脱獄ものの古典
アルカトラズからの脱出 [Blu-ray] - クリント・イーストウッド (出演), ダニー・グローバー (出演), ドン・シーゲル (監督)
これは昔から有名な脱獄映画でいわば一つの古典です.今回久しぶりに観たのですが,ショーシャンクの空にを繰り返し見てきた者にとって,多くの気付きがありました.つまりショーシャンクにはアルカトラズに触発された(あるいは拝借した)多くのエピソードがあったということです.
例えば入所翌日の朝,食堂で食事をとるときに受刑者が飼っているネズミに餌を与えるシーンは,ショーシャンクではやはり入所翌日の朝食時に内ポケットに入れたカラスのヒナに餌を与えるシーンに対応しています.これはそっくり.類似度高いです.
シャワー室で同性愛者から言い寄られるシーンはショーシャンクでも同じですが,言い寄ってきた相手を殴り倒して石鹸を口に突っ込むシーンはショーシャンクにはありません.これは主人公の設定に大きな違いがあるからです.ショーシャンクでは主人公は同性愛者たちからの執拗な攻撃に何年も悩まされ続けます.
運動場に壁の削りかすを捨てるシーンは全く同じ.まあこれは脱獄ものでは定番なのでしょう.すぐに看守から見つかるはずなので,これはあくまでフィクションのネタだと思います.
刑務所の運動場は他の受刑者たちと交流できる機会なのですが,アルカトラズでは牢名主のような黒人の囚人から一目置かれるようになります.ショーシャンクではモーガン・フリーマンが演じる “レッド” という庇護者兼相棒と交流する場に置き換えられています.
ショーシャンクでは建物の屋根に防水タールを塗る作業のときに看守長からビールを奢ってもらうエピソードがありますが,アルカトラズにはそのようなホッとできるエピソードは一切現れません.逆に所長から絵を描く特権を取り上げられた受刑者が,木工室で自らの指を斧で切り落とすエピソードが描かれるなど,殺伐としています.
ショーシャンクでは独房の壁を飾る女優のピンナップが時代とともに移り変わっていくのですが,アルカトラズは短期間で脱獄に至るため,そのような時間の流れを感じさせるエピソードもありません.
またショーシャンクでは元銀行家という職業の専門性を生かして所長や看守たちの税務コンサルタントのような役割を務め,その見返りとして図書室の建設と蔵書の充実という生きがいを与えられるのですが,そういう互恵的なエピソードはアルカトラズには一切ありません.
全体として,ショーシャンクのどこか希望や人間性の価値を信じられるエピソードの多さに比べると,アルカトラズは殺伐とした硬派です.その分脱獄技術の描写は詳細です.アルカトラズが面白いのは,冷静で頭の良い主人公が,時間をかけながらも脱獄計画を練り,信頼できる仲間を集めて計画を成功に導いていく,そのプロセスでしょう.まるで緻密な事業計画を成功裏に実行する有能で冷静な経営者を見るようなものです.
脱獄映画は世に多いのですが,脱獄という行為のどの側面に焦点を当てて描くかは,作品ごとに非常に異なると感じます.
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