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2025/03/15

「鳥の飛行力学 入門」書きました

日ごろ鳥が飛ぶ姿を見てはその飛行制御に感嘆しているのですが,鳥が飛べる秘密を解明したい,鳥のように空を飛びたいという思いは世界共通です.古くから鳥を模倣して空を飛ぶ試みが続けられ,ようやく20世紀初頭になって有人動力飛行が実現したことはご存じの通り.

一方,鳥やコウモリや昆虫など生物の飛行そのものの研究も進んでおり,次々に興味深い事実が明らかにされつつあります.その中でも鳥の飛行は一つの典型として古くから研究され,かなりの程度体系化が進んでいます.私は一昨年から昨年にかけて,英国 Bristol 大学の故 Pennucuick 教授が書いた “Modelling the Flying Bird” という教科書を通読して,現代の研究水準を学びました.

しかし物理学や工学を専門としない読者にとってその内容を消化するのは敷居が高いと感じ,また数式も頭ごなしに書いてあるだけで導出過程は省略されていることが多く,独学で読み進むのは難しいと思いました.

一時はこの本の翻訳出版を考え,半年以上かけて翻訳したのち,あちこちの出版社に打診したのですが,あまりにニッチな分野であり予想販売部数が少なすぎる,翻訳の権利処理にも手間と費用がかかるという理由で断られてしまいました.

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それでは,この本を下敷きにしつつも,基本的な部分に範囲を絞って自分なりに書き下ろしてみようと思い,3か月程度で完成させたのが今回紹介する「鳥の飛行力学 入門」です.全体で 120 ページほどの小冊子ですが,鳥の飛行の原理を力学的パワーを主軸として解説したものです.対象とする読者は,高校卒業程度の数学と物理学の知識を持ち,鳥や飛行機が飛ぶ仕組みを物理法則に基づいて学びたい,一般向けの比喩や雰囲気でごまかした説明には満足できないという人たちです.また模型飛行機,グライダー,人力飛行機などのスカイスポーツの愛好者にもお勧めできます.なぜなら鳥も飛行機も同じ物理法則に従って飛んでいるからです.

そのため運動量保存則などの基本原理に従って数式を導出し,さらにその数式を現実の鳥の形態データに当てはめて計算する例を多く作りました.またそれらをできるだけグラフにして視覚的に理解しやすいように努めました.また大きな特徴は印刷出版することを前提としていないことです.PDF 閲覧ソフトで読むことを想定し,たくさんのハイパーリンクを本の内外に張っていますので,図や数式などを参照するのがとても楽です.

この本は自分の趣味として書いたもので,販売して金銭を得ることを考えていません.そのため私の OneDrive に置いておきますので,ここから自由にダウンロードしてください.コピーや転載も自由です.

質問は巻末に書いたアドレスへのメールで受け付けますが,素早い応答は期待しないでください.ある程度質問の数がまとまったら Web 上で質疑応答をやれるといいなと思っています.

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コメント

はじめまして。
ハス田の野鳥羅網の研究をしています。
まさに私が必要としているレベル・内容の「鳥の飛行力学 入門」をフリーで公開していただき、ありがとうございます。

投稿: 内田@あとりねっと | 2025/03/16 18:28

内田様,

コメントありがとうございます.昨年だったか,霞ケ浦の探鳥会でご一緒したことがあります.羅網の研究が実を結ぶことを願っています.

ご質問があれば,巻末に記載のアドレス宛て,お送りください.

投稿: 俊(とし) | 2025/03/16 18:50

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