4年に一度のアメリカ大統領選挙の投票が開始されようとしています.今回も非常に予測しがたい状況のようで,ふたを開けてみないと何とも言えないというのが正直なところでしょう.
chayka1270によるPixabayからの画像
私は前回2016年の投開票のまさにその時に仕事でアメリカに出張中だったのですが,南部の某地方都市のホテルで,時差で眠れないのをいいことに夜通し放送されていた開票速報を見ながら,まさか嘘だろ!と思いながらドナルド・トランプ氏の当選を目の当たりにしたことを思い出します.
それにしてもアメリカ社会の分断はここへきて一気に進みました.これはもちろんドナルド・トランプ氏自身が分断を煽ったことに大半の責任がありますが,しかしアメリカ社会の底層では元々分断があり,20年以上前からアメリカのバルカン化などと言われていたのですが,それが誰はばかることなく煽られ顕在化してきたというのが本当のところではないかと思います.
私が就職してすぐのころ,会社で雇った英語教師と一緒に飲みに行ったとき,好みの音楽の話になり,私がスティーヴィー・ワンダーが好きだと言うと,白人の彼は「黒人の音楽は聴かない」と明確に否定したのを聞いてびっくりしたことを思い出します.さらに後年カントリーやブルーグラスに親しむようになって気が付いたことには,コンサートの DVD を見ても聴衆の中に黒人は一人もいません.少なくとも大衆音楽に関する限りアメリカは昔から分断されていたのだと思います.白人教会と黒人教会とがあまりに違うことも分断の事実の一側面を表していると感じます.
一方,カントリー出身で若者に絶大な人気を誇るテイラー・スウィフトは,今回明確に民主党候補への支持を明らかにしました.白人保守層が顧客のほとんどを占めているカントリー界には多少のさざ波が立ったことでしょう.同じことがブッシュ(子)大統領時代にイラク侵攻を非難したカントリーの人気女性トリオディクシー・チックスにも起こり,このとき彼女たちは多くのカントリーラジオ局からボイコットされるという屈辱を味わいましたが,めげずに反撃を続けました.このようにアメリカ社会の分断にアーチストたちも翻弄されてきた歴史があります.
今回,民主党のバイデン氏は社会の分断を良しとせず,社会の統合を掲げて選挙活動を行っているように見えます.それが成功するのか,それともトランプ氏が煽る分断がますます進むのか,私は大変興味深く見守っています.
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