40 年前に起きた奇跡
U.S.A. for Africa は,1985 年にアメリカのポピュラー音楽界のアーティストが結集して行われたアフリカ飢餓救済のためのチャリティー録音です.曲は We are the world.作詞・作曲はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチー.
私は当時海外生活を始めたばかりでテレビを持っておらず,街角の電気店のテレビでこのイベントを知ったのですが,映された顔ぶれを見てびっくりしました.アメリカを代表するポップ・アーティストたちが一堂に会していたからです.ちなみに前年にイギリスではバンド・エイドというプロジェクトが起こされ,エチオピアの飢餓救済が叫ばれていたのでした.
後年 YouTube でこの映像を繰り返し見てはいたのですが,どういう段取りで録音したのか興味を持っていました.明らかに別テイクの映像も混じっていたからです.ところが今回このようなメイキングの映像があることを知り,しかもそれがあの小林克也氏の解説で放送されていたことを知り,1 時間を超えるこの映像をじっくり見ることになりました.
まず思ったのは,よくぞこれだけのアーティストを集められたな?ということです.アフリカの飢餓に対してチャリティ企画を提案したのは,何とあの往年の名歌手 ハリー・ベラフォンテ.これは今に至るまで全く知りませんでした.すごい人です.社会活動に熱心だっと言われていますが,こういうことを成し遂げられるとはすごい.当時はすでに引退気味だったと思いますが,このメイキングの中では彼を讃えて出演者全員がバナナ・ボートを合唱するシーンが収録されていて,これは涙ものです.リードしたのはアル・ジャロウ.
出演者たちが口々に語るのは,自分があのスーパースターと同じスタジオにいるのが信じられない,自分の隣で歌っているのが本当にあのスターなのか,何度も振り返って確かめたという言葉です.実際,自分の楽譜に互いにサインをもらいあう姿が残されています.自分自身もスーパースターのはずなのにこの謙虚さは素晴らしいです.もっともレイ・チャールズやボブ・デイランなど超大御所まで出て来ていて,彼らの音楽を聴いていたからこそ今の自分があるという思いがあるのでしょう.そういう尊敬の念があったからか,自分のパフォーマンスをアピールするのではなく,あくまで一つの目的のために団結してレコーディングを完成させようという熱意が感じられます.実際レコーディングは夜遅くから翌朝にかけて夜通しで行われたのでした.
まとめ役はクインシー・ジョーンズ.映画「夜の大走査線」の音楽が印象に残っています.ちなみにその縁でかシドニー・ポワティエが収録スタジオに来ていました.
80年代中頃のアメリカン・ポップスのスターたちが一堂に会するという奇跡がいかに成し遂げられたか,非常に長いメイキングですが,ここで私がグダグダ説明するより映像を見ていただいた方が良いと思いますので,この辺で.
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