工学・エンジニアリング

2021/08/21

ドローンで農薬散布

昨夜になって強い南風がようやくおさまり,夜半には北東からの微風に変わったのですが,朝には南からの微風に変化.太平洋高気圧が少し後退しているようです.

風が弱くなって好適な条件が得られたのか,出穂した稲への農薬散布が我が家の目の前で始まりました.ここ数年は農業用ドローンが使われる場面が増えてきたことは,先月この記事に書いた通りです.

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今日飛んでいたのは,DJI 社の Agras MG-1S Advanced とおぼしき機体で,農薬散布用にアレンジされたマルチコプター.ウリは,機体からボコッと飛び出している円筒形の地形検知レーダーと障害物回避レーダーで,電線などに接触するリスクが低減されています.

ローター数は 8 個ですが,30 m 程離れたところから聞く限りは大した騒音ではありません.昔の有人ヘリコプターに比べればはるかに平和です.課題があるとすればペイロードと連続滞空時間.この機体の農薬ペイロードは 10 kg らしいのですが,今日見ていると 1 ha 弱程度の田んぼに散布するのに,2 回程度中断して農薬を補充またはバッテリーを交換していたようです.しかし一枚が小さな日本の圃場にはこのくらいがちょうどよいのかもしれません.

欧米の巨大な圃場では農業用ロボットの開発が盛んで,肥料や水分を作物の根元にピンポイントで射出するようなロボット,自動走行の除草ロボットなどが開発されています.日本の家族経営の零細な農業がこれからも持続していくためには,身の丈に合った安価な自動化・効率化が求められていると感じます.技能実習生という名の出稼ぎ労働者は,日本の低賃金に愛想をつかしていずれ来てくれなくなるので.

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2021/05/08

トンボの羽根の断面形

散歩の途中で見かけたシオヤトンボ.シオカラトンボに似ていますが,胴が短く寸詰まり.春先にシオカラトンボよりも早く出てくるようです.

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羽根の断面をよく見ると,羽根は非常に薄く,鳥の羽根や飛行機の翼のような厚みを持ちません.しかも前縁部分がジグザグ形状になっていることがわかります.ジグザグ形状は一つには羽根のスパン方向の強度を上げるのに役立っているのだろうと考えつきます.しかし空気力学の常識からは,翼の断面形に厚みがなく,前縁部分にこんなジグザグがあるのはまずいのでは?と思うはずです.だって前縁で流れが剥離して十分な揚力が得られないでしょ?

ところが,トンボの飛行条件から得られるレイノルズ数 10^3 から 10^4 のオーダーでは,非常に薄くジグザグ形状の翼のほうが,むしろ空力特性が優れているということがわかったのです.私たちが日常的に経験する流れのレイノルズ数 10^5 から 10^6 程度の世界とは異なる流れの世界があることを明らかにしたのは,当時東京大学先端科学技術センターの河内啓二先生が率いた研究プロジェクトです.報告集は例えばこれ

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2021/03/27

風切羽がめくれ上がるのは?

昨日の散歩で,岸に釣り人が点在する川べりを歩いていたときのこと.このあたりに定着しているコブハクチョウのうちの 8 羽の群れがいたのですが,その中の 1 羽がもう 1 羽をしつこく追い回していました.

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カモ程度の普通のサイズの鳥であれば,どうということはないのでしょうが,何しろ大きなコブハクチョウがそのようなことをすると,大きな羽音,水面を駆けるときの水しぶきの音,そして彼らの大きな鳴き声で,あたりは大騒ぎになります.釣りをしていた人たちは,これでは釣りにならないと困ったことでしょう.

コブハクチョウが水面から飛び立つ過程をよく見てみると,足が水面から離れても水面すれすれの状態が結構長く続き,地面効果を最大限利用して飛んでいることがわかります.しかも翼を打ち下ろしているときには,風切羽の先端はめくれ上がっています.非常に面白い光景です.

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ちょっと荒っぽい計算をしてみましょう.コブハクチョウの翼開長は 220 cm 程度らしいので胴体の幅 30 cm を除いた片側スパンは約 0.95 m.片側アスペクト比を見た目から荒っぽく 4 として,両翼面積は (0.95 ^ 2 / 4) * 2 = 0.45 m^2 程度だろうと当たりをつけます.Hmmmm,けっこう大面積ですね.

これが体重 10 kg を支えて平衡状態にあると,翼面荷重は 10 * 9.81 /0.45 = 218 N/m^2 となります.したがって翼の上下面の圧力差は,N/m^2 を単に Pa と言い換えて 218 Pa です.感覚的にわかりやすいように換算すると,218 Pa とは 218 / 9.81 / 10,000 * 1,000 = 2.22 gf/cm^2 の力となります.

これだけの圧力差で風切羽がめくれ上がるか?ということですが,風切羽の先端部分の面積を 10 cm^2 程度と見積もると,その部分にかかる力は 22.2 gf です.これは十円硬貨 5 枚分の重さに等しい力です.どうでしょうね?めくれ上がるでしょうか?私はいい線行っているのではないかと思いますが,不足しているかもしれません.

不足する場合には,翼面荷重は翼面上均等にかかるわけではなく,特に羽ばたきの打ち下ろし相では,打ち下ろし速度の最も大きい翼端部に強くかかるという(もっともらしい)仮説をでっち上げてみましょう.翼面荷重が均等にかかる場合に比べて 2--3 倍の力が翼端にかかるとすれば,十分ではないかと思いますし,この 2--3 倍という仮説もさほど無理はないと思います.風切羽の先端に重りをのせて実験してみたい気がします.

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2020/12/09

VTOL 型のドローン

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DJI-AgrasによるPixabayからの画像

ドローンというと,いまやマルチローター型ヘリコプターのことを連想させますが,本来の意味はもっと広く,例えば米軍が南アジアで運用中の無人偵察機 RQ-4 グローバルホークや無人攻撃機 MQ-9 リーパーもドローンの一種です.ちなみに最近ではテロ組織が安価な中国製民生用ドローンを使ってピンポイント爆撃を行う事例が増えているそうです.

ところで航空工学の立場から見ると,回転翼機であるマルチローター型のドローンは(ローターの翼面積があまりに小さいため)エネルギー効率が悪く,そのため滞空時間 duration も航続距離 range も非常に短いのが欠点です.

一方,空気力学的に効率の良い固定翼機は,離着陸に滑走路が必要,かつ空中静止や微速移動はできないので,狭い面積をゆっくりと見て回るとか,地形に追従して低空飛行を行うようなミッションには向きません.

これら二つの良いところを併せ持つ航空機は昔から開発されていて,それが垂直離着陸航空機 VTOL です.軍用機では古くはイギリスのターボジェット攻撃機ハリアー,最近ではアメリカのターボシャフト輸送機 V-22 オスプレイが有名です.VTOL の無人機版,すなわちティルトローターのドローンも当然開発されているはずですが,メディアで紹介されているのを見たことがありません.

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WikiImagesによるPixabayからの画像

一つには,推力方向を可変にするための機構が高コストで重量がかさむため,ある程度大型のドローンでなければ意味のある設計を構成できないことがあげられます.ペイロードが 0.5 トン前後はないと(ちなみに V-22 オスプレイの機内最大ペイロードは約 9 トン),ミッションに実用性を持たせることは難しいでしょう.さらにそのような大型の機体でならではのミッションが,軍用以外には開発されていないということもあるでしょう.

考えられる民生用ミッションとして,一つは遠隔地の災害現場への物資輸送があります.小型ドローンで偵察を行い,有人ヘリコプターで人命救助を行うとともに,VTOL 型ドローンで物資輸送を行うというような棲み分けが可能になります.有人ヘリは機材も運用も高コストなので,無人機でできるものはできるだけ無人機でやろうという考え方です.VTOL 型であればある程度の荒天でも運用可能でしょうから,小型マルチローター機とは次元の異なるミッションをこなせるはずです.

海難救助のための偵察機としては理想的なものになるでしょう.同時に複数の機体を飛ばして,広大な海域で面的な探索が可能になります.可視光画像だけではなく,赤外線画像や海面捜索用のレーダーも積んで運用することになります.

農業分野では種子や農薬の散布などがあります.欧米のような巨大な圃場では農家が自家用のドローンを持つことも考えられますし,日本でも農業法人や組合単位で保有することが不可能ではない程度の価格に仕上げる必要があります.

エンジンはコストとメンテナンスを考えるとレシプロエンジンになると思いますが,ローター周りとティルト機構のメンテナンスは悩みの種になるでしょう.ここをいかにメンテナンスフリーにできるかで,実現可能性の高低が決まるような気がします.

いっそのことリチウムイオン電池を積んだ電動式にすることも考えられますが,電池と充電設備のコストを考えると,時期尚早だろうと思います.

考え始めたばかりで,まだまだ漏れや抜けがたくさんあるのですが,こういう構想を温めていくのは大変楽しいものです.

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2020/09/07

PCR 検査狂想曲

ここ半年ばかり,新型コロナウィルスこと SARS-CoV-2 に関する報道があふれていて,中でも感染の有無を判定するための PCR 検査に注目が集まっています.これまでメディアも一般の人も PCR というものがどういうものか,全く知る機会が無かったことに加えて,この種の検査につきものの統計的過誤に対する理解が(いまだに)低いため,狂想曲のようになっています.

PCR をはじめとする遺伝子増幅法には,今から15年ほど前に仕事で関わったことがあるのですが,その話は置いておいて,今回は PCR 検査結果の解釈について議論したいと思います.キーワードは母集団とその事前確率です.

PCR(ここでは RT-PCR のこと)検査の品質は,プライマーの選択や塩基長,試薬メーカー,温度サイクルのパラメーター,バイオクリーンルームの運用,検体の採取法や取扱いの巧拙などで変わるのですが,ここでは感度 70 %,特異度 99.9 % とします.

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Belova59によるPixabayからの画像

まず,パンデミックの初期段階で全国民を無作為抽出して 10 万人の被験者を選び,PCR 検査をしたとします.このとき感染率はまだ低いでしょうから,全国民の 0.1 % が感染していると仮定しましょう.つまり母集団は全国民,事前確率は 0.1 % です.

次にパンデミックが進行した段階で,発熱などの症状がある人だけを対象に再び 10 万人を対象にして PCR 検査を行ったとします.このときの事前確率はそれなりに高いはずなので,例えば 10 % としてみます.すると検査結果は以下のようになります.

事前確率 0.1% 10%
被験者数 100,000 100,000
感染者数 100 10,000
真陽性者数 70 7,000
偽陽性者数 100 90
陽性者合計 170 7,090
適合率 41.2 % 98.7 %
真陰性者数 99,800 89,910
偽陰性者数 30 3,000
陰性者合計 99,830 92,910
偽陰性率 0.03 % 3.23 %

まず注目していただきたいのは適合率です.これは陽性と判定された人のうち,本当に感染者である人の割合です.1 番目の検査でこれが 41.2% しかないということは,「あなたは陽性です」と言われたとしても,本当に感染している確率は 4 割しかないことになります.従ってこのような段階で陽性者をすべて隔離したり入院させたりすべきかどうか,そのために医療資源がひっ迫するのであれば非常に判断が難しいでしょう.現実には陽性者に再検査,再々検査を受けてもらうことになると思います.ところが 2 番目の検査では適合率は 98.7 % ですから「あなたは陽性です」と言われたらまずほとんど確実に感染していると言えるので,直ちに必要な医療措置を取る必要があります.

次に注目していただきたいのは最後の項目の偽陰性率です.これは陰性と判定された人の中に紛れ込んでいる感染者の割合です.1 番目の検査では 0.03 % に過ぎないので,「あなたは陰性です」と言われたらほぼ確実に感染していないと言えますから,陰性者は無罪放免,場合によっては「陰性証明(非感染証明ではない!)」なるものを出してもよいでしょう.しかし 2 番目の検査では偽陰性率は 3.23 % もあるので,100 人の陰性者の中には実は 3 人は感染者がいることになります.これではとても陰性証明など出せないでしょう.

このように,全く同一の検査を行っても,母集団の事前確率によって結果の解釈を大きく変えなければなりません.問題は,感染症の場合,事前確率は事前にはわからない点です.これは事後に推定するしかありませんので,パンデミックの進行途中では手探りで複数の事前確率を想定しながら慎重な解釈を行うしかありません.ここに専門家の間でも大きな意見の差異が生まれる原因があります.

特に母集団の選び方は重要です.日本は PCR 検査資源に乏しいため,できるだけ事前確率が高い母集団(有症状者や夜の街関係者)を選んで検査を行う傾向にあります.すると適合率は高くなるので医療措置を取るかどうかの判断はしやすくなります.しかし同時に偽陰性率も高くなるので,陰性者には複数回の再検査を行って検査資源を消費することにもなっています.

一方,巷には無症状者にも幅広く検査を行う意見も強いのですが,これは事前確率が低い母集団で検査しろと言っているわけなので,適合率が低くなり,陽性者への再検査の必要性が高まり,ただでさえ乏しい検査資源がさらにひっ迫します.このあたりの一般への説明は大変難しいので省略しがちですが,私はワイドショーなどの時間が取れる番組では丁寧に説明すべきと思います.もちろん検査資源が膨大にあれば話は別です.しかし RNA の検出が簡単ではないことはあまり知られていないのではないでしょうか?

武漢では SARS-CoV-2 に対する PCR 検査の特異度は 99.997 %,オーストラリアでは 99.97 % あったという報告もあります.試しに武漢の数値を入れてみると,事前確率が 0.1 % であっても適合率は 95.9 % という高い値になるので,陽性判定は非常に楽になります.しかし偽陰性率はほとんど変わらず 3.23 % のままです.偽陰性率を下げるには感度を大幅に,例えば 95 % 以上に上げるしかないのですが,これは現在の遺伝子増幅法ではなかなか難しいようです.

当座の私の結論は,今からでも遅くないので PCR 検査資源を拡充すること,特に民間の臨床検査センターの質と量を向上させること.さらにこれまで行ってきたすべての検査データを一元管理できる体制を整え,事後の検証を厳密に行うことです.検査と医療の間をつなぐには再検査を増やして統計的過誤を減らすしかありませんので,検査資源の拡充と統計値の随時更新が最も本質的です.

一般社団法人「日本疫学会」のこのページに Q and A が掲載されていますので,参考にしてください.

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2014/12/01

住宅地の太陽光発電所

私の住む団地の中に,何と二か所も太陽光発電所が建設されてしまいました.それもこれも,FIT という政策のお落とし子なのですが,そのうち一か所はかなり広い家庭菜園だったものを地主が用途変更したもの.もう一か所は斜面の雑木林だったものを,これも地主が用途変更したものです.

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前者は,1,400坪ほどの平坦な土地を細かく区切って近隣の住民が家庭菜園として長年利用してきたものだったのですが,地主が FIT で高収益を得ようと考えたのでしょうか?ある日を境に家庭菜園は無くなり,地面には砕石が敷き詰められ,Canadian Solar (実は中国)製の PV パネルが整然と並べられ,間もなくすると PCS も設置されて系統連系用の電力計柱上変圧器とつながれるのだろうと思います.

後者はもともとは手入れが行き届かない荒れた雑木林だったものですが,こちらも FIT が動機となったのでしょう,斜面はパネルで埋め尽くされ,すでに発電が開始されています.

このような変化をどう考えればよいのか悩むところですが,少なくとも景観は台無しです.殺風景この上ありません.また PV パネルは光をよく反射するので,場所によってはパネルで反射された日光がまぶしく感じることがあるかもしれません.

これまで家庭菜園や雑木林だった場所の植生を文字通り根こそぎ剥ぎとって建設されているので,その分,温度や湿度の緩和効果が失われていることは確実ですし,土壌の劣化も確実に進むことでしょう.まあ,中にはやぶ蚊やその他の害虫が住めなくなって良かったと思う向きがあるかもしれませんが.

ソーラー発電所なので,もちろん昼間は電気を生み出し,その分,火力発電所で燃やす化石燃料とそれから発生する CO2 は減るのですから,環境上のメリットは確かにあります.しかし,それによって失われたものとの差引勘定はどうなるかというと,これは一概には言えないでしょう.

特に,雑木林や農地を用途変更して太陽光発電所に転換する場合には,環境上の目に見えない恩恵,いまだ把握・理解されていないがあり得る恩恵をよく考慮に入れる必要があります.このあたりは環境会計が取り組まなければならない課題であり,すでにある程度研究は進んでいるのかもしれませんが,土地の私有制と用途制限との関係が十分に解決されていない現状では,実効性は望めません.

より本質的には,環境倫理学が問うように,その時々の経済合理性によって所有者が意思決定行う共時的意思決定に対して,長期的・社会的な合理性に基づく通時的意思決定が優先されなければならないのですが,これについては問題意識すら稀薄であるし,意思決定技術としても非常に困難であるため,見通しは明るくありません.

まあ,そんな小難しい理屈をこねなくとも,緑地だったところに殺風景なパネルが並んでしまったので,近隣の住民にとって気持ちの良いことではないことは確かだと思います.

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2014/11/24

A350 XWBを目撃しました

11月20日(木),羽田空港に行ったおり,搭乗ゲートからふと外を見ると,何やら見慣れない機体が駐機しています.おぅ!あれは前日日本に飛来したエアバスの最新型 A350-900 XWB ではありませんか.ガラス越しではありますが,撮った写真が以下のものです.胴体にでかでかと XWB (eXtra Wide Body) と書かれているのが目立ちます.

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デモフライトのために世界中を飛び回っているらしいのですが,ちょうどこの時,デモフライトのための離陸準備中でした.しばらくするとタクシーされて滑走路のほうへ消えていきました.

B787 対抗機種ということですが,私の見るところ目玉は低騒音のエンジン.全日空向けの B787 のエンジンは Rolls Royce の新型 Trent 1000 なのですが,これに対して A350-900 XWB に搭載されているのは Trent XWB-84 という機種のはず.試乗後のインタビューで元パイロットで現在は評論家の某氏が “こんな静かなエンジンは初めて„ と語っていたのがとても印象的でした.

B777-300ER や B787 に乗ってみるとわかるのですが,キャビンはさほど静かではありません.また軽量のボディのせいか,エンジンや各種機構が発する振動や騒音がキャビンによく伝わってきます.特に B787 ではこの傾向が強く,フラップの出し入れ時のモータ駆動の振動と音は大変耳障りです.このように航空機の NVH (Noise Vibration Harshness) の課題は山積しており,乗用車に比べると工学的な認識もまだまだこれからという感じがします.従来は空港周辺の騒音をいかに減らすかが航空機エンジン開発の一つの課題だったのですが,これからはキャビンの NVH についても開発が進むことを期待したいと思います.

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2014/09/06

A380に乗りました

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今週の後半は海外出張だったのですが,帰国便は巨大旅客機 A380 でした.私はこの飛行機に乗るのは初めて.搭乗時にいやでも気が付くのは,"Suite" と書かれたキャビンがあること.これはビジネスクラスのさらに上のクラス.通常は "ファーストクラス" と呼ばれていたものから,さらにゆとりのある空間を乗客ごとに確保しているらしい,と推測できます.残念ながら1階建ての前方部にあるらしく,それを覗き見ることはできませんでした.またビジネスクラスは2階部分にあるため,これも見ることはできませんでした.

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この飛行機には最近では一般的になった "Premium Economy" や "Economy Comfort" というクラスは設定されていません.従って,私は従来からの "Economy",いわゆる "難民船区画" で数時間を過ごすことになりました.座席レイアウトは 3-4-3 の10席なので,これは B747B777 と同じです.座席は普通のエコノミーとほぼ同じですが,Video On Demand は最新のものが装備されています.ただしこのフライトでは PA の頻度が高く,その度にビデオが中断されて楽しみが阻害されました.

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窓側の私の座席からは主翼がよく見えたのですが,胴体に近い部分の主翼は非常に長い翼弦 (Chord) を持っていました.こんなに長いコードを持つ飛行機は初めて見ました.B747 の翼胴結合部も長いコードを持っているのですが,おそらくそれよりも長いと思います.このため,主翼上の座席からは下側は全く何も見ることはできません.また翼幅(スパン)が非常に長く,さらに翼端部でもある程度のコード長を持っています.また翼桁の剛性が高いのか,あるいはスパン方向の揚力分布を調整してあるのか,巡航時に翼端がピンと反り返るようなことはありませんでした.

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ほぼ満席に近い状態だったためか,それとも元々こういうものなのか,離陸には案の定長い滑走距離が必要です.離陸直後の上昇速度もゆったりとしており,よっこらしょ,という感じの離陸でした.これが B767 などの中型機とは大きく異なる点でしょう.B767 だと離陸したとたんにぐーーんと一気に高度 500m くらいまで駆け上るので快感なのですが.

巡航時は安定そのものです.しばしば乱気流を経験しましたが,大質量の機体だけあって受ける加速度は小さなものです.これは良いですね.

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着陸時は離陸時と同様です.対地速度 300km/h 以下でタッチダウンするのですが,それからがなかなか減速できない.巨大なスポイラーを立ててもかなり長い距離を高速で滑走します.スラストリバーサーも使っているはずですが,これはやはりつらいですね.B747 と同じくらい滑走距離が必要なようです.

鳴り物入りで導入された機種なのですが,私のようにエコノミークラスの乗客からすると,メリットは巡航時の安定性くらいしか感じられず,乗降時に長い時間がかかるなどのデメリットのほうが目立ちます.民間旅客機の機体企画としてはちょっとやりすぎの感が否めません.今のところ,私が最も乗りやすいと感じている機種は B777-300ER です.現在最も売れている機種であるというのもうなづけます.

使用した写真はすべて Airbus 社のギャラリーからダウンロードしたものをそのまま使用しています.

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2013/03/24

駐機場にいたB787

昨日のお昼頃,九州の某空港から東京まで飛んだのですが,空港のゲートからふと外を見ると,何と全日空B787 が駐機しているではありませんか.エンジンの空気取り入れ口にはカバーがかけられており,メインエンジンを動かすことはしばらく無さそうな雰囲気.運航停止が指示された時点でたままたこの空港にいて,そのまま足止めを食らっているのだと思います.このようにして地方空港や海外の空港に駐機を余儀なくされている B787 はどのくらいの数にのぼるのでしょうか?整備場がある空港は数少ないので,このように大した整備を行うことが出来ずに留め置かれている機体はかなり多いのではないかと思います.

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Wikipedia 日本語版に拠れば,全日空が所有する B787 17 機のうち,羽田に留置されているもの 10 機,成田が 2 機,岡山,熊本,高松,松山,フランクフルトが各 1 機だそうです.日本航空が所有する 7 機のうちでは,成田が 5 機,羽田とボストンが各 1 機ということになっています.

よく観察すると,機体の所々の可動部には薄緑色の粘着テープのようなもので封がされているように見えます.不用意に触らないようにということでしょうか?それでも,地上車によってタクシーしている時には主翼の航空灯と頂部の衝突防止灯は点灯しており,これは地上の GPU から電源をもらっているのでしょうか?あるいはひょっとして APU を動かしているのか?ただし APU からの排気の様なものを確認することはできませんでした.

いずれにせよ,運航許可が出るにはまだかなりの時間がかかるはずなので,整備場の無い空港で必要最低限のメンテナンスを行っていなければなりません.整備部門にとってはかなりの負担になっているものと思われます.もちろん,運航収入が無いことが最も手痛いのは言うまでもありませんが.

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