音楽

2024/10/06

40 年前に起きた奇跡

U.S.A. for Africa は,1985 年にアメリカのポピュラー音楽界のアーティストが結集して行われたアフリカ飢餓救済のためのチャリティー録音です.曲は We are the world.作詞・作曲はマイケル・ジャクソンライオネル・リッチー

私は当時海外生活を始めたばかりでテレビを持っておらず,街角の電気店のテレビでこのイベントを知ったのですが,映された顔ぶれを見てびっくりしました.アメリカを代表するポップ・アーティストたちが一堂に会していたからです.ちなみに前年にイギリスではバンド・エイドというプロジェクトが起こされ,エチオピアの飢餓救済が叫ばれていたのでした.

後年 YouTube でこの映像を繰り返し見てはいたのですが,どういう段取りで録音したのか興味を持っていました.明らかに別テイクの映像も混じっていたからです.ところが今回このようなメイキングの映像があることを知り,しかもそれがあの小林克也氏の解説で放送されていたことを知り,1 時間を超えるこの映像をじっくり見ることになりました.

まず思ったのは,よくぞこれだけのアーティストを集められたな?ということです.アフリカの飢餓に対してチャリティ企画を提案したのは,何とあの往年の名歌手 ハリー・ベラフォンテ.これは今に至るまで全く知りませんでした.すごい人です.社会活動に熱心だっと言われていますが,こういうことを成し遂げられるとはすごい.当時はすでに引退気味だったと思いますが,このメイキングの中では彼を讃えて出演者全員がバナナ・ボートを合唱するシーンが収録されていて,これは涙ものです.リードしたのはアル・ジャロウ

出演者たちが口々に語るのは,自分があのスーパースターと同じスタジオにいるのが信じられない,自分の隣で歌っているのが本当にあのスターなのか,何度も振り返って確かめたという言葉です.実際,自分の楽譜に互いにサインをもらいあう姿が残されています.自分自身もスーパースターのはずなのにこの謙虚さは素晴らしいです.もっともレイ・チャールズボブ・デイランなど超大御所まで出て来ていて,彼らの音楽を聴いていたからこそ今の自分があるという思いがあるのでしょう.そういう尊敬の念があったからか,自分のパフォーマンスをアピールするのではなく,あくまで一つの目的のために団結してレコーディングを完成させようという熱意が感じられます.実際レコーディングは夜遅くから翌朝にかけて夜通しで行われたのでした.

まとめ役はクインシー・ジョーンズ.映画「夜の大走査線」の音楽が印象に残っています.ちなみにその縁でかシドニー・ポワティエが収録スタジオに来ていました.

80年代中頃のアメリカン・ポップスのスターたちが一堂に会するという奇跡がいかに成し遂げられたか,非常に長いメイキングですが,ここで私がグダグダ説明するより映像を見ていただいた方が良いと思いますので,この辺で.

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2024/10/04

小坂明子の「あなた」

昨日,近所のスーパーマーケットに立ち寄ったとき,カートを推しながら自動ドアをくぐったとたん,何とも懐かしい歌が聞こえてきました.小坂明子の「あなた」です.

この曲は私にとっては大学受験直前の 1973 年 12 月の年末に大ヒットした曲.繁華街を歩けば有線放送はすべてこの曲でしたし,級友に誘われて気晴らしに入った自宅近くのパチンコ屋でも 30 分の間に数回という頻度で流れていて,耳に焼き付いてしまいました.

今となっては古典的な歌詞ですが当時としては自然な心情だったと思います.作詞作曲して自ら歌った小坂明子さんは,それ以降ヒットした曲を聴いたことはなかったので一発屋かと思っていたのですが,実は作曲家として活動を続けており,ミュージカル版の美少女戦士セーラームーンの曲の多くは彼女の作曲.音楽家として立派なキャリアを紡いでいたのでした.自らの不明を恥じるばかりです.ごめん.

簡単な買い物を済ませてセルフレジで精算したら,またあの頃の別のヒット曲が流れてきました.これまでこういう音楽は流していなかったのになぁ?と思ったのですが,平日の午前中の客層は近くの大規模団地に大挙して住みついて老いを迎えた団塊世代の高齢者がほとんど.私も含めて彼らの若かりし頃の記憶にベストマッチする曲ばかり.

うーむ,よく考えたな.でも洋楽は流さないんだな?CCRを流したら毎日でも買い物に行ってやるのにな.

とうとうこんな懐古趣味の記事を書くようになってしまいました.人生も末期ですね.

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2024/08/31

パリ・オリンピック開会式に寄せて

え?もうオリンピック?つい最近東京でやったばかりじゃないか?と思った人も多いと思いますが,東京大会は1年遅れで開催されたのでした.しかしパリでオリンピックが開催されることは知っていたものの,いつからどういう会場で?ということには全く無頓着でした.そもそもノートルダムの修復が終わっていないのにオリンピックができるの?と頓珍漢なことを考えていたのです.過剰装飾の大聖堂が数年で修復できるはずはありません.

そしてある夏の日の朝,いつものように朝食時にテレビをつけると,雨が降りしきる中で聖火の点灯式が中継されているではありませんか?へぇーと思ってみていると,巨大な気球がぼわーっとあがり,しばらくしてから聞き覚えのある歌が流れてきました.

えー?セリーヌ!病気じゃなかったの?そして相変わらず圧倒的な歌唱力と情感表現で,エッフェル塔の展望台からパリを見下ろしながらピアフ愛の賛歌を歌い上げ,ようやく開会式が終わったようでした.伴奏のピアノは雨でずぶ濡れでしたが,ピアニストの白髪のおじさんは乗りに乗っていました.そりゃそうだよ,セリーヌだよ!しかし放送にピアノ音は含まれず,どうやら録音が使われたようです.このピアノはひょっとするとスタインウェイ・アーティストだそうで,そうだとすると大変高価なもの.でもこのパフォーマンスのためなら惜しくないということなのでしょう.

フランス人からはセリーヌのカナダ訛りのフランス語は揶揄されることもあったのですが,とにかくフランス語の歌詞を見事に歌い上げました.病んでいながらこの圧倒的な歌唱力.これぞトップシンガーの実力.エッフェル塔下で雨に濡れながら聞きほれていた観客の様子を YouTube で見ると,彼女の歌が完全に受け入れられていることがわかります.

通りに出ればエッフェル塔が間近に見える場所に住んでいたこともある者としては,あそこでこんなことが行われたんだ!という感慨がこみ上げてきました.もうパリもずいぶん変わったことでしょう.しかしパリは,

Fluctuat nec mergitur  たゆたえど沈まず

生きているうちにもう一度は訪れてみたいと思っています.

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2023/04/28

音楽ライブラリを再構築

私はパソコンを使い始めた直後から音楽 CD をパソコンで鳴らすということをやってきました.当初はパソコンの CD ドライブを単に CD プレイヤーとして使っていたのですが,そのうち CD のデータをリッピング(デジタルデータとして取り込み圧縮する)して,それをパソコンのソフトウェアで並べ替えたりプレイリストを作ったりして楽しむということをやってきました.

その間いろいろな音楽再生ソフトを試しながら,最終的には Windows 標準の Windows Media Player (WMP) を使って Windows Media Audio (WMA) というコーデックでリッピングし,それをそのまま WMP で再生していました.

しかし Windows 11 になってから Microsoft は WMP の開発をやめ, Media Player という非常に中途半端なソフトを推すようになったので,どのソフトに乗り換えたらいいのか再び試行錯誤を繰り返していました.

ここ一年ほどは foobar 2000 という有名なソフトを使ってみたのですが,あまりに自由度が高すぎ,カスタマイゼーションの手間がかかりすぎて困っていました.またこれ単体ではリッピングもできません.

と,そこへきて今回 MusicBee というソフトに出会い,これなら使えるのではないかと思って使い始めました.カスタマイゼーションの自由度は高いのですが,それでも foobar 2000 に比べればある程度の骨格は固まっているので悩むことはありません.リッピングの能力は十分ですし,プラグインを使えば歌詞を表示することもできるので,英語の歌詞を聴き取る練習も可能です.

Reconstructing_music_library

さらにこれを機にコーデックを人気の薄い WMA から汎用性が高い MP3 に変更しました.しかし,ということは,全楽曲をリッピングしなおさなければならないということです.リッピングしたデータはパソコン以外にも宅内 2 か所のオーディオ・プレイヤーで使いますし,クルマの車載プレイヤーでも聴くので,そのフォーマットの選択は重要です.

昨日から手持ちの CD 数百枚のリッピングを始めました.おそらく完了するまでには 2 週間ほどかかると思いますが, 30 数年前から買い続けた CD 一枚一枚を改めて聴きなおしてみると新たな発見があり,これは時間をかけるだけの価値があると思い直しました.

CD の中にはカビが生えていたり,アルミ蒸着層が腐食を始めているものもあったので,そういうチェックをするよい機会にもなりました.現在では CD を買う人は少なくなり,ストリーミングで音楽を聴いたり,アルバムの中の好きな曲だけを MP3 で購入したりというスタイルが流行っていますが,しかしかつてのバイナル盤 LP を模したジャケットライナーノーツを持ち,全楽曲を合わせたアルバムで一つの作品として作られている CD の魅力を捨て去ることはできません.

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2022/09/08

Willie Nelson 珠玉のデュエット集

3 年ほど前の Willie Nelson のアルバムの紹介でもちらっと言及していたのですが,今日は改めてこのアルバムを紹介したいと思います.Willie Nelson のアルバムには従来から女性歌手とのデュエット曲が多く収録されているのですが,このアルバムは女性カントリー歌手とのデュエット専門.それも全部で 18 曲も収録されているという大変お買い得なアルバムです.録音やミキシングも優秀で,何の心配もなく曲の流れに身を任せることができます.

リリースは 2013 年なのでもう 10 年近く前のアルバムなのですが,いつ聴いても良いものは良い.Willie Nelson の優しく端正な歌声が,さまざまな味わいを持った女性歌手の歌声と交わり,溶け合い,絡み合って,あなたの官能を刺激すること間違いありません.

私が特に気に入った曲は,第 7 曲,Carrie Underwood と歌った “Always on My Mind”.アレンジも非常に良いと思います.Taylor Swift のスーパースターぶりの陰に隠れて目立たなくなった Carrie Underwood ですが,歌唱力は American Idol 優勝とグラミー賞の実力.申し分ありません.

第 5 曲,Sheryl Crow と歌った “Far Away Places” も良いです.Sheryl Crow の全く衰えを感じさせない歌声が素晴らしく,夜遅く,できれば深夜に,部屋を暗くして聴くのにぴったり.

第 8 曲の Loretta Lynn とのデュエット “Somewhere Between” は, Loretta 節がたっぷりと楽しめる逸品.Loretta も衰えていませんねぇ.ありがたいことです.いったいいつ録音したのでしょう?昔の録音の再利用かもしれません.Loretta は今年 90 歳になっているはずです.

第 14 曲の Lily Meola というシンガーは初めて聴きましたが,まだ若いのでこれからが楽しみ.情感表現を磨けばヒットしそうです.調べてみると,彼女は America's Got Talent の出場者.ハワイはマウイ島出身.Willie Nelson がマウイ島に住んでいた時期に発掘されたのかもしれません.

第 17 曲,自身の娘の Paula Nelson と歌った Creedence Clearwater Revival の往年の名曲 “Have You Ever Seen the Rain” も良いです.ゆったりと物憂い雰囲気で歌うのですが,原曲を高校生時代に浴びるほど聴いていた者にとっては,これも一つのアレンジかと思いました.

一方,第 9 曲の Alison Krauss とのデュエットは,彼女の良さが十分に生かされているとは言えず,残念な印象.ラテンの曲の雰囲気が向いていなかったか?

ま,とにかく買って損はしませんので,ぜひ聴いてみてください.

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2021/02/27

梅は咲いたか桜はまだかいな

昨日は終日曇天で肌寒かったのですが,家人が用があるというので近隣の自然公園を訪れました.まだ春には遠く,ちょうど冬と春の端境期に当たっているようで,冬のものはそろそろ終わったものの,春のものはまだもう少し先という感じでした.それでも早産みで知られるアカガエルの卵塊はありましたよ.

葉を落とした広葉樹の林の中では小鳥たちがちらほら.エナガマヒワメジロコゲラシメなどが飛び交っていました.また遠くではオオタカの声が聞こえましたが,そろそろ繁殖期かな?

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公園の駐車場に隣接する梅林では,ウメが五分咲きといったところでしたが,光が悪くてあまり良い写真が撮れませんでした.今頃の季節にふさわしいのは,明治に流行った江戸端唄の「梅は咲いたか,桜はまだかいな」でしょう.梅や桜はそれぞれ芸妓を指しているそうですが,そこまで想像力を働かせなくとも十分に楽しめます.「しょんがいな」というのは「しょうがないな」を端折った言い方なのでしょう.いくつかのパフォーマンスを YouTube から引っ張ってきました.

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2020/11/03

いよいよ投票

4年に一度のアメリカ大統領選挙の投票が開始されようとしています.今回も非常に予測しがたい状況のようで,ふたを開けてみないと何とも言えないというのが正直なところでしょう.

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chayka1270によるPixabayからの画像

私は前回2016年の投開票のまさにその時に仕事でアメリカに出張中だったのですが,南部の某地方都市のホテルで,時差で眠れないのをいいことに夜通し放送されていた開票速報を見ながら,まさか嘘だろ!と思いながらドナルド・トランプ氏の当選を目の当たりにしたことを思い出します.

それにしてもアメリカ社会の分断はここへきて一気に進みました.これはもちろんドナルド・トランプ氏自身が分断を煽ったことに大半の責任がありますが,しかしアメリカ社会の底層では元々分断があり,20年以上前からアメリカのバルカン化などと言われていたのですが,それが誰はばかることなく煽られ顕在化してきたというのが本当のところではないかと思います.

私が就職してすぐのころ,会社で雇った英語教師と一緒に飲みに行ったとき,好みの音楽の話になり,私がスティーヴィー・ワンダーが好きだと言うと,白人の彼は「黒人の音楽は聴かない」と明確に否定したのを聞いてびっくりしたことを思い出します.さらに後年カントリーやブルーグラスに親しむようになって気が付いたことには,コンサートの DVD を見ても聴衆の中に黒人は一人もいません.少なくとも大衆音楽に関する限りアメリカは昔から分断されていたのだと思います.白人教会と黒人教会とがあまりに違うことも分断の事実の一側面を表していると感じます.

一方,カントリー出身で若者に絶大な人気を誇るテイラー・スウィフトは,今回明確に民主党候補への支持を明らかにしました.白人保守層が顧客のほとんどを占めているカントリー界には多少のさざ波が立ったことでしょう.同じことがブッシュ(子)大統領時代にイラク侵攻を非難したカントリーの人気女性トリオディクシー・チックスにも起こり,このとき彼女たちは多くのカントリーラジオ局からボイコットされるという屈辱を味わいましたが,めげずに反撃を続けました.このようにアメリカ社会の分断にアーチストたちも翻弄されてきた歴史があります.

今回,民主党のバイデン氏は社会の分断を良しとせず,社会の統合を掲げて選挙活動を行っているように見えます.それが成功するのか,それともトランプ氏が煽る分断がますます進むのか,私は大変興味深く見守っています.

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2019/10/01

晩年になっても珠玉の作品

Let's Face the Music and Dance [CD] - Willie Nelson & Family

数年前に買って時々聴いてはいたのですが,PC用のデスクトップ・スピーカーで聴くだけだったので,久しぶりにアンプとスピーカーを通して聴いてみたら,うーん,しまったと思いました.もっと早くから聴きこんでおくべきでした.私は Willie Nelson は大好きなアーティストの一人なので,アルバムも10枚以上持っていると思いますが,その中でも上位に入る出来だと思います.

2019年現在御年86歳のはずですが,80歳代に入ってから作ったこのアルバムでも,Willie の端正かつ繊細でやさしい声は健在です.昔のスタンダードナンバーをカバーし,かつ大変リラックスした感じのダンスミュージック風にアレンジしてあるので,素敵な相手と踊るにはもってこいです.こういう歌声に包まれてダンスしたら気持ちがいいでしょうね.同じ年に,カントリーの女性歌手とのデュエットアルバム “To All the Girls...” もリリースしており,こちらも出色の出来です.今年も新しいアルバムを出しているようなので,ファンとしてはまだまだ楽しめそうです.

私はカントリー歌手としての Willie Nelson を聴いてきたのですが,音楽性の幅は大変広いので,なかなか一つの枠には収まり切れません.それがこの歌手の魅力ですが,彼のヒッピー的なスタイルは従来の保守的なカントリー界からはうさん臭く思われていたはずです.しかし,金髪の三つ編みの外見とはうらはらに,ギターと歌唱のレベルの高さ,音楽性の高さは疑いようがなく,また今や伝説となった愛用のギター “Trigger” (*) とともに,これからもファンに愛されていくのだと思います.

本アルバム中,私が最も気に入った曲は,第3曲の “You'll Never Know”.大変ロマンチックな曲で,深夜に聴くにはもってこいです.お勧め!

(*) Martin N-20 ナイロン弦のクラシックギター,これにピックアップを付けて演奏するのが Willie Nelson のスタイル.

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2018/07/07

Gentle on My Mind が出色のでき

WINDY CITY [CD] - Alison Krauss

本当に久しぶりに音楽 CD のレビューを書きたいと思います.今回は昨年発売の Alison Krauss の久々のアルバム “Windy City” です.ここ数年間は AKUS としてのアルバムを出しておらず,ファンとしては音楽性の変遷も感じられて大変気になるところではあるのですが,しかし AKUS としてのツアーは毎年精力的に行っています.スケジュールを見ると全米をくまなく回っており,非常にタイトなものです.これはものすごい負担になっていると想像します.まあ,AKUS くらいの大物になると,ミュージシャン自身は悪臭漂うツアーバスではなくて,ビジネスジェットで移動しているかもしれませんが,スタッフと機材は当然ツアーバスでの移動でしょう.アメリカのステージミュージシャン稼業は過酷ですね.

さて,このアルバムはブルーグラス色を抑え,どちらかというとカントリー・バラード風の曲が多く,ニューグラスの旗手の復活を願うファンとしてはちょっと残念.また,レーベルが Rounder ではなく Capitol に替わっています.しかし,収録された曲はいずれも素晴らしく,安心して聴いていられるものばかりです.録音エンジニアはまたしても Gary Paczosa のようで,これも安心できる要因の一つ.

実は私が最も気に入り,繰り返しそればかり聴いているのは第7曲に収録された少し古めのスタンダードナンバー “Gentle on My Mind” です.オリジナルは Glen Campbell でしたね.とにかく曲のアレンジが素晴らしく,この曲にはこういう魅力があったのかと再発見させられること請け合いです.特にピアノの間奏がとても素敵です.

アルバムタイトルになっている第3曲の “Windy City” と,第1曲の “Losing You” も素晴らしい曲です.これら2曲がこのアルバムの性格をよく表現していると言ってもいいくらいだと思います.Alison Krauss のヴォーカルは全く衰えを知らず,実に安定した美しさを保っています.いったいどれくらいのヴォイストレーニングや日常生活の節制を強いられているのか知る由もありませんが,とにかく天使の歌声は今も健在です.

私としては,そろそろ AKUS 本来のニューグラスのアルバムが欲しいところです.“So Long So Wrong” や “New Favorite” のような名アルバムが再びリリースされることを願っています.

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2016/07/18

夏の欧州は野外音楽のシーズン

先週は再び北イタリアへ行っていたのですが,もう夏休みが始まっていて,観光地はどこも大賑わい.私が滞在したのは比較的小さな世界遺産の街なのですが,街の中心部には大きな広場があり,そこで日暮れ時から野外コンサートが開催されていました.その日のオーケストラはスイスのチューリヒからやって来たそうで,そういえば乗り継ぎの空港には楽器を抱えた人もちらほらいましたっけ?

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こういう音楽や舞踏の生のコンテンツを身近に楽しめるところが欧州の良いところの一つです.歴史と文化の厚みが違います.どんなに優秀なオーディオ機材を揃えたとしても,生のコンテンツに接する機会があるのとないのとでは,その人のセンスや鑑賞眼の磨かれ方に差が出てくるのは当然でしょう.子供のころから,こういう一流の生のコンテンツに触れて育つ環境にある欧州から,一流の芸術家が多く出てくるのは必然のような気がします.

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