スポーツ

2021/08/06

日本のスポーツ報道の異常

オリンピックもそろそろ終わり.どのチャネルも連日オリンピック報道で忙しそうなのですが,もともとスポーツ観戦に興味のない私は,疎外感を味わいながら,録り溜めたドキュメンタリー番組などを観ております.

ただメディアがちょっと異常ではないかと思ったのは,どのチャネルでも日本人選手が出ていない競技は無視されていること.出場していても入賞の見込みがない競技は中継はおろか報道すらされていないことです.例えば,陸上競技のほとんどのフィールド競技,カヌー,自転車ロードレース,馬術,ホッケー,近代五種,ボート,射撃,水球,テコンドー,などなど.

1964 年の東京オリンピックの際には,国民の啓蒙の意味合いもあったのでしょうが,もう少しまんべんなく各競技が中継,報道されていたと思います.それに比べると今回のメディアは非常に偏った扱いをしていると感じます.

一方,オリンピックよりも格上の大会があって,毎シーズン超一流選手どうしのプレイを観戦できるサッカー,ラグビー,テニス,野球,ゴルフなどを,日本人選手が出ているという理由で長時間中継するのは退屈で時間と電波の無駄.そもそも超一流選手がほとんど出場していないので,競技に華がありません.

私はセイリングのレースが中継されることに興味があったのですが,ちらっとニュースに出た程度でした.有料のスポーツチャネルでは中継されていたのでしょうか?ヨットレースの中継は技術的に難しいのですが,アメリカズカップの中継を見ると,血沸き肉躍る格闘技の趣があります.今回の大会ではセイリングは 10 種目もあるので,そのすべてを中継することは期待しませんが,ウィンドサーフィンくらいは中継してもよかったのでは?

日本人選手不在のプレイを無視するこの傾向が日本のメディアで始まったのは,松井秀喜ヤンキーズに入団したころに遡ります.メディアが視聴率稼ぎで易きに流れたのです.私の知人が「日本のスポーツ報道のスタイルが変わってしまった」と嘆いていたことを思い出します.野茂英雄の時代には,野茂自身の活躍だけではなく,チーム全体,あるいはリーグ全体の報道が行われていました.それを通じてアメリカのプロ野球全体を知る良い機会だったのです.

この傾向がさらにひどくなったのは大谷翔平の活躍が目覚ましくなったここ 1 年ほど.彼の一挙手一投足を詳細に報じる割には,チームメイトや対戦相手のプレイなどはほぼ無視されています.そもそも現在では日本人選手が出ていない MLB の試合が中継されることはありません.昔はそうでもなかったし,今でも有料のスポーツチャネルを契約すれば別なのでしょうが.

スポーツ観戦の楽しみは,自国の選手だけに興味があって観るものではないはずです.世界の超一流クラスの選手たちのプレイを観ることは,日本人選手がいるいないに関係なく,興奮させられ,感嘆させられ,味わい深く,意味あるものです.もう少し幅のあるスポーツ報道をしてもらいたいものだと思います.

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2012/03/12

人と犬が絆につながれて極北の大河を走る

世界で最も過酷な犬ぞりレースと言われる "Yukon Quest" が今年も終了しました.つい最近,NHK で2010年のレースを取材したドキュメンタリーが再放映されたので,このレースのことを知った人も多いでしょう.このレースの公式ページはこちら

アラスカに親しみや思いを持つ人々にとっては,極北の大河 Yukon は憧れの河.氷河が解けた水を集めた大河なので,残念ながら水は茶色く濁っているのですが,その長さ,巨大さ,流域の広さ,いずれをとっても世界の大河の一つと言ってもよいでしょう.

そして,その河に沿って Fairbanks から Whitehorse(Yukon の川下りの出発点になることが多い)までの 1,000 マイルを犬ぞりで駆け抜ける Yukon Quest は,Musher こと犬ぞりレーサーにとっての最高峰.今年は,これまで完走を果たせていなかった日本人女性の本多有香さんも遂に完走できたそうです.良かったですね.上下の YouTube の映像にも,日本語で書かれたバナーを掲げてゴールで有香さんを祝福する人が映っています.

今年のレース結果を見ると,例年の王者 Lance Mackey は何と3位.2010年に3位だった Hugh Neff が優勝しています.上位陣はかなり固定されているようですが,そこにはさまざまなドラマがあることが NHK の番組でも紹介されていました.例年の参加者のリストはこちら

厳冬期のアラスカを,14頭のアラスカン・ハスキーと一人の人間が,文字通り絆につながれて 1,000 マイルも走ると聞いただけで,頭がクラクラするか胸がワクワクするかはあなた次第.私は NHK のドキュメンタリーをワクワクしながら見たほうです.蛍光色のソックスをはいた犬たちが純白の雪の上を走る姿は,時として美しく,時として痛ましく,自分も犬ぞりを足で蹴ってレースに参加している気分になりました.

日本人のブログの記事もたくさんあります.例えば,これとか,これ

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