工学・エンジニアリング

2022/09/18

ACアダプターを撲滅せよ

私の机の周りにはいくつもの AC アダプターがあります.無線 LAN ルーターの電源,NAS の電源,LED ライトの電源,などなど.これらの AC アダプターは相互に互換性がないのが普通で,電気製品が増えるたびに AC アダプターも増える,そして電源タップの周りは AC アダプターだらけになって,黒い四角い箱がごろごろ.

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こうなることを避けるために,私は出来るだけ電源内蔵の機器を買うようにしているのですが,なかなか希望通りにはいきません.例えば,現在使用中のネットワーク・ハブは,あれこれ探し回ってようやく電源内蔵・金属筐体のものが見つかったので良かったのですが,無線 LAN ルーターは業務用でもない限りそのようなものは全くありません.

どうして AC アダプターが世にはびこるのか,想像を巡らせてみました.

  1. 製品メーカーに電源を設計できるエンジニアがいない.電源回路は製品を底辺で支える大変重要な部分のはずだが,広告に書ける性能とは無関係のために重視されず,優秀なエンジニアを雇わない,エンジニアが育たない.
  2. 電源を内蔵すると国ごとに異なる電圧や規格に対応して認証を得るのが大変面倒.
  3. 自社で不慣れな設計をして製品事故(特に経年劣化)を起こすくらいだったら,電源専業の台湾デルタ電子から認証付きの AC アダプターの供給を受けたほうがよほど安上がりだし品質も安心.
  4. 電源内蔵でなくてもユーザーは気にしない・・・だろう.

しかし,私は大変気にするのですよ.床や机上に埃まみれになった AC アダプターがごろごろ転がっているのは許せません.そもそもまともな電源を作れないメーカーの製品はいまいち信用できない.技術の底力を疑いたくなるのです.特にチョークコイル電解コンデンサの選択や使いこなしは製品の信頼性に大きく関係します.パソコンに内蔵させる10万円もするグラフィックスカードですら,その電源回路のチョークコイルが振動して騒音(いわゆるチョーク鳴き)を発生させる不良設計がまかり通っているので全く呆れます.

しかし AC アダプターは無くなりませんねぇ.ますますはびこっています.私にできることは電源を内蔵した製品を探して買い求めることですが,年々選択肢が狭まっているのを感じて悲しくなります.

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2022/08/05

やませが吹いた

最高気温 37 度の日が連続して日常生活がうまく回らなかったのですが,前線が南下してオホーツク海高気圧由来の冷涼な空気やませがどっと入ってきて,最高気温が 26 度くらいと,一気に 10 度も下がりました.前線が通過するときには雷雨に見舞われ,短時間停電するというアクシデントにも見舞われました.

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Igor LukinによるPixabayからの画像

経験上,ひと夏の間にだいだい 2, 3 回はこのような現象が起こると思いますが,今夏はこれが初めて.もう少し頻繁に起きてくれると夏バテせずに済むのにと思います.ま,この涼しさも今日までで,週明けからは再び酷暑に見舞われるようです.

短時間でも停電すると,様々な機器の設定がリセットされてしまうので,再設定するために家中をバタバタと歩き回らなければなりません.特に時計を持った機器は時刻の再設定が必要なので,これが一番面倒.

面白いのはこれらの時計の正確さです.機器内部にクロックを持たず,電源周波数を分周している機器の時計は非常に正確で狂いません.日本では電源周波数は非常に几帳面に制御されていて, 24 時間を通すと 1 秒も狂わないからです.東京電力では, 50 +/- 0.2 Hz 以内,時差 +/- 15 秒以内を目標としているそうですが,一時的に偏差が出てもその後それを打ち消すように周波数が制御されるので,長時間を通してみると非常に正確です.我が家では電子レンジと石油ファンヒーターがこの範疇.やや古めの低機能の電気製品に多いです.

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

一方,内部に自前のクロックを持つ機器はそのクロックの精度しだい,中には盛大に狂うものもあります.我が家ではファックス付き電話機,ガス給湯器,エアコン,電気釜などがそれに当たります.これらは半年も経つと分単位で狂ってくるので,定期的な時刻合わせが欠かせません.高機能な製品のほうがかえって不便なのです.

インターネットにつながっているテレビ,オーディオ機器などは自動的にネットワーク経由で時刻合わせを行うので狂うことはありません.今後はこのような機器が増えてくるのでしょう.そうそう,クルマも常時モバイルネットワークにつながっているので,時計が狂わないばかりか,スマートフォンから車の状態を調べたり,ドアのロックが出来たりします.

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2022/07/31

ご新造さんがやって来た

猛暑でエアコンの効いた部屋に引き籠っています.こういう時はネットサーフィンをしていることが多いのですが,面白い記事を見つけました.

エアバス社の新しい機種 A350 XWB シリーズの一つ A350-900 を日本航空が導入したのですが,パイロットから見たときの操縦性を B737 と比較して書いてあるものです.パイロットはこの機体を日本までフェリー(納入時に飛ばせて運ぶ)した方なので,十分に信頼できます.

私はこの飛行機が日本にデモフライトに来ているときに羽田空港で見かけて,写真に撮り,このブログで紹介してます.もう 8 年も前のことでした.それから商談がまとまって何年もかかって機体が製造され,パイロットの訓練も行われ,2019 年から運用が始まったようです.日本航空では新造機と言ってアピールしていますが,ご新造さん(ええとこのお嫁さん)と洒落てもいいと思います.

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乗り物ニュースから転載

ボーイングの操縦システムは出来るだけ機体の生の特性をパイロットが感じ取れるようになっていて,機体のクセを知ったうえで人馬一体となって操縦しなさいという設計哲学に基づいているようです.操舵は昔ながらの回転ハンドル式の操縦桿です.

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Wikipedia 記事から転載

これに対してエアバスの設計思想は,機体の裸の特性の上にソフトウェアの薄い衣服を一枚を被せて,人間が知覚しやすく操作しやすいように作られているように思います.操舵は戦闘機のようなサイドスティックで行うのも大きな違いです.

このパイロットの方によれば,スラストレバーの違いも大きいと言います.パソコンでフライトシミュレーターを楽しむ人たちは,これらの違いにも敏感なので,エアバス用のサイドスティックとスラストレバーが Amazon.co.jp などで売られています.ボーイングスタイルのヨークはこちら

どちらが良いかは私にはまったくわかりませんが,最新型の自動車でも,ハンドルこそ昔のままですが,変速機の操作は全く異なるものになっていたり,車線をはみ出そうすると急にハンドルが重くなってはみ出せないようになっていたりと,旅客機の操縦と似たところがあるのかなと思います.

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2022/07/06

T + B > D

昨日の記事の終盤に言葉足らずの点があったので,ちょっと補足です.再生可能エネルギーを大量に導入した場合の調整力と,それを反映した CO2 排出原単位とコストについて.

再生可能エネルギーを主力電源にすることを考えます.再生可能エネルギーには多種あるのですが,日本の現状から太陽光,風力,水力だけを含めることにします.これらの出力を R [GW] とします.この R は時々刻々激しく変動する時間の関数で,理論上の最大値は設備容量の公称値ですが,実際の最大値はそれよりかなり小さな値となります.最小値は渇水期の夜間の無風時に発生する可能性があり,その値はゼロ (*注 1) です.

次に原子力発電の出力を A [GW] とします.日本では原発の出力調整は禁忌なので,定検時期を除けば A はほぼ一定です.ここでは定検時期ではない場合を想定し,A は定数とします.

さらに様々な種類の火力発電が持っている発電能力(要請があればすぐに供給できる電力)を T [GW],蓄電池の出力能力(同様)を B [GW] とします.これらはポテンシャルの値なので定数です.

CO2 排出量を最小にする電源構成を目ざして,電力を原子力と再生可能エネルギーだけで賄うことにします.需要電力を D [GW] とし,送電ロスを無視する(送電端電力 = 受電端電力)と,

R + A > D    (1)

が常に成り立たなければなりません.R と D は時間の関数,A は定数です.不等号が付いているのは余裕が必要だからです.これだけ見ると,原子力と再生可能エネルギーさえあれば全需要を賄えるように見えます.しかし R は非常に激しく変動するので,この不等式を常に成り立たせるには追加の条件が必要となります.

(a) A >> R として R がたとえゼロになっても不等式が成り立つようにする.
(b) R を非常に大きな値にして最小値でも不等式が成り立つようにする.
(c) R の変動を吸収するために,R の低下分を他の電源で賄う.

まず (a) は全需要を原子力だけで賄えと言っているので現実的ではありません.また (b) では再生可能エネルギーの設備容量をどんなに大きくしても,気象条件によって R ゼロになる可能性は否定できません (*注 1) し,そもそも設備容量が膨大になって経済的に成立しません.

そこで (c) が必要になるのですが,これを実現するためには R の寄与分を火力発電と蓄電池でカバーしなければなりません.つまり変動する R の様々な値に対して,定数である T と B は,

T + B > R    (2)

という不等式を満たさなければなりません.これを調整力と言います.調整力とは,実際に発電して電力を供給するかどうかとは無関係に,必要であればいつでも供給できる能力 (*注 2) のことを指します.

さて,これら (1) と (2) の不等式を辺々足し算して A を移項すると,

T + B > D - A    (3)

という不等式が得られます.これはつまり,電力需要からベース電源である原子力を差し引いた分を,火力と蓄電池はカバーできなければならない,ということになります.特に東電管内では A = 0 の状態が続いているので,T + B > D でなければなりません.

あれ?せっかく再生可能エネルギーをたくさん導入したのに,結局火力発電と蓄電池も全需要をカバーできる分だけ持っていなければならないってこと?

その通りなのです.注意すべきは,火力発電と蓄電池はあくまで調整力なので,常に電力を供給しているとは限りません.気象条件が良ければ再生可能エネルギーと原子力だけで全需要を賄えるので,火力発電や蓄電池はなにも仕事をせずにただ遊んでいるだけです.その間は CO2 排出量は非常に低く抑えられます.

いざ気象条件が悪くなって再生可能エネルギーの出力が不足してきたときには,待機していた火力発電や蓄電池がそれっとばかりに電力を供給してブラックアウトを防ぐことになり,CO2 排出量はその分だけ増えることになります.

ここからが本題です.CO2 排出量を減らすために再生可能エネルギーを導入しても,それと同じだけの調整力を持つために火力発電と蓄電池へも投資しなければなりません.そして特に火力発電は実際に調整用電力を供給すればその分 CO2 を排出します.この排出量を再生可能エネルギーの CO2 排出原単位に含めると,その分再生可能エネルギーの原単位は増えます.また火力発電プラントや蓄電池を建設・廃棄するときにも CO2 が発生するので,これも加わります.それでも火力発電を主力電源にして化石燃料を大量に燃やすよりは CO2 排出量はずっと少なくなるので,CO2 削減のためには上記のシナリオが一つの端的なオプション (*注 3) になります.

ただし CO2 排出量は減るのですが,設備投資は二重に必要になります.つまり電気料金には稼働率の低い火力発電プラントや蓄電池の減価償却費と保守管理費用も加算されるということになります.これを許容できるかどうかが判断の一つの分かれ目になります.

(注 1) ここでは R の最小値をゼロとしましたが,貯水地域の降雨が安定していたり,風力の容量が十分に大きくかつ広域での連系ができるのであれば,R の最小値はゼロよりも大きな値に出来るので,式 (2) は T + B > R - Rmin という風に修正され,調整力の必要容量は Rmin の分だけ緩和されます.つまり Rmin をいかに大きくかつ保証できるかが一つの鍵となります.北海やバルト海は風況が良く,ノルウェーは水力資源が豊富なので,欧州はこれでだいぶ得をしています.

(注 2) この調整力は市場で売買されるのが普通で,日本でも制度設計が進められています.例えば今日の午後 1 時から 2 時までの間に要請があってから 10 分以内に 1 GW の電力を供給できればいくら(容量市場), 1 秒以内に 0.1 GW の電力の供給と吸収を行うことができればいくら(周波数市場)という具合に対価が設定されます.そして実際には要請が来なかったために供給しなかったときでも対価は支払われ,要請が来たのに供給できなければペナルティが課せられます.

(注 3) このような極端なシナリオは現実的ではないので,火力からの寄与を常時含めることにして,式 (1) を R + A + T > D と修正すべきです.火力のうち調整力のために温存しておく発電能力を Ta とすると,式 (2) は Ta + B > R と修正されます.そして式 (3) は Ta + B > D - A - T という当たり前の式に修正されます.式 (3) は R の値に依らないので,結局 A,B,T,Ta を D に対してどのような比率で配分するかという問題になります.

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2022/07/05

HEV v.s. BEV

酷暑の日はエアコンを効かせた部屋に引き籠っていることが多く,いきおい色々な Web サイトを渉猟して歩く機会が増えます.そこでちょっと面白いと思ったのが BEV の電費と HEV の燃費の比較です.

実は私は半年少々前に車を買い替えて最新の HEV に乗っているのですが,燃費がすこぶる良いのです.ちょっと遠出をすると 30 km/L 以上出ます.今ごろ夏の暑い時期にエアコンをかけて近所に買い物に出かけることだけを繰り返しても 28 km/L は楽に行きます.これはひょっとして BEV に勝てるのではないか?

ではどういう共通の指標で比較すればよいのでしょうか?燃費の単位は km/L,電費の単位は km/kWh なので直接の比較はできません.しかも BEV が充電するときの電源には,原子力,火力,水力,地熱,太陽光,風力などがあり,それらの比率は時々刻々変化するので,大もとの投入エネルギーをうまく定義できません.

ここでは,現在の首都圏には原発由来の電力はほとんどないこと,風力はごくわずかであること,さらに日中は太陽光発電の寄与があるものの,BEV が主に充電する夜間には太陽光発電はゼロであることから,BEV の電源は 100% 火力発電由来であると仮定します.

まず LEAF ですが,日産 LEAF の電費をユーザーの声から拾ってみると,だいたい 7.5 km/kWh というのが平均のようです.そして受電端発電効率をかなりひいき目に見て 35% とします.これは LNG コンバインド発電超々臨界圧石炭火力も含んでの話です.すると元々の熱量に対する走行距離は,

(7.5 km/kWh) x 0.35 = 2.63 km/kWh = (2.63 km) / (3600 kJ) = 0.731 km/MJ

という値になります.つまり発電所で 1 MJ の発熱量を持つ燃料を燃やして得た電力で,0.731 km 走ることができるということです.

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Wolfgang EckertによるPixabayからの画像

ではこれを私の車,新型 AQUA の燃費 28.5 km/L と比べてみましょう.ガソリン 1 L あたりの発熱量は石油連盟の資料によれば 33.36 MJ/L らしいので,その効率は

(28.5 km/L) / (33.36 MJ/L) = 0.854 km/MJ

という値になります.

これからわかることは,燃料の発熱量あたりの走行距離はほぼ同等.へぇ?こんなに一致するなんて不思議ですが,むしろ HEV のほうが良いくらいです.非常に大雑把な計算ですが,最新の HEV は結構いい線をいっていて,価格を考えると現状最良の現実解だということはわかると思います.

さていくつか考慮すべき点があります.まずは車格(特に重量)が同じか?という点です.これは LEAF と AQUA の形状や重量などを詳しく見なければなりませんが,大雑把に言ってこれら2車種は見た目ほぼ同格と言っていいでしょう.

次に,LCA で比較しなくてよいのかという議論もあります.一般的には HEV と比較して BEV のほうが製造や廃棄に係るエネルギーは多い(主として大量の電池やインバーターなどのパワーエレクトロニクス部品の製造と廃棄による)ので,利用時の効率が同程度であれば,LCA で見たときにはむしろ HEV のほうがエネルギー効率に優れている,ということになります.

なお,CO2 排出量に関して LCA ベースでまじめに議論をしようとすると,HEV の場合も BEV の場合も CO2 排出原単位の緻密な調査と計算をしなければなりません.いろいろな研究機関がいろいろな試算を行っていますが,私の知る限り BEV が HEV に比べて圧倒的に優れているという報告は見たことがなく,ほぼ同等という結論が多いように思います.最近注目したのは大型電動トラックに関するこの記事

もちろん再生可能エネルギーだけで BEV の充電ができれば,指標の定義の難しさはありますが,BEV が非常に有利になることは予想できます.ただしその場合でも,再生可能エネルギーの変動を吸収するために必要な揚水,待機火力や蓄電池への投資を再生可能エネルギーの CO2 排出原単位に含めると,社会全体としての優位さは削がれてしまうことは覚えておく必要があります.

このような計算ができるにも関わらず BEV が脚光を浴びているのは,HEV の技術開発でトヨタに負け,クリーン・ディーゼルのスキャンダルで深手を負った欧州の完成車メーカーと,彼らに食わせてもらっている EU の高級官僚や政治家たちの,産業競争力上の危機感と余裕の無さの現れだと思います.ロシアから天然ガスが入って来なくなるドイツで,どこまで原子力や石炭火力に頼らず BEV を推していけるのか,一つの社会実験として注視していく必要があります.

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2022/03/22

ブラックアウトやってみれば?

先週 3 月 16 日の福島県沖を震源とする強い地震で,首都圏に電力を供給している複数の火力発電所が被災・停止しました.これだけでも需給は非常にひっ迫していたことに加えて急な低温と降雪で暖房需要が急増し,かつ太陽光発電の出力が低下しました.資源エネルギー庁と東京電力は中部電力と関西電力からの融通をあてにしていますが,もともと電力会社間を跨ぐ広域連携線の容量は小さく,かつ途中で周波数変換に伴うボトルネックがあるため,その容量を超えて融通することはできません.

これらは元々わかっていたことですし,東日本大震災後に活発に議論が行われて増強計画は進みつつあるのですが,実行速度が伴っていませんでした.ということで,このままいくと首都圏で初のブラックアウト(大規模停電)が起きる可能性があります.いったんブラックアウトすると,北海道で経験したように,復旧には 48 時間以上が必要なので社会機能が大幅に損なわれます.

Pexelspokrie157827Photo by Pok Rie with Pexels

実際にはブラックアウトする前に,大需要地から少しずつ停電させていって,ブラックアウトを回避する措置が取られるはずで,これが先週の地震の直後に首都圏の一部地域で自動的に発動・実施されたものです.自動的ではなく事前に計画して細かい粒度で行うのは輪番停電.東日本大震災の時にやりました.またあるかも.

まあしかし不謹慎との謗りを覚悟のうえで言うと,一度ブラックアウトを経験しておくことは,エネルギーに関するリテラシーを身に着けたり,今後の節電やエネルギー政策を議論するための良い下地になると思うので,やってみたらいいのでは?と思います.もちろんほとんど全員がもうこりごりという気分になるはずですが,電源のポートフォリオ,発送電分離の体制,また設備設置の地域コストなどを,事業者だけではなく消費者も加わって真剣に議論する良い機会になると思います.

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2021/08/21

ドローンで農薬散布

昨夜になって強い南風がようやくおさまり,夜半には北東からの微風に変わったのですが,朝には南からの微風に変化.太平洋高気圧が少し後退しているようです.

風が弱くなって好適な条件が得られたのか,出穂した稲への農薬散布が我が家の目の前で始まりました.ここ数年は農業用ドローンが使われる場面が増えてきたことは,先月この記事に書いた通りです.

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今日飛んでいたのは,DJI 社の Agras MG-1S Advanced とおぼしき機体で,農薬散布用にアレンジされたマルチコプター.ウリは,機体からボコッと飛び出している円筒形の地形検知レーダーと障害物回避レーダーで,電線などに接触するリスクが低減されています.

ローター数は 8 個ですが,30 m 程離れたところから聞く限りは大した騒音ではありません.昔の有人ヘリコプターに比べればはるかに平和です.課題があるとすればペイロードと連続滞空時間.この機体の農薬ペイロードは 10 kg らしいのですが,今日見ていると 1 ha 弱程度の田んぼに散布するのに,2 回程度中断して農薬を補充またはバッテリーを交換していたようです.しかし一枚が小さな日本の圃場にはこのくらいがちょうどよいのかもしれません.

欧米の巨大な圃場では農業用ロボットの開発が盛んで,肥料や水分を作物の根元にピンポイントで射出するようなロボット,自動走行の除草ロボットなどが開発されています.日本の家族経営の零細な農業がこれからも持続していくためには,身の丈に合った安価な自動化・効率化が求められていると感じます.技能実習生という名の出稼ぎ労働者は,日本の低賃金に愛想をつかしていずれ来てくれなくなるので.

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2021/05/08

トンボの羽根の断面形

散歩の途中で見かけたシオヤトンボ.シオカラトンボに似ていますが,胴が短く寸詰まり.春先にシオカラトンボよりも早く出てくるようです.

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羽根の断面をよく見ると,羽根は非常に薄く,鳥の羽根や飛行機の翼のような厚みを持ちません.しかも前縁部分がジグザグ形状になっていることがわかります.ジグザグ形状は一つには羽根のスパン方向の強度を上げるのに役立っているのだろうと考えつきます.しかし空気力学の常識からは,翼の断面形に厚みがなく,前縁部分にこんなジグザグがあるのはまずいのでは?と思うはずです.だって前縁で流れが剥離して十分な揚力が得られないでしょ?

ところが,トンボの飛行条件から得られるレイノルズ数 10^3 から 10^4 のオーダーでは,非常に薄くジグザグ形状の翼のほうが,むしろ空力特性が優れているということがわかったのです.私たちが日常的に経験する流れのレイノルズ数 10^5 から 10^6 程度の世界とは異なる流れの世界があることを明らかにしたのは,当時東京大学先端科学技術センターの河内啓二先生が率いた研究プロジェクトです.報告集は例えばこれ

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2021/03/27

風切羽がめくれ上がるのは?

昨日の散歩で,岸に釣り人が点在する川べりを歩いていたときのこと.このあたりに定着しているコブハクチョウのうちの 8 羽の群れがいたのですが,その中の 1 羽がもう 1 羽をしつこく追い回していました.

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カモ程度の普通のサイズの鳥であれば,どうということはないのでしょうが,何しろ大きなコブハクチョウがそのようなことをすると,大きな羽音,水面を駆けるときの水しぶきの音,そして彼らの大きな鳴き声で,あたりは大騒ぎになります.釣りをしていた人たちは,これでは釣りにならないと困ったことでしょう.

コブハクチョウが水面から飛び立つ過程をよく見てみると,足が水面から離れても水面すれすれの状態が結構長く続き,地面効果を最大限利用して飛んでいることがわかります.しかも翼を打ち下ろしているときには,風切羽の先端はめくれ上がっています.非常に面白い光景です.

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ちょっと荒っぽい計算をしてみましょう.コブハクチョウの翼開長は 220 cm 程度らしいので胴体の幅 30 cm を除いた片側スパンは約 0.95 m.片側アスペクト比を見た目から荒っぽく 4 として,両翼面積は (0.95 ^ 2 / 4) * 2 = 0.45 m^2 程度だろうと当たりをつけます.Hmmmm,けっこう大面積ですね.

これが体重 10 kg を支えて平衡状態にあると,翼面荷重は 10 * 9.81 /0.45 = 218 N/m^2 となります.したがって翼の上下面の圧力差は,N/m^2 を単に Pa と言い換えて 218 Pa です.感覚的にわかりやすいように換算すると,218 Pa とは 218 / 9.81 / 10,000 * 1,000 = 2.22 gf/cm^2 の力となります.

これだけの圧力差で風切羽がめくれ上がるか?ということですが,風切羽の先端部分の面積を 10 cm^2 程度と見積もると,その部分にかかる力は 22.2 gf です.これは十円硬貨 5 枚分の重さに等しい力です.どうでしょうね?めくれ上がるでしょうか?私はいい線行っているのではないかと思いますが,不足しているかもしれません.

不足する場合には,翼面荷重は翼面上均等にかかるわけではなく,特に羽ばたきの打ち下ろし相では,打ち下ろし速度の最も大きい翼端部に強くかかるという(もっともらしい)仮説をでっち上げてみましょう.翼面荷重が均等にかかる場合に比べて 2--3 倍の力が翼端にかかるとすれば,十分ではないかと思いますし,この 2--3 倍という仮説もさほど無理はないと思います.風切羽の先端に重りをのせて実験してみたい気がします.

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2020/12/09

VTOL 型のドローン

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DJI-AgrasによるPixabayからの画像

ドローンというと,いまやマルチローター型ヘリコプターのことを連想させますが,本来の意味はもっと広く,例えば米軍が南アジアで運用中の無人偵察機 RQ-4 グローバルホークや無人攻撃機 MQ-9 リーパーもドローンの一種です.ちなみに最近ではテロ組織が安価な中国製民生用ドローンを使ってピンポイント爆撃を行う事例が増えているそうです.

ところで航空工学の立場から見ると,回転翼機であるマルチローター型のドローンは(ローターの翼面積があまりに小さいため)エネルギー効率が悪く,そのため滞空時間 duration も航続距離 range も非常に短いのが欠点です.

一方,空気力学的に効率の良い固定翼機は,離着陸に滑走路が必要,かつ空中静止や微速移動はできないので,狭い面積をゆっくりと見て回るとか,地形に追従して低空飛行を行うようなミッションには向きません.

これら二つの良いところを併せ持つ航空機は昔から開発されていて,それが垂直離着陸航空機 VTOL です.軍用機では古くはイギリスのターボジェット攻撃機ハリアー,最近ではアメリカのターボシャフト輸送機 V-22 オスプレイが有名です.VTOL の無人機版,すなわちティルトローターのドローンも当然開発されているはずですが,メディアで紹介されているのを見たことがありません.

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WikiImagesによるPixabayからの画像

一つには,推力方向を可変にするための機構が高コストで重量がかさむため,ある程度大型のドローンでなければ意味のある設計を構成できないことがあげられます.ペイロードが 0.5 トン前後はないと(ちなみに V-22 オスプレイの機内最大ペイロードは約 9 トン),ミッションに実用性を持たせることは難しいでしょう.さらにそのような大型の機体でならではのミッションが,軍用以外には開発されていないということもあるでしょう.

考えられる民生用ミッションとして,一つは遠隔地の災害現場への物資輸送があります.小型ドローンで偵察を行い,有人ヘリコプターで人命救助を行うとともに,VTOL 型ドローンで物資輸送を行うというような棲み分けが可能になります.有人ヘリは機材も運用も高コストなので,無人機でできるものはできるだけ無人機でやろうという考え方です.VTOL 型であればある程度の荒天でも運用可能でしょうから,小型マルチローター機とは次元の異なるミッションをこなせるはずです.

海難救助のための偵察機としては理想的なものになるでしょう.同時に複数の機体を飛ばして,広大な海域で面的な探索が可能になります.可視光画像だけではなく,赤外線画像や海面捜索用のレーダーも積んで運用することになります.

農業分野では種子や農薬の散布などがあります.欧米のような巨大な圃場では農家が自家用のドローンを持つことも考えられますし,日本でも農業法人や組合単位で保有することが不可能ではない程度の価格に仕上げる必要があります.

エンジンはコストとメンテナンスを考えるとレシプロエンジンになると思いますが,ローター周りとティルト機構のメンテナンスは悩みの種になるでしょう.ここをいかにメンテナンスフリーにできるかで,実現可能性の高低が決まるような気がします.

いっそのことリチウムイオン電池を積んだ電動式にすることも考えられますが,電池と充電設備のコストを考えると,時期尚早だろうと思います.

考え始めたばかりで,まだまだ漏れや抜けがたくさんあるのですが,こういう構想を温めていくのは大変楽しいものです.

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