸時には必ずホヴァリングが必要となりますが,この見積りではホヴァリングのみを扱います.Joby S4 は固定翼を持っているので,巡航時は固定翼の揚力に助けられ,モーターはそれほど大きなパワーは必要としないはずですが,ホヴァリング時には全重量をプロペラの推力のみで支えなければならないので,プロペラやモーターはそれに合わせた最大性能を持つ必要があります.

離着陸時のホヴァリングにどの程度の時間を要するかは明確ではありません.ここでは離着陸で合計 5 分間のホヴァリングを行うことにします.使用するパラメータは以下の通りです.

質量 m  1815 kg モーターと電池を含むと仮定
ローター数 n 6枚  
ローター径 d 2.34 m 平面図から読み取り
空気密度 rho 1.225 kg/m^3 海面値
重力加速度 g 9.807 m/s^2 海面値

6 個のローターの総面積 S_d は,

S_d = 6 * pi * d^2 / 4 = 25.80 m^2

ホヴァリング時に必要な誘導パワーは,

P_ind = [ (m * g)^3 / (2 * rho * S_d) ]^(1/2) = 298.7 kW

合計 5 分間のホヴァリングに必要な力学的エネルギーは,

E_ind = 5 * 60 * P_ind = 89.61 MJ = 24.89 kWh

ファン効率をひいき目に見て 70 %,モーター効率をこれもひいき目に見て 95%,ホヴァリングに許される放電深度を多めにとって電池容量の 25% とすると,必要な電池容量は,

E_ind / (0.70 * 0.95 * 0.25) = 149.7 kWh

ただし 5 分間で電池容量の 25% を放電するので,放電レートは 3C とかなり大きくなることに注意する必要があります.

電極活物質のエネルギー密度を,これもひいき目にとって 200 Wh/kg とすると,必要な電極活物質の質量は

149.7 * 10^3 / 200 = 748.6 kg

電池モジュールの質量ベースの実装効率を,これもひいき目に見て 70% とすると,電池モジュールの質量は

748.6 / 0.70 = 1069 kg

という結果になります.つまり,電池だけで 1069 kg の質量を占めることになります.全機質量(ペイロード含まず)が 1815 kg なので,残りの 746 kg で機体 (airframe) とモーターやインバーターを備えなければなりません.モーターは 1 台あたり最低でも

P_ind / (6 * 0.70) = 71.1 kW

の軸出力が無ければなりませんが,そのようなモーターの質量は少なくとも 50 kg はするはずです.するとモーターだけで 300 kg を使うことになります.残りの 446 kg でインバーターと機体を作ることができるかというと,私は非常に悲観的です.そしてこれはペイロードがない場合の話です.

この機体の定員はパイロットを含めて5人です.人と荷物の質量で一人当たり 80 kg は必要だと思われるので,ペイロードは 400 kg 程度のはずです.すると上記の見積もりよりもさらに大きな誘導パワーが必要になるので,より大きな質量の電池モジュールやモーターが必要になり,ホヴァリングだけで電池容量の少なくない部分を使い切ってしまいます.

結論として,私はこの機体が乗客を乗せて航続距離 241 km を飛ぶのは非常に難しいのではないかと評価せざるを得ません.空港から市街地までのような短距離の輸送に限定されるのではないでしょうか?むしろそのほうが空飛ぶタクシーという名にふさわしいと思います.

なおこの記事のタイトルのアルバトロス号というのは,ジュール・ベルヌの小説「征服者ロビュール」(私が少年時代に読んだ時のタイトルは「空飛ぶ戦艦」)に出てくる巨大な気球型戦艦で,上昇下降用に37本の垂直軸二重反転プロペラ,前進後退用に艦首と艦尾にに1基ずつの水平軸プロペラを持った,今風に言えば巨大なマルチコプターです.今日の空飛ぶタクシーのような概念はすでに140年ほど前にあったのです.

Hubschraubermuseum_bckeburg_2010_0019

写真は WIkiedia フランス語版より

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2024/11/16

秋の顔ぶれいろいろ

昨日の雨は上がりましたが,スカッとは晴れず,薄日が差す程度の曇り空の一日.午後になると雲が厚くなり,暗くなってきました.そうなる前に散歩に出かけ,昨日と同じ面々とご対面.今日は少し違う写真をお目にかけたいと思います.

まずは最強引っ付き虫のコセンダングサの痩果.我が家の周辺は至るところこの猛者に囲まれています.ちなみに我が家の正面の家庭菜園はなぜかこのコセンダングサでいっぱい.

Fallaroundhome_nov2024_0044m

次は秋の定番の一つのアオツヅラフジ.とてもきれいな果実なのですが,鳥にも食べられず無傷で残っているのは毒があるから.見つけても手を出さない方が賢明です.

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マント群落では色々な植物の紅葉が進んでいますが,これはヤマイモのつるの黄葉です.とてもきれい.実は我が家の庭木にも絡みついています.

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調整池ではカルガモたちがのんびりと昼寝.夜は餌を取りに行き,昼はここで休んでいるのです.中には羽繕いをしたり,盛大に水浴びをしたりする者もいます.

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2024/11/15

ムラサキシキブ

今週の日本列島は南からの暖気に包まれ,暖かい日が続いています.今日は早朝から雨が降っているのですが,昼過ぎには上がる予報.週末まで暖かさは続くようです.

昨日のお昼,散歩コースを歩いてみると秋のご常連が顔を揃えてきたのがわかりました.道端のコセンダングサ痩果になったものが増え,引っ付き虫の本領発揮です.シロダモの赤い果実も目立ってきました.そして毎年楽しみにしているムラサキシキブの果実は美しく色づいてきました.

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調整池のコガモのオスはエクリプスがほぼ終わり,きれいな羽毛に代わっていました.

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2024/11/04

ダイサギがやって来た

今日は三連休の最終日,といっても毎日が日曜日の引退老人にとっては,どこへ行っても人出が多いので出かけるのを避けるのが習性となっています.この三連休は初日が冷たい雨で散々な一日だったのですが,昨日と今日は快晴の素晴らしいお天気.今日は気温も上がって過ごしやすい一日となりました.

Fallaroundhome_nov2024_0014m

調整池に散歩に出かけてみると,冬鳥として渡って来たダイサギ(亜種オオダイサギ)と,ダイサギ(亜種チュウダイサギ)が同時に見られました.これはここ3年ほど続けて冬に見られる光景です.

Fallaroundhome_nov2024_0024m

亜種の違う二羽が互いをどのように認識しているのか?別の亜種オオダイサギがやってくるとこの調整池の亜種オオダイサギは必ず追い出しにかかるのですが,亜種チュウダイサギとは喧嘩することなく同居しています.人間にとっては僅かな違いしかないのですが,当人にとっては明確に区別できるのでしょう.

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2024/11/01

ようやく秋らしくなってきた

今日から11月に入りました.今年もあと2か月しかないとわかると月日が過ぎるのは速いと思うものの,まだ暖かい日が多いのでなかなか実感がわきません.特に今日は昨日よりもだいぶ暖かく,しかも湿度も上がってきて,また秋雨が降り出すのか?という感じですが,散歩に出てみると秋の草花が盛りを迎えていました.

Fallaroundhome_nov2024_0008m

コセンダングサにとまったウラナミシジミ.この季節の典型的な風景ですが,当地でもようやくこういう光景が見られるようになってきました.

Fallaroundhome_nov2024_0011m

今年はノブドウの実のつきはあまり良くなかったのですが,きれいな色の塊をたまたま見ることができました.実はこれらは虫こぶなのです.寄生されていない実は白く小さいのです.

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