日記・コラム・つぶやき

2022/03/18

日本が難民に冷たい理由は?

世界で紛争が起こり難民が発生するたび,日本がその受け入れに冷淡だということが言われます.いろいろな統計数値を見てもその傾向は顕著で,例えばドイツが受け入れている難民の数よりも 3 桁から 4 桁少ない数しか日本は受け入れていません.申請者の大部分が偽装難民という問題があるにしても,それは他国も同じはずで,この差はあまりにも極端です.

さらに出入国在留管理庁の収容所に拘留されていたスリランカ人女性が,適切な治療がされないまま病死するという事件も起きています.担当した刑務官たちは処罰されるべきですが,これは単に彼らの職務能力が低かったという問題ではないような気がします.

日本は島国なので国境を越えて難民が押し寄せて来るというイベントを経験していません.また自分たちも,戦争が起きたからといって海を渡って他国に逃れるという行動をとったことがありません.(*ただしこれに準ずるイベントとして,第 2 次世界大戦後に外地の日本人が日本に引き揚げてきたことはあります.軍人・軍属が 350 万人,一般人が 300 万人という膨大な数です.帰るべき土地や家がある家族はよかったでしょうが,それが無かった家族は祖国に帰国できても難民同然でした.)

Ruinsg70ef9fa24_1280Pixabay より転載

おそらく,日本人は自分自身が難民になって他国をさまよい歩く可能性があるとは考えていないのだと思います.難民の報道を見ても明日は我が身という発想が起きないのでしょう.中東やアフリカや南アジアで大規模な紛争が起こって大量の難民が発生しても,そんなことが自分たちに起きるはずはないと決めてかかっているのです.だから難民に対しても冷淡な態度が取れるのだろうと思います.

その固定観念を最初に破って見せたのは小松左京の小説「日本沈没」でした.皇室はスイスへ避難,数千万人の国民が世界中に分散して難民と化していくのです.イベントは現実にはあり得ないような地殻変動でしたが,イベントの種類は何でもよいのです.例えば,日本のどこかで Aso-4 クラスのカルデラ噴火が起きれば,日本の半分以上の面積に数百年間人が住めなくなります.どこかの原発がミサイルで破壊されると,ひとつの県程度の面積に 200 年以上人が立ち入ることはできなくなります.これらは十分に現実的な想定と考えておくべきです.そんなことはあり得ないと思う人は,原発を壊すような津波なんてあり得ないと考えていた当時の東電幹部と同類で,安全保障に対する想像力が欠如しています.

日本人が日本という島に住んでいられなくなったらどうするか?という問いに対して,想像力を欠いたまま統治と生活が行われていることが,難民に対する態度の背景にあると思います.自分が難民になることがあるかもしれないと思っていれば,難民に対して今とは異なる対応ができるはずです.明日は我が身だからです.明日の自分を助けると思って,今日の他人を助けるのです.そうすることで国境を越えた助け合いの精神は厚みを増していきます.そのような発想を日本人も持ってほしいと思います.

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2022/03/17

ジャベリンの大見本市を画策

昨夜遅く強い地震で目が覚め,揺れのパターンからちょうど 11 年前の 3.11 をまざまざと思い出し,茨城沖のプレート境界型地震を思い浮かべたのですが,実際には宮城・福島沖のスラブ内地震でした.昨夜の当地の震度は 5 弱だったので,特に倒れたり壊れたりしたものはありませんでした.

と,朝になってニュースを見てびっくり.米国バイデン大統領が,ウクライナに 8 億ドルにのぼる追加の軍事支援を行うとのことで,その中身は,ホワイトハウスの声明その他のニュースソースによれば,スティンガー 800 発,ジャベリン 2,000 発, 1,000 発の軽量対戦車兵器, 6,000 発の AT-4 対戦車弾,その他ドローンや小火器となっています.

これはアメリカによる携行式兵器の大見本市です.先日の記事に書いた通り,ジャベリンは一発が 2,000 万円,スティンガーは 400 万円もする高価な兵器.従って,ジャベリンを 400 億円分,スティンガーを 32 億円分供与するということになりますが,これは十分元が取れると踏んだのでしょう.とにかく実戦で威力を誇示できたものは強い.ウクライナを助ける正義を装いながら,裏ではしっかり算盤をはじいているのが見え見えです.

この戦争が終結したのち,対戦車戦を想定している国はこぞってジャベリンに群がってくるはずです.アメリカの兵器産業は増産や技術指導で忙しくなるでしょう.バイデン氏は,この軍事援助に限って言えば,アメリカ兵器産業の最良のセールスマン役をやっていることになります.これが戦争の現実でありいやらしいところ.しかし避けては通れない部分でもあります.

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2022/03/14

アインシュタインの誕生日に

本日 3 月 14 日は,アルベルト・アインシュタインの誕生日.生年は 1879 年,没年は 1955 年です.彼が晩年を過ごした米国プリンストンでは,この日をパイの日としてパイを食べて祝っています.そう円周率 3.14 にかけているわけです.

と,こういう日ですが,ひな祭りの日の記事に書いたように,ロシアはウクライナへの侵攻の手を緩めていません.首都を包囲し,市街地を破壊して降伏を迫るという戦術だと思われます.私は,ウクライナとしてはそろそろ降伏を準備すべきと思います.これ以上,兵士と市民の犠牲者を増やしたり,近隣国への避難民を増やすことは得策ではないと思います.

それよりもいったん降伏して傀儡政権を作らせたのち,辛抱強くレジスタンス活動を行うべきです.ウクライナのような広大な土地で,仮に 2 万人がレジスタンスに参加すれば,ロシアはそれを取り締まるのに 10 万人以上の兵士と警察組織をウクライナ国内に維持しなければなりません.しかし経済制裁を受けているロシアにはその余力は持てないでしょう.兵士の給料が払えなくなる,さらには物資の補給もままならなくなる,現地部隊は不満を募らせ,本国でもクレムリンの中枢でプーチンの斬首(首を切り落とすのではなくチャウシェスクのように権力の座から引きずり下ろすという意味)が計画されるというシナリオです.

いや外国からの武器弾薬の補給や義勇兵が続けばまだまだ戦える,歩兵携行の対戦車ミサイル「ジャベリン」や,これも歩兵携行型の対空ミサイル「スティンガー」が威力を発揮しているではないか,という意見もあるでしょう.しかしジャベリンはミサイル一発が 2,000 万円もする大変高価な兵器なのです.スティンガーは一桁安いですがそれでも 1 発が約 400 万円.いくら効果的ではあってもこのような兵器を大量・長期に補給してくれる国などありません.

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pixabay より転載

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米国海兵隊のライブラリより転載

あと 10 日ほどで双方の兵力や武器弾薬は補給制約の状態におちいり,双方が手詰まりの状態に入ります.それを見越して停戦や降伏の交渉を行うのがこれからの最も重要な戦術ではないかと思います.ロシアはそうならないようにここ数日で集中的に攻撃の手を強めるかもしれませんが,ロシア軍も指揮系統に怪しいところがあるので,それができるかどうか?このあたりが戦況の分かれ目になるような気がします.

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pixabay より転載

とにかく双方の犠牲者を少なく,避難民を少なく.かつてロシアがナポレオンからモスクワを守ったように,非常に地味な戦略ではありますが,ロシアの衰えを待つことが最善ではないかと思います.

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2022/01/01

恭賀新年 2022

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明けましておめでとうございます.皆様にとって昨年はどのような一年間だったでしょうか?私も昨年を振り返り,今年の展望について思うところを書いてみたいと思います.

昨年は新型コロナウィルス SARS-CoV-2 によるパンデミック COVID-19 が最初から最後まで継続した年でした.日本政府と国際オリンピック委員会は東京オリンピック興行を無観客で強行しましたが,それによる感染者の急増は起きなかったので,十分な対策によって感染をうまく抑え込んだと言えるでしょう.しかしオリンピック開催の本当の目的であったインバウンド消費の拡大や,日本全体の景気浮揚という思惑は完全に外れ,大きな負債が残ったことは反省材料です.

私自身に関しては,もともと大都市圏外に引きこもっていることもあり,コロナ禍の直接の影響は何も受けていません.病院への通院,日常の買い物,レストランでの食事も今まで通りです.何の不便もありません.一昨年以来規則正しいリズムで日課を継続しており,午前中はおもに学び直しのお勉強.昼食後に 1 時間ほど散歩して,帰ってからは写真のレタッチやブログの記事の更新などを行い,夕方になるとビールを飲みながら録画しておいた映画やドキュメンタリーを観ています.

昨年は引退 4 年目でした.非常勤の仕事はまだ継続していますが,やっていることと言えばたまにリモート会議に出席するくらいで,人と直接会うことはありません.コロナ禍のおかげでどの企業も Zoom や Teams のリモート会議の体制を整えたので,以前のようにアクセスポイントに長時間電話をつなぎっぱなしで会議をする必要はなくなり,これはコロナ禍の効用と言えると思います.

ワクチンに関しては,自治体から通知が来たのが 4 月,ようやく予約が取れて 1 回目の接種をしたのが 7 月中旬2 回目の接種が 8 月上旬でした.自宅から歩いて行ける距離のクリニックで接種できたので,この点は大変楽でした.自治体によれば 3 月上旬には 3 回目の接種券が届くはずなので,同じクリニックで予約を取って接種を受けたいと思います.


日課となった学び直しは,独習というやり方に限界を感じながらも,着実に進展中です.昨年は量子力学の重厚な教科書をヒイヒイ言いながら読了したのですが,具体的な内容が頭に残っていないことに愕然としています.若いころとは違いますね.悲しい.さらに学び進めていくうちに,どうも学問の体系自体に違和感を感じるようになりました.特に正準量子化の正当性.これって金科玉条なの?名前が偉そうで,なんか怪しい.

そのモヤモヤを解消するために公理論的な量子力学の教科書も読んで,ようやく頭の中がすっきりしました.やはり正準量子化は一つの方便にすぎず,古典的対応物がある場合にうまく行くことがあるという程度のもの.ノーベル賞を取ったくり込みに至っては辻つまを合わせるための応急処置でしかないとわかって安心しました.量子力学はまだまだ未完の学問なのです.万物の理論とか神の数式とか,盛りすぎた言葉が世の中に広まっているのが残念.

それが終わって次は何を読もうかと悩みましたが, 20 年以上前に買ったまま積読になっていた宇宙流体力学という教科書を読み始めました.流体力学は私の専門分野なのでスラスラ行けるかと思いきや,この数10年の間に忘却の彼方にすっ飛んでしまった事項も多く,あちこちつまづきながらヨタヨタと読み進んでいます.

しかし星の重力安定性とか,恒星風とか超新星爆発のガスの挙動とか,そういう現象を数式で表現して理解することができるのは大変大きな喜びであり快感です.ただし今読んでいる教科書は内容がいく分古いことと,数式展開に省略が多くてついて行くのが大変なので,新しく丁寧な教科書も物色中です.


健康面では,秋も深まったころに時限爆弾の尿路結石が再発しました.二日ほどの短期間でしたが痛みに苦しみ,鎮痛剤結石排出促進剤を飲んで石を膀胱に落とし,無事排石することができました.しかし腎臓内にはまだ複数の石が残っていることがわかっているので,こいつらをどうするのか,正月明けに医師と相談するつもりです.

薬を飲み続けているコレステロールの値は正常値の範囲内で落ち着いています.経過観察をすでに 3 年以上続けていますがこれは一生続くのかな?薬の副作用も喧伝されているのでちょっと気になっています.

ところで,秋の定期健診で体重と腹囲の増加,さらには血圧の上昇が発覚したので,それ以来食事とアルコールと塩分の量を制限するようにしています.もともと空腹を快感と感じるたちなので,私にとってダイエットは苦痛ではありません.その甲斐あって秋の 2 か月で体重を 3 kg 以上減らすことができました.年末年始は日本酒を飲む機会が増えるので多少悪化するでしょうが,正月が終わったら再びダイエットに励むつもりです.

白内障は経過観察中.乱視も老眼も一発で直せる多焦点眼内レンズを入れたいと思っていますが,田舎には(というより日本には)眼内レンズ用の最新の測定器や手術設備を備えた病院がほとんどないので困っているところです.片目で 40 万円もかかりますし.


カメラについては特に変化はありません.相変わらず SONY の高倍率ズーム・デジタルカメラを使っています.世の中では高級なフルサイズのミラーレス一眼がいろいろ出てきて面白そうなのですが,とても私のごとき年金ジジイに手が出せる価格ではないので,別の宇宙の出来事と考えて近づかないようにしています.ただ旅行に気軽に持っていけるコンパクトで質感の高いカメラは更新したいと思っており,このジャンルの新製品が枯渇している現状で,旧製品をあれこれ物色中なのですが,スマートフォンのせいでコンパクトデジカメ業界が絶滅しそうなのが気がかり.

新たな趣味として,昨年から小型のリニア PCM レコーダーを持ち歩き,散歩の最中で野鳥の声を録音することを試みています.周囲に様々な雑音があり,また鳥との距離もあるので理想的な録音はできませんが,いくつか興味深い記録が取れました.今年も継続して取り組みたいと思います.


PC のハードウェアも更新無しです.本当は昨年中にメインマシンを新調したかったのですが,半導体不足とやらでパーツが揃わず,またビデオカードが法外な値段に高止まりしてしまったので,当分様子見です.ハードウェア全般の価格水準が上がっているので,これまでのように高性能マシンが欲しければ自作に限るとは言えなくなってきました.昨年家人が新調した有名メーカー製のマシンは,キャンペーン価格だったこともあって非常にコストパフォーマンスが高く,これからはメーカー製やショップブランドの PC も選択肢に入れる必要があると思うようになりました.


昨年はタダ同然で手に入れた Kindle 版の「新・平家物語(吉川英治)」を何か月もかかって読了.非常に長い作品で,途中でかなり飽きてしまいました.長期連載の新聞小説とはこんなものですかね?終盤の義経の逃避行はもう少し端折ってもよかったのでは?それにしても実は後白河法皇こそが歴史の主役とわかりました.なかなかのやり手で厄介な御仁だったのですね.かつての上司を思い出してしまいました.

現在は同じくタダ同然で手に入れた Kindle 版の宮本武蔵(吉川英治)を読んでいます.こちらはさほど長くないので,飽きずに読み通せそうです.序盤で,若い野武士だった武蔵があっという間に剣の達人になってしまったのが不思議.数年の修業期間のことが書かれていません.その過程を癖のあるキャラを配して書けばもっと面白くできたはずなのに.

昨年観た映画は合計 41 本.引退して暇になったはずなのに引退前の半分以下です.良い作品だと思ったのはヒッチコックの名作「ダイヤル M を廻せ!」と,ドイツ映画の近作「ヒトラー ~最期の 12 日間~」.前者は私としてはヒッチコックの最高傑作だと思いました.後者では,宣伝相のゲッペルス夫妻の演技が非常に良かった.この映画を観た直後に NHK の「映像の世紀プレミアム」でゲッペルス本人の実写映像と音声を何度も観聴きしたのですが,Ulrich Matthes という俳優の演技は称賛に値します.

年末になって観た「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」もいい映画でした.イギリスは金の卵を産むニワトリを無残に殺してしまいましたね.私はエニグマのレプリカが欲しくなってしまいました.ラズパイで作れそう.でもそれをクラックするのはラズパイでは無理そうです.


今年は引退生活の 5 年目に入ります.人生の先は短いので引きこもってばかりもいられません.COVID-19 が沈静化したら,旅行に出かけたり人との対面の交流を増やしていきたいと思っています.皆様も健康第一でお過ごしください.どうかお元気で.

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2021/01/01

謹賀新年 2021

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明けましておめでとうございます.例年通り昨年を振り返り,今年の展望について思うところを述べてみたいと思います.

昨年は年初のころは世の中例年通りだったものの,2月ころから新型コロナウィルス SARS-CoV-2 によるパンデミック COVID-19 によって世界中が混乱に陥ってしまいました.この混乱は 1 年経った現在でも続いており,いつになったら元のような暮らしができるのか,まったく先が見えません.東京オリンピック・パラリンピックはどうなるのか?海外旅行に行けるようになるのはいつごろか?サービス産業はどうなるのか?などと気を揉む毎日です.

と,まあ一般論はそうなのですが,私自身に関する限り大した影響は受けていません.なぜかというと,もともと田舎で引きこもって暮らしているからです.午前中はネットサーフィンとラジオ体操の後で学び直しのお勉強,午後は散歩に出かけて戻ってきたら写真の整理,夕方からはビールを飲みながら録画しておいた映画やドキュメンタリーを観る,という暮らしをしています.家族以外の他人とはそもそも滅多に会いません.他人との会話は電話か Skype や Zoom.パンデミック以前と何も変わりません.ただし同窓会などがすべてキャンセルになったことは残念でした.

外出ができないという意味では,遠方に旅行に出かけられないのも困りものですが,そのうちできるようになるでしょう.そうそう,GoTo トラベルはちゃっかり利用して近場の旅行をしてきました.地域共通クーポンもしっかり使いましたよ.こんな分析もありますが.

ワクチンが普及し,ウィルスが変異しては感染力は強いものの低毒性のものに変化していけば,3年後くらいにはインフル程度の病気になるでしょうから,そうなったら海外旅行も普通にできるようになるでしょう.それまでは晴耕雨読の今の生活(実際には全天候型の読歩飲観,意味は上記段落からおくみ取りください)を続けるだけです.ストレスなど何もありません.


昨年は引退3年目でした.秋になって突然介護保険の被保険者証が届いたのにはびっくり.もうそんな齢になったのか?道理で12月から老齢厚生年金が満額入ってくるようになったわけです.もう立派に高齢者の仲間入り.そうそう,地元の市から肺炎球菌の予防接種の通知も来たので,ちゃんと接種してきました.もちろんインフルの予防接種も.

COVID-19 の影響だろうと思うのですが,昨年は一昨年に比べるとコンサルティングの仕事が激減し 50% 以下に落ち込みました.持続化給付金を申請しようか迷いましたが,証憑類を揃えられずにとん挫.まあ食うに困っているわけではないので,国庫に負担をかけるのは遠慮しました.年金の範囲内で生活していけばよいだけの話です.ビールならぬ第三のビールや,チリ産の安くて旨いワインを飲んでいる分には何も困りません.


昨年,一昨年もご報告したように,学び直しは着実に進展中です.昨年は学部時代にスキップしていた解析力学前期量子論に手を出し,さらに一般相対性理論で開眼したテンソルについて厚めの教科書を読了,現在は量子力学の 2 冊目の重厚な教科書を読んでいるところです.ようやく諸分野のつながりや依存関係が見えるようになってきて,ヘンテコな数式を見ても拒否反応を起こさなくなってきました.しかし,世の中には極端に頭の良い人たちが(結構たくさん)いるのだという事実を思い知らされ,目に見えないところでその恩恵を受けている私たちがいるのだとつくづく思います.

しかしやはり独習はつらいので,仲間と互いに教えっこしながら学んでいけないか,ブログにもこんな記事を書きました.


健康面では,昨年は比較的平穏でした.時限爆弾の尿路結石は一度も悪さをせず,また薬を飲み続けているコレステロールの値は正常値の範囲内で落ち着いています.定期健診では胃の内視鏡で必ず何か言われるのですが,生検をすると毎回正常.生検は費用が高いのが玉に瑕ですが.

一つだけ増えたのは白内障.皆さんは大丈夫ですか?数年前から自分でも気がついてはいたのですが,眼科医で本格的に見てもらったところ,進行を遅らせる点眼薬をさしながら経過観察をしましょうということになりました.いっそのこと乱視も老眼も一発で直せる眼内レンズに替えたいところですが,日本では保険が効かずあまり普及していないので,相談すべき医者を探すところから始めなければなりません.

毎日のように散歩をしているのですが,なかなか目標としている 6,000 歩を超えません.遠出をすれば 8,000 歩とか 10,000 歩歩くことは簡単にできるのですが,それなりに時間もかかるので他の雑事との兼ね合いです.また循環器の医者からは,歩数を気にするよりも,脈拍を毎分 80 以上に上げる有酸素運動を連続 20 分以上行うよう言われているのですが,これでは汗だくになるので事後のシャワーが必須.なかなか毎日は行えません.


趣味の写真についてはいくつか動きがありました.もともと PENTAX のデジタル一眼レフを愛用しており,好きな単焦点レンズも揃えていたのですが,散歩のときに野鳥を撮ることが増えたので,父の形見の Canon の廉価版一眼レフ+望遠ズームで代用していました.しかし性能に限界を感じたことと,PENTAX のフルサイズ一眼レフ将来性に希望が持てなくなったので,思い切って PENTAX 一式を売り払い,そのお金で SONY の超望遠ズーム搭載コンパクトデジカメを新調しました.昨年11月半ばからはもっぱらそれを使って写真を撮っています.使いこなすにはまだ日々の経験が必要ですが,毎日のお散歩カメラとしては必要十分.

さらに本格的に鳥を撮るのであれば,OLYMPUS の micro 4/3 のボディ新製品の超望遠ズームがほしいところですが,両方合わせると 100 万円近くするので,まあ初夢で楽しむことにしましょう.


PCのハードウェアに関しては,2月にメインマシンの CPU とマザーボードを新調し,古くなった部材をサブマシンの Linux システムにお下がりさせました.しかし体感上のスピードなどは特に変化ありません.ここ数年 Intel の CPU の世代交代が停滞しているので,今年中にメインマシンの CPU を AMD の Ryzen 9 に入れ替えようかとも考えるのですが,その分消費電力も増えるのでどうしたものかと思案中です.当面の目標は Microsoft Flight Simulator を 2k/60fps で動かすことですが,ゲームソフトそのもののチューニングが必要とされているので,まだしばらく先の話になりそうです.

プログラミングについてはいくつか進展がありました.辞書参照型ソーティング・フィルタである Refsortに関しては数回の改定を行って新機能をいくつか追加しました.それに伴ってソースコードが肥大化してきたので,長年の課題だったデータ構造に手を入れ,コードを簡素化して見通しを良くすることに成功しました.それによって,機能が増えたにもかかわらずソースコードのサイズを大幅に小さくすることができました.今月中に減量化したコードの第1弾を,来月にはさらに機能を追加した第2弾をリリースする予定です.さらに Ruby 3.0.0 が昨年末にリリースされたので動作チェックを行いましたが,特に問題はないようです.実行速度がやや低下したのが気になりますが.


昨年は何年ものあいだ須磨源氏と化していた塩野七生の歴史小説「ローマ人の物語」全巻を Kindle 版で読了し,余勢を駆ってその続編ともいうべき「ローマ亡き後の地中海世界」を読み,次はタダであるのを良いことに青空文庫版の「三国志(吉川英治)」も読み,現在は同じくタダで手に入れた「新・平家物語(吉川英治)」を読んでいるところです.

昨年観た映画は合計60本.ほとんどすべて NHK BS プレミアムの録画ですが,中には地元のシネコンで観客が家人と私の二人だけだったという「千と千尋の神隠し」も含まれています.


今年は引退生活の4年目に入ります.COVID-19 が沈静化すれば,人との対面の交流を増やしていきたいと思っています.皆様も健康第一でお過ごしください.どうかお元気で.

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2020/09/06

年金請求書が来ちゃった

先週ポストした記事で介護保険証が来ちゃったという話をしましたが,今度は「年金請求書」というものが来ました.65歳というのはいろいろな制度の節目になっているようです.

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このはがきに記入して提出しないと年金を受け取ることができません.また年金を繰り下げて(その分増額されて)受け取るためには,該当箇所にチェックして提出しなければなりません.どうしたものかなぁ?受け取りを繰り下げると年金は増額されるのですが,その分,健康保険や介護保険の保険料が増額されるので,手取り額があまり増えないことはあまり知られていません.これら保険の会計は大変苦しいので,取りっぱぐれがないように非常に細かく保険料体系が作られています.

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2020/08/29

介護保険証が来ちゃった

つい数か月前まで,父親の介護保険の手続きや還付金の受け取りなどでバタバタしていたのですが,まったく不意打ちで私自身の介護保険被保険者証が送られてきました.これは満65歳になる人にはその前月に自動的に送られてくるので,当たり前ではあるのですが,心の準備ができていないのにいきなり被保険者証が来たので,びっくりしてしまいました.

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介護保険はこれまで長い間保険料を納めるばかりで,保険料は今後も払い続けるのですが,いよいよサービスを受ける側に回るのかと思うと,考えさせられるものがあります.実際に要介護や要支援の状態になり介護サービスを受けるのはだいぶ先だろうと思うのですが,毎朝毎夕近所を走り回っている介護サービス事業者の車を見る目が,今後は変わるのかもしれません.

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2020/01/19

日光男体山が見えた

小雪がちらついてとても寒かった昨日とは打って変わって,今日は早朝から快晴に恵まれ,風も弱くて絶好の散歩日和.最近長歩きをしていないので,今日は遠出をしてみました.

自宅近くの橋の上から日光男体山が見えるポイントがあるのですが,今日は霞はかかってはいるものの,雪が付いた日光男体山が良く見えました.手前の送電線と鉄塔が邪魔なのが玉に瑕ですが,やむを得ません.当地からは直線距離で 105 km ほどあるので,この程度の展望はまあまあというところです.今日は富士山もよく見えたのですが,富士山までは約 142 km 離れています..

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山岳展望は地表近くの大気の状態に大きく左右されます.冬型の気圧配置で北西の季節風が強いと,富士山は良く見えるのですが,日光の山々は雪雲の中に隠されて全く見えなくなります.かといって冬型が緩むと,今日のように霞がかかって透明度が落ちるので見えづらくなります.しかし,ときどき日光方面が素晴らしく良くみえることもあるので,どういう条件の時に良い展望が得られるのか,少し気を付けて調べてみたいと思っています.

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2020/01/08

寒中お見舞い申し上げます

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喪中につき新年のあいさつは控えさせていただきました.本年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます.例年通り昨年を振り返り,今年の展望について思うところを述べてみたいと思います.

昨年は引退2年目の年となりましたが,引退生活のリズムがある程度確立できたと思います.1月には失業給付の期限が切れ,各種の年金,非常勤の仕事の給料,不定期なコンサルティングの収入という収入ポートフォリオをやりくりしながら生活するようになりました.今年の後半には年金のうち確定拠出年金が期限切れとなる一方,老齢厚生年金がその穴の一部を埋めることになります.

しかし非常勤の仕事もそろそろ打ち切りとなるはずですし,コンサルティング収入はあまりに不安定で当てにはできないため,全体として収入は低位安定となっていくでしょう.現役時代に比べると大幅に少ない収入で生活していかなければならないので,支出の管理を本格的に進めなければと思っているところです.新年早々世知辛い話で申し訳ありません.


昨年のブログで何度か紹介したと思いますが,引退生活の重要な一部である「学び直し」は着実に進めています.昨年まず取り組んだのは熱力学本格的な教科書を通読し,ある程度の手ごたえを得ることができました.私は大学教養課程で学んだ熱力学がどうにも未消化で,永年悶々としていたのですが,この学び直しによって頭の中がだいぶすっきりしました.私が学んだのは現代的に再構成された公理論的な熱力学.ここ20年ほどで勃興してきた新解釈です.特筆すべきは,熱力学なのに熱を陽には扱わない点.詳しくは上記リンクのブログ記事をご覧ください.

それにしても,熱力学は物理学の中でもっと日が当てられるべき分野だと思います.複雑な森羅万象をごく少数のマクロな変数で厳密に記述することに成功した稀有な例です.相対論,量子論と同格に置くべき分野ではないかと思いますが,古臭い分野として統計力学に取って代わられていると誤解している向きも多いのではないでしょうか?

次に余勢を駆って取り組んだのは,一見無謀とも思える一般相対性理論です.これは私にとっては全く未知の分野だったのですが,初学者でも数式を一歩一歩追いながら学べるというのがウリの教科書が出版されて評判だったので,この700ページほどの本に取り組みました.テンソルやリーマン幾何学で苦しみ,最後の重力場方程式の導出にはいまだに納得がいかないものの,一般相対性理論の構成や雰囲気は十分に味わうことができました.

わかったことは,一般相対論は特殊相対論の延長線上に自然に拡張された理論であること.キーワードは等価原理と重力の4元化です.重力を遠隔力ではなく場の性質として扱うために,曲率のある時空を扱うリーマン幾何学を用いる必要があり,この微分幾何学の言語に慣れないと,読み進むことも理解することもできません.接続係数や曲率テンソルなどが次々と出てくるので,普通だとここで挫折してしまうのですが,この教科書のすごいところは,中高生の学習参考書のように懇切丁寧に数式を追えるところです.計量テンソルの中に重力などの効果が自然に埋め込まれてしまうのが美しい.

この本を読む途中で,解析力学の基礎知識が無いことに気づき,量子論への導入も兼ねて,今度は解析力学前期量子論の教科書を読み始めました.この本は理学部の教科書として使われているそうですが,独習するにはやや敷居が高く,数式の展開であちこちつまづき,ときどき Landau-Lifshitz の力学も参照しながら読み進めているところです.この分野は教養課程時代に早々に講義から脱落した分野なので,リベンジの思いを込めていますが,やはり理学部志望の頭の良い人たち向けの教科書のようで,工学部体質の私には結構つらいです.特に演習問題はハードルが高い.

とまあ,こんな具合で楽しんでいるところですが,やはり独習はつらいので,少数の仲間と輪読できないものか,Skype でも構わないので,と考えているところです.輪読の仲間を募るための SNS があってもよいように思います.誰か作ってくれないでしょうか?そういうサービスがビジネスとして成立すればなお面白いと思います.


さて,この辺りで父の介護について書かなければなりません.10年ほど前に脳梗塞を患ってから少しずつ認知症が進み,数年前に老人ホームに入居した直後は異常行動も頻発して,これはいったいどうなることかと危惧していたのですが,処方薬の効果もあってか異常行動は少なくなり,一方体力は徐々に衰えていくという状態でした.しかし昨年夏頃からは特に見当識障害がひどくなって,介護スタッフや私たちの手を焼かせるようになってきました.さらに晩秋に高熱を出して寝込み,持病の心房細動がひどくなってこのまま亡くなるのではないかと思わせたのですが,いったんは回復して食欲も戻り,デイサービスにも出かけるほどでした.

しかし12月に入って間もなく脳梗塞が再発.半身がマヒするとともに意識が戻らず,そのままの状態で1週間後に静かに息を引き取りました.この間,苦しむ様子もなく表情は穏やかなままで,老衰死に近い死にざまだったと思います.火葬と告別式を 1,000 km ほど離れた2カ所で別々に行わなければならず,骨壺の大きさと重さに閉口しながらの旅を終えて今ほっとしているところです.

ここ数年間,心身が衰えていく父と接するうち,当初はいらだちや怒りを覚えることが多かったのですが,次第にどうやったら相手のことを理解できるのか,何が不満で何に悩んであのような行動をとるのか,それを和らげるにはどうすればよいのかと思いを巡らすようになりました.そして最終的には,人間という生き物の複雑さと奥深さを悟るとともに,一人の認知症患者から多くのものを学ばせてもらったという感謝の念に気持ちが変化していきました.

次は我が身ですが,人が衰えて死を迎えるプロセスの間に,どのようなことが起こるのかをつぶさに見てきたことは大きなメリットだと思います.一種の先行体験,予行演習です.これは経験してみなければわかるものではないので,これからの人生の衰退期に生かしていきたいと思います.こういう経験をしていない人たちは,親の介護をせずに済んだと得した気分になっているかもしれませんが,それは大きな間違いです.私は大いに得をさせてもらったと父に感謝しています.


昨年は新年早々に自宅のリフォームを行った年でもありました.目的は耐震補強,窓の断熱化,外壁のサイディング化,さらに水回りの総入れ替えです.

自宅を新築したとき以来久しぶりにハウスビルダーと付き合いましたが,どうも昔に比べてサービスレベルが下がった印象があります.当初のプランに従って見積書を作り,工事をしながらその後の変更点を反映させていくのですが,変更点の現場への指示が口頭のみの場合が多く,部材の色やデザインの変更などがちゃんと伝わっているのか不安でした.施工直前になってこの色の部材は在庫切れなどと下請けから情報が上がってきたため,不本意な色で妥協せざるを得なくなるなど,元請けと現場との情報交換が旧態依然のままであることにも驚かされました.ひょっとして元請けと現場の双方が,タブレット上のアプリで進捗を確認し合うくらい進歩しているのではないか,という私の事前の期待は完全に打ち砕かれてしまいました.

極め付きは,完工して仮住まいから引っ越す当日になって,和室の畳が発注されていないことが発覚したことです.引っ越し後数日して畳屋が寸法取りにやってきて,2週間ほどしてようやく畳が入り,引っ越し荷物の仮置きが解消されました.

今後は今回のような大規模なリフォームを行うことはないと思いますが,よくよく元請けのレベルを見極めてから商談を始めなければならないと思わざるを得ませんでした.会社の規模や知名度は全く当てにならないものです.日本のサービス産業の生産性が低いことはつとに有名で,日本の「おもてなし」は素晴らしいという誤解がまかり通っていることがその証拠ですが,サービスレベルが進歩すらしてないことに暗澹たる気分にさせられました.


一昨年は尿路結石の出産を2度も(*1 *2)強いられて苦しめられたのですが,昨年は石が暴れることは一度もなく,健康面は平穏無事でした.脂質異常症の薬を飲み続けていますが,心配していた副作用などもなく,コレステロールの値は正常範囲内で落ち着いています.

しかし現役時代に比べると明らかに運動量は落ちています.通勤と仕事で社内や近隣を歩き回るだけでも毎日ゆうに 8,000 歩は歩いていたのですが,引退してからは,目標としている 6,000 歩に達するのは週に 2, 3 日ほどしかありません.特に,脈拍数を毎分 80 以上に保って連続 20 分以上歩けと医者が勧める歩き方は滅多にしなくなりました.今年は運動不足解消が一つの目標になりそうです.


趣味の写真については低調に終始しました.昨年,特に後半は天候が不順だったことと,父の介護に時間を取られることが多かったというのが言い訳ですが,単に億劫がっていたのだと思います.強いて言えば,いろいろ気にかかることがあって,気持ちに余裕がなかったということになるのでしょう.

一方,自宅近くに大きな調整池が造成され鳥たちがやって来るようになったので,被写体が豊かになってきました.私は長いレンズは持っていないのですが,機材について考え直そうかと思っているところです.また,これまでに比べると遠出をしやすくなったので,日帰り程度の遠征の頻度を上げようかとも考えています.

街歩きをしながら気に入った建物や店舗などの写真を撮ることもやりたいのですが,東京まで出かけるお金と時間を考えると,どうしても近所の散歩に傾いてしまうのが貧乏性の情けないところです.


PCのハードウェアに関しては,メインマシンのストレージを NVMeSSD に換装したくらいで,ほかに大きな変更はありません.ここ1年間はインテルの CPU の世代交代が停滞し,物量不足で価格も高止まりし,その隙をついて AMDメニーコアの CPU が勢力を伸ばしたことが大きな変化でした.しかしこれは私の買い替えサイクルからはうまく外れていたので,今年か来年,インテルの新しい世代の CPU が潤沢に出そろった時点で,メインマシンの臓物を入れ替えようと思っています.

プログラミングについては匍匐前進を続けているという状態です.辞書参照型ソーティング・フィルタである Refsort/Ruby は成熟の域に達してきており,これ以上いじらないほうがいいのではないかと思います.それを Excel から使うためのインターフェースである Refsort on Excel は改良の余地があるものの,Excel 日本語版と VBA がエンコーディングとして UTF-8 をデフォルトで使えるようになるのを待っている状態です.


今年は引退生活の3年目で内容の進化を図る年.外を出歩く機会と人との交流を増やしていきたいと思っています.皆様も健康第一でお過ごしください.どうかお元気で.

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2019/09/10

台風の高分解能風予報を

アジア名 FAXAI こと台風15号が関東地方を直撃しました.数日前から天気予報の進路予想を見ていると,当初予想よりも西寄りの進路を取る傾向に変わってきたので,これはやばいと警戒をしていました.台風は(北半球では)反時計回りの渦なので,進行方向に対して右側に強風・強雨域が発達し,逆に左側は風も雨もさほど強くなりません.この性質は台風の進む速度が大きければ大きいほど強調されていきます.従って台風の進路の左右どちらに自分が位置するかで天と地ほどの差が出るのです.台風が西側のコースを取れば,我が家が台風の右側に位置するようになるので警戒を強めたのです.

台風が我が家に最接近していた昨日の午前6時ころは,風は強いものの暴風というほどではなく,何とか外も歩ける程度だったので,ひょっとして東に逸れたか?助かったかな?と思ったのですが,後刻の天気予報の台風の経路を見ると,確かに東京湾に入ってから東に大きく向きを変えたことがわかりました.そしてその進路右側の市原市や君津市には大きな被害をもたらしました.

今回,インターネット上で台風の進路予想を何度も調べたのですが,大縮尺の地図に進路予想を書き込んだものは皆無でした.つまり 10 km,20 km の分解能での進路予想は出されていないのです.しかし前述の通りこの 10 km,20 km の差が大きな違いを生むので,たとえ接近の直前であっても,つまり予報ではなく現状を外挿した成り行きであっても,その情報には高い価値があります.

なぜそのような情報が出されないのでしょうか?考えられる一つの理由は,それほどの予測技術が無いから.台風中心の経路を進路とするのであれば,台風の中心を求めなければなりませんが,そもそも台風の中心を定義するのは簡単ではありません.

いや,本稿の趣旨からすると,台風の中心位置などどうでもよいので,高分解能の強風・強雨域分布の予測があれば,それでよいのです.強雨域に関しては “雨雲ズームレーダー” というものがよく知られており,スマートフォンでも簡単に見られるようになりました.河川情報を加えた国土交通省の XRAIN情報サイトもあります.しかし強風域についてはこのようなものは一つも無いのです.

多地点のドップラー・レーダーの情報を統合し,強風域の現状表示と短期予測をすることは可能だと思いますが,それが一般の気象予報にまで実用化されていないのです.竜巻の少ない日本にはドップラーレーダー自体が少ない(竜巻の本場アメリカには NEXRAD という観測ネットワークがあります)のですが,それでも関東平野は比較的配置数が多いところで,少なくとも成田空港,羽田空港,千葉県柏市の気象大学校(近隣に2棟ほど高層ビルがあるらしく,東側2方向に盲点があるのが明確にわかるのがご愛敬)の3拠点,さらに国土交通省の河川管理用レーダー網も整備中です.自衛隊や在日米軍のドップラー・レーダーの活用は無理として,これらの情報を統合して強風域の分布を 1 km 程度の分解能で予測できるようになればいいと思います.

観測するだけで強風被害が防げるわけではありません.しかし,台風通過時にどの程度の風速が何秒間持続しているか,ガストの分布やその強度が実際に観測できれば,例えば鉄塔や電柱,あるいは建築工事機材の設計・設置基準の向上に役立ち,ひいては被害の低減につながることは確かです.

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