ナガサキアゲハ
今日の散歩のスナップ,ナガサキアゲハです.江戸時代までは九州以南にしかいなかったようですが,その後生息域を拡大.当地,茨城県南部では今は普通に見られます.種分化が進みつつあるようなので,亜種の同定は難しそう.
今日の散歩のスナップ,ナガサキアゲハです.江戸時代までは九州以南にしかいなかったようですが,その後生息域を拡大.当地,茨城県南部では今は普通に見られます.種分化が進みつつあるようなので,亜種の同定は難しそう.
日本鳥学会による権威あるチェックリストで,日本で確認された野鳥を体系的に網羅した「日本鳥類目録」の改訂第 8 版がようやく出版されました.前回の改訂が 2012 年のことだったので,実に 12 年ぶりの改訂です.本来は 2022 年の出版をめざしていたようですが,COVID-19 にぶち当たって作業が停滞してしまったようです.また今回は事前に広くパブリックコメントを募集し,その内容を反映させることも行ったので,余計に時間がかかったのだと思います.
ところが出版されたのは何と印刷製本された紙の本だけ.一体 Excel のワークシートや XML 版のデータベースはどうしたのでしょう?世界のチェックリストはとうの昔に電子データのみの提供に移っているのに.これでは使い勝手が悪くて実用に供されないのではと心配になります.ひょっとすると,まず印刷製本されたものを売って費用を回収してから電子データを提供するつもりかもしれません.
ただし印刷版を見て驚きました.常識的な組版規則が守られていないからです.項目がページ最下行から始まっている箇所が多数.これを出版関係者が見たらかなり首をかしげるはずです.しかし関係者が費やした時間と苦労は大変なものだったものと想像されるので,苦言はここまで.
日本鳥類目録が新しくなったので,Refsort/Ruby用の辞書も新しくしなければなりません.というわけで,昨年リリースされたドラフト版の電子データを使って試作品は作ってあったのですが,今回の正式版リリース後に修正作業を始め,ようやく完成したところです.
今回のチェックリストには,25 の目,91 の科,299 の属,681 の種,439 の亜種が収録されています.これらを忠実に反映させ,さらに目録に記載されている通し番号と,目録中のページ番号もデータフィールドに加えました.またIOC List との大きな差異がある場合はコメントを追記しました.
ちょっと気になったのは命名者表記です.命名者に同姓の人物がいる場合はイニシャルを追加して区別できるようにするのが普通なのですが,イニシャルが付いている命名者は皆無でした.従って,Charadrius placidus イカルチドリの命名者は IOC List だと Gray, JE & Gray, GR, 1863 なのですが,日本鳥類目録では Gray & Gray, 1863 とだけ書かれています.JE Gray とは John Edward Gray というイギリスの動物学者.GR Gray はその弟の鳥類学者 George Robert Gray です.博物学者には兄弟や親子の例が多いので区別は必要なはず. ご多分に漏れず彼らの父親 Samuel Frederick Gray は植物学者でした.
辞書ファイルのエンコーディングは UTF-8 と Windows-31J (SJIS) で,前者が正版,後者は簡略版です.理由は後者では命名者表記に含まれるウムラウトやアクセントを最も近い文字に簡略化しているからです.またこの改訂に合わせてユーザーズガイドも改訂しました.これらのファイルは Microsoft One Drive 上に設けた専用フォルダからダウンロードできます.それには,このブログ右側のコラムの最上段の Archive の中の Japan Bird List Archive をクリックしてください.そうすると One Drive のフォルダに入ることができますので,あとは適当に選んでダウンロードしてください.
IOC World Bird List v14.2 が予定よりもだいぶ遅れてリリースされました.これは 2024 年 2 回目のリリースです.
前回 2023 年 12 月末(公称 2024 年第 1 回)のリリースから 8 か月もかかっていますので,6 か月周期でのリリースが原則のはずの IOC List にとっては非常に変則的です.編集長やスタッフの予定がうまく取れなかったのでしょうか.何しろ全員ボランティアですから.ただし正式なリリース日が判然としないのは前回と同様です.これ困るんですけど.私としては 8 月 27 日をリリースの日と見なしたいと思います.
今回収録されたのは目が 44,科が 254,属が 2,392,種が 11,276(うち絶滅種が 163),亜種が 19,756 です.
今回は属レベルの異動が大変多く,Refsort の辞書ファイルの編集には大変時間がかかりました.しかも過去の分類に戻すような修正も目立ちました.例によって日本のバーダー向けに重要と思われる変更点を書いておきます.
2024 年 9 月に日本鳥学会の日本鳥類目録改訂第 8 版のリリースが予定されていますが,今回の IOC List の変更を取り込むのは無理だと思われるので,しばらくは属名のくい違いで悩む人が出て来そうです.
IOC 本家の Master List (学名と英名を収録した Excel ファイル)を編集して,Refsort/Ruby 用の辞書ファイル(拡張子が .ref のテキストファイル)を作りましたので, Microsoft One Drive 上に設けた “IOC List Archive” にアップロードしました.エンコーディングは UTF-8 と US-ASCII の 2 種類です.正版は UTF-8 版で US-ASCII 版は簡易版ですが,詳細についてはユーザーズガイドをご覧ください.
このオリジナル版の辞書ファイルと併せて,全ての掲載種に和名を付与した辞書ファイル 2 種と, IOC Master List の和名追加版( Excel ファイル)も同時にリリースしました.これら和名追加辞書についても,UTF-8 でエンコードしてあるものが正版ですが,Windows などでの使い勝手を考慮して Windows-31J でエンコードしたものも同時にアップしてあります.詳細についてはユーザーズガイドをご覧ください.
単に種名を調べるためだけであれば,和名追加版の Master List( Excel ファイル)が最も便利です.ただし長大なワークシートなので,目的の名前をスクロールして探すのは非効率です.検索メニューからジャンプするのが良いでしょう.
これらのファイルは前述のとおり,Microsoft One Drive 上に設けた IOC List 専用のフォルダからダウンロードできます.それには,このブログ右側のコラムの最上段の Archive の中の IOC List Archive をクリックしてください.そうすると One Drive のフォルダに入ることができますので,あとは適当に選んでダウンロードしてください.
I am pleased to announce that I have posted reference files for Refsort/Ruby compiled directly from the latest IOC World Bird List v14.2. It contains 44 Orders, 254 Families, 2,392 Genera, 11,276 species including 163 extinct ones, and 19,756 subspecies, respectively. Please try it out, and enjoy its capability and speed.
Note that the reference file "ioclist_v142u.ref" is encoded in UTF-8 in order to retain all European accents and umlauts with complete fidelity as they are in the IOC Master List.
For those who want to use Refsort/Ruby in universal ASCII environments, I have posted another reference file "ioclist_v142a.ref" encoded in pure US-ASCII. Note that characters with accents and umlauts have been simplified to their nearest neighbors. So please be careful in particular when you refer to authorities of species.
I have also posted two different reference files "ioclist_v142ju.ref" and "ioclist_v142jw.ref" (encoded in UTF-8 and Windows-31J, respectively) which include Japanese names for all species. If you want to know Japanese names, please refer to those files.
In order to sort a list properly using these reference files, you need to align the encoding of the input file to that of the reference file, and you should add a magic comment specifying the encoding in the first line of these files, such as
#!E -*- coding: UTF-8 -*-
or, add an option "-E UTF-8" into your commandline.
You can skip this process if your iput file is encoded in the default encoding of your platform, e.g., US-ASCII or Windows-31J for Windows, UTF-8 for macOS or Linux.
A master list in Excel format containing a column of Japanese names has been posted as well. This would be most convenient for quick reference.
You can download appropriate files from my area of Microsoft One Drive by clicking “IOC List Archive”. Enjoy, and bon appétit.
今日は台風一過の猛暑日,なのに家人が行きたいと言うので筑波実験植物園に行ってきました.水草をテーマにした展示が行われているのです.
園内は広いのですが,展示が行われているのは研修展示館の建物の中.いくつもの大型の水槽に様々なテーマに沿って水生植物が植え込まれており,さらには水生植物と関係の深い小魚や小動物も入れられています.ミズオジギソウやミジンコウキクサなどという植物があることを初めて知りました.
アマモの展示は大変勉強になりました.魚の生物のゆりかごとして知られており,最近は減少した群落の復元事業が行われれているそうですが,アマモは地域ごとに遺伝的系統が異なるので,安易な移入はしてはいけない云々.
ゲンゴロウばかりを集めた水槽があったのですが,私が子供のころに親しんでいた最も普通のゲンゴロウであるナミゲンゴロウは入っていませんでした.理由を尋ねると当地では見られない種なのだそうです.へえ,そんなに地域差があるものなのか.一緒にプールで泳いでいたし,夜になると家の中に飛び込んできていたものでしたが.
水生植物の展示を見た後で環境別の温室も見学.すごい植物がたくさんありますが,食虫植物のウツボカズラの仲間がなかなか魅力的です.見ているうちに夜の街で客引きされているような気分になってきました.虫もそう感じて入り込んでしまうのでしょうか?
本日礼文島,利尻島の下流に発生した雲の渦列についてもう少し詳しく調べてみました.礼文,利尻の隙間を通った流れの蛇行についてです.
その後も渦列の放出は続き,日没に近い17時ころには見えにくくなってしまいました.
断定はできませんが,この渦列はいわゆるカルマン渦列の逆パターン,つまり礼文島と利尻島の隙間を通り抜けた風がジェットとなって作り出した渦列ではないかという気がします.二次元噴流の不安定性としてよく知られた現象に似ています.逆カルマン渦列という言い方もあるようです.もしも本当であれば,気象現象としてはかなり珍しいイベントではないかと思います.
IOC World Bird List v14.1 が予定よりも早くリリースされた模様です.これは 2024 年 1 回目のリリースのはずのものです.前回 2023 年 7 月のリリースから 5 か月ちょっとでのアップデートとなりました.ただし正式なリリース日は判然とせず,IOC の Web site では「v14.1 への移行はほぼ完了したのだが,休暇の季節に入ったため正式な完了は2024年3月だ」とアナウンスされています.このアナウンスがされたのが 12 月 29 日なので,私としてはこの日をリリース日と見なそうと思います.
今回収録されたのは目が 44 ,科が 253,属が 2,381 ,種が 11,194 (うち絶滅種が 162 ),亜種が 19,802 です.
前回 v13.2 と比較すると,亜種から種への昇格や新種の登録はまあまあ平均的な数量でしたが,英名の変更が比較的多く,また属の異動(属名の変更)も多かったという印象です.厄介なことに科内のシーケンスの変更が非常に多かったのが今回の特徴です.しばらくは並べ替えで混乱があるかもしれません.
例によって日本のバーダー向けに重要と思われる変更点を書いておきます.
2024年 9 月に日本鳥学会の日本鳥類目録改訂第 8 版のリリースが予定されています.すでにドラフト版が公開されており,分類体系やシーケンスは IOC List v13.2 に準拠すると表明されていますので,これでようやく世界の標準に近づくものと期待しています.このドラフト版に基づいた辞書ファイルを鋭意作成中なので,完成次第公開したいと思います.
IOC 本家の Master List(学名と英名を収録した Excel ファイル)を編集して,Refsort/Ruby 用の辞書ファイル(拡張子が .ref のテキストファイル)を作りましたので,Microsoft One Drive 上に設けた “IOC List Archive” にアップロードしました.エンコーディングは UTF-8 と US-ASCII の2種類です.正版は UTF-8 版で US-ASCII 版は簡易版ですが,詳細についてはユーザーズガイドをご覧ください.
このオリジナル版の辞書ファイルと併せて,全ての掲載種に和名を付与した辞書ファイル 2 種と,IOC Master List の和名追加版(Excel ファイル)も同時にリリースしました.これら和名追加辞書についても,UTF-8 でエンコードしてあるものが正版ですが,Windows などでの使い勝手を考慮して Windows-31J でエンコードしたものも同時にアップしてあります.詳細についてはユーザーズガイドをご覧ください.
単に種名を調べるためだけであれば,和名追加版の Master List(Excel ファイル)が最も便利です.ただし長大なワークシートなので,目的の名前をスクロールして探すのは非効率です.検索メニューからジャンプするのが良いでしょう.
これらのファイルは前述のとおり,Microsoft One Drive 上に設けた IOC List 専用のフォルダからダウンロードできます.それには,このブログ右側のコラムの最上段の Archive の中の IOC List Archive をクリックしてください.そうすると One Drive のフォルダに入ることができますので,あとは適当に選んでダウンロードしてください.
I am pleased to announce that I have posted reference files for Refsort/Ruby compiled directly from the latest IOC World Bird List v14.1. It contains 44 Orders, 253 Families, 2,381 Genera, 11,194 species including 162 extinct ones, and 19,802 subspecies, respectively. Please try it out, and enjoy its capability and speed.
Note that the reference file "ioclist_v141u.ref" is encoded in UTF-8 in order to retain all European accents and umlauts with complete fidelity as they are in the IOC Master List.
For those who want to use Refsort/Ruby in universal ASCII environments, I have posted another reference file "ioclist_v141a.ref" encoded in pure US-ASCII. Note that characters with accents and umlauts have been simplified to their nearest neighbors. So please be careful in particular when you refer to authorities of species.
I have also posted two different reference files "ioclist_v141ju.ref" and "ioclist_v141jw.ref" (encoded in UTF-8 and Windows-31J, respectively) which include Japanese names for all species. If you want to know Japanese names, please refer to those files.
In order to sort a list properly using these reference files, you need to align the encoding of the input file to that of the reference file, and you should add a magic comment specifying the encoding in the first line of these files, such as
#!E -*- coding: UTF-8 -*-
or, add an option "-E UTF-8" into your commandline.
You can skip this process if your iput file is encoded in the default encoding of your platform, e.g., US-ASCII or Windows-31J for Windows, UTF-8 for macOS or Linux.
A master list in Excel format containing a column of Japanese names has been posted as well. This would be most convenient for quick reference.
You can download appropriate files from my area of Microsoft One Drive by clicking “IOC List Archive”. Enjoy, and bon appétit.
Refsort on Excel は,Refsort/Ruby (直前の記事をご覧ください)を Microsoft Excel 上で使うためのインターフェースを提供するマクロ埋め込みワークシートです.
今日,さまざまなデータを整理分析するのに表計算ソフトウェアは欠かせないものになっていますが,そのワークシート上に書かれたリストに対して,簡便で直感的なインターフェースで Refsort/Ruby の並べ替え機能を提供します.
元来 Excel の内部では UTF-16 という Unicode の符号化が用いられており,多言語の文字を混在して同時に扱うことができます.しかしこれまでは私の知識不足,能力不足から,扱えるエンコーディングを Windows-31J (Shift_JIS) に限定して Refsort on Excel を提供してきました.
今回の改訂ではこの制約を転換し,UTF-8 という Unicode の符号化スキームに切り替えました.これにより Excel 内部の UTF-16 と整合性が取れて,世界中のさまざまな言語の文字を混在させたリストに対して辞書を参照した並べ替えが可能となりました.
例えば IOC List にはアクセント付きの文字や,ウムラウト,トレマなどを含む文字が多用されています.それらが命名者表記や生息域の地名などに出てくるのは当然ですが,標準英名に含まれている場合もあります.標準英名は並べ替えのキーとして使う場合も多いので特に注意が必要です.例えば Seicercus soror Alström's Warbler が代表的です.従来は US-ASCII や Windows-31J でエンコードされた辞書ファイルではウムラウトを直接扱えないため,ウムラウトのない小文字の o で代用していました.しかしこれはある種の近似を行っていることになり,並べ替え結果を再利用する際に支障が出てくる可能性があります.今回の改訂でそのような近似は必要なくなりました.
当然ながら,そのためには UTF-8 でエンコードされた辞書を使う必要があり,従来とは使う辞書の種類が異なることに注意する必要があります.これまで私が作成して提供している辞書は,日本鳥類目録,IOC List,日本種子植物リストの3種類ですが,いずれも UTF-8 でエンコードしたものも提供してきました.エンコーディングはこれらのファイル名の末尾に付けた接尾辞で区別できます.接尾辞が "u" のものが UTF-8 で,"w" のものが Windows-31J でエンコードされたものです.
あらためて UTF-8 でエンコードされた辞書のリストを示すと,
ファイル名 | 内容 |
---|---|
jpblist_v70p5u.ref | 日本鳥類目録改訂第7版 |
ioclist_v132u.ref | IOC List v1.32 オリジナル版 |
ioclist_v132ju.ref | IOC List v1.32 和名追加版 |
jplant056u.ref | 日本の種子植物リスト 新エングラー順 |
となります.いずれも BOM なし,改行コードが LF のテキストファイルです.
今後,Refsort on Excel v2.50U 以降を使う場合には,辞書ファイルにこれら UTF-8 でエンコードされたものを指定するようにしてください.また利用する Refsort は最新の v3.77 以降が望ましいので,こちらもご注意ください.
使用例のスクリーンショットを示します.IOC List から標準英名にウムラウトが使われているものを集めて,標準英名をキーにして並べ替えを行ってみました.辞書ファイルのキーは第 1 フィールド,入力のキーも第 1 フィールドです.正しく並べ替えられていることがわかります.
今回の改訂でようやく UTF-8 を使えるようになったので,多様な言語で書かれたリストに対して Refsort を Excel 上で使えるようになったはずです.詳しい説明は,Refsort/Ruby v3.77 と同時にリリースしたユーザーズガイドの付録をご覧ください.
辞書参照型ソーティング・フィルタ Refsort/Ruby (新しいほうから *1 *2 *3 *4 *5)の改訂版 v3.77 をリリースしました.今回の改訂内容は軽微なバグ修正と仕様の改善です.ただし同時に Refsort on Excel も改訂し,こちらは仕様を大きく変更しました.詳しくは次の記事をご覧ください.
今回の修正内容は以下の通りです.
このスクリプトは最新の Ruby 3.22 で動作することを確認しています.
Refsort/Ruby とそれに関連するコンテンツのアーカイブを Microsoft One Drive に置いています.画面右側コラムの Archive の中の Refsort/Ruby Archive をクリックしていただくと,私の OneDrive 上に設けたライブラリが開きますので,そこから過去分も含めてファイルをダウンロードすることができます. Refsort 本体の refsort.rb は refsort_v377.rb というファイル名でアップロードされていますので,ダウンロード後に refsort.rb に変更するとよいでしょう.改行コードも CR/LF になっていますので,適宜変更してお使いください.エンコーディングは純粋な US-ASCII ですので,そのままでよいでしょう.
暑かった 8 月は今日で終わり,あすからは暑い 9 月が始まります.もういい加減最高気温が 30 度を切ってほしいと思うのですが,今日も容赦なく 35 度を越えるようです.ただし明け方の気温はこのところ低くなりつつあり,25 度を切るようになってきましたので,もう少しの頑張りと信じたいです.
さて突然ですが大型の翼竜は飛べたのでしょうか?大型翼竜とは,プテラノドンやケツァルコアトルスという,とてつもなく大きな翼を持った爬虫類たちのことです.
下の論文から引用した,ワタリアホウドリ (A),プテラノドン (B),ケツァルコアトルス (C) の平面形の比較図を示します.右下には縮尺をそろえた比較図 (D) がありますが,現生鳥類最大のワタリアホウドリと比べていかに巨大な動物たちだったかがわかります.
Witton MP, Habib MB (2010) On the Size and Flight Diversity of Giant Pterosaurs, the Use of Birds as Pterosaur Analogues and Comments on Pterosaur Flightlessness. PLoS ONE 5(11): e13982. doi:10.1371/journal.pone.0013982
プテラノドンの翼開長は 7-9 m もあるのですが,体重は 20 kg 程度しかなく,羽ばたき飛行するだけの筋肉はなかったので滑翔するだけだったという説が有力のようです.海上であればアホウドリやミズナギドリのようにダイナミックソアリングによって長時間効率よく滑翔できたのではないか?という説もあります.
一方ケツァルコアトルスに至っては,論争はあるものの翼開長は 11-12 m はあったと言われています.体重についても論争があり,飛べるためには 70 kg が上限だという説と,いやいや現生鳥類からの類推は正しくなくて, 200 kg 程度はあったはずで,少なくとも滑翔は可能,羽ばたき飛行もできたのではないかという説もあります.
非常に面白いですね.で,このケツァルコアトルスを検索すると,大きな頭を持った巨大な翼竜が首をぴんと伸ばして飛んでいる想像図にたくさん出くわすのですが,これはダウト!
平面形からわかる通り首は非常に長く,その先端に大きな頭骨と嘴(くちばし)が付いています.ということは,この翼竜の重心は翼に働く空気力の中心(風圧中心)よりもだいぶ前に位置することになってしまい,これでは飛行の縦の安定性が取れません.前につんのめってしまいます.
何を言いたいかというと,縦の安定性を取るためには,ケツァルコアトルスは首を縮めて,サギ類のようにして飛んでいたはずなのです.さらにそのような姿勢でダイナミックソアリングができたかはかなり疑問.海面上の接地境界層はせいぜい 30 m 程度だと思うので,この巨体で境界層の外縁から水面すれすれまでの 30 m を頻繁に垂直方向に移動するのは難しかったのではないか?あるいは境界層外縁を超えて上空 100 m くらいまで上昇してから下降していたかも,しかしそれではダイナミックソアリングの効率はかなり低かったのではないか?
などと思っているところです.平面形が載っている論文を読み始めたところなので,何か追加・修正があればポストしたいと思います.
現在,福島第一原子力発電所(通称 1F)では冷却水を多核種除去設備 (ALPS) で処理し,それでも除去しきれないトリチウム(三重水素)を含む水を放出し始めたところです.
トリチウムは宇宙線と大気の相互作用で自然発生するほかに原子力発電所でも生成され,それは希釈したうえで海水に放出されています.これは欧米も中国も韓国も同じ.このトリチウムの量を記述するときに使われるのがベクレル (becquerel) という単位.私は不勉強でよく知らなかったため,この機会に改めて調べてみました.
トリチウムは,陽子 1 個と中性子 2 個が結合した原子核と,電子 1 個から成る原子のこと.普通の水素に比べると中性子 2 個分の質量が加わるため 3 倍の質量を持ちます.外殻電子は 1 個で水素と同じなので化学的性質は水素とほとんど同じ.つまり 3 倍重い水素と思えばよいでしょう.
ところがこの原子は不安定で,半減期 12.32 年で自然崩壊します.つまり 1 kg のトリチウムがあったとすると, 12.32 年後までに 0.5 kg はベータ崩壊して,ヘリウム 3 と電子と反電子ニュートリノになります.このときの電子のエネルギーは 5.7 keV と低いので,人間の皮膚を通過できないほどです.
さて,ベクレルです.ベクレルとは放射能の強さを表す単位ですが,原子核が崩壊して放射線を出すので,それが 1 秒間に何回起きるのかで定義されています.単位はベクレル (Bq) とされていますが,定義により 1/s を言い換えているにすぎません.
毎秒崩壊する原子核の数 = 定数×崩壊していない原子核の数
という法則があり,かつこの定数は
ln(2) / 半減期
と計算できるので,放射能の強さは
( ln(2) / 半減期 ) * 崩壊していない原子核の数
と求まります.
例えば,1 mol (6.02 x 10^23 個) のトリチウムの放射能は,
ln(2) / (12.32 * 365 * 24 * 60 * 60) * (6.02 x 10^23) = 1.07 x 10^15 = 1.07 PBq
ということになります.ペタ (P) などという SI 接頭語が出てくるのがベクレルの特徴です.
Wikipedia のトリチウム水の記事によれば,1F のタンク群に貯められているトリチウムの総量は 8.60 x 10^14 Bq らしいので,これから逆算してトリチウムのモル数を求めると 0.804 mol ということになります.これはトリチウム水という分子量が 20 の水として存在するので,その総質量は約 16 g です.
ようやく数量的な感覚がつかめてきました.この 16 g のトリチウム水を何十年かかけて海に放出するわけです.ごく薄い濃度のトリチウム水をさらに希釈して放出するので,全然大したことはないと考えがちですが,過去に事故で何人か亡くなっているような放射性物質であることに変わりはなく,欧米や日本ではトリチウム水の水質基準が定められています.1F では WHO の飲料水基準 10^4 Bq/L の約 1/7 に希釈して放出することになっているそうです.ちなみに一般的な原子力発電所からは,1.0 から 2.0 x 10^12 Bq / 年程度のトリチウム水を海洋に放出しているそうです.
風評被害が発生しないことを祈りますが,私は福島産の魚をこれからも食べていこうと思っています.
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