工学・エンジニアリング

2014/12/01

住宅地の太陽光発電所

私の住む団地の中に,何と二か所も太陽光発電所が建設されてしまいました.それもこれも,FIT という政策のお落とし子なのですが,そのうち一か所はかなり広い家庭菜園だったものを地主が用途変更したもの.もう一か所は斜面の雑木林だったものを,これも地主が用途変更したものです.

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前者は,1,400坪ほどの平坦な土地を細かく区切って近隣の住民が家庭菜園として長年利用してきたものだったのですが,地主が FIT で高収益を得ようと考えたのでしょうか?ある日を境に家庭菜園は無くなり,地面には砕石が敷き詰められ,Canadian Solar (実は中国)製の PV パネルが整然と並べられ,間もなくすると PCS も設置されて系統連系用の電力計柱上変圧器とつながれるのだろうと思います.

後者はもともとは手入れが行き届かない荒れた雑木林だったものですが,こちらも FIT が動機となったのでしょう,斜面はパネルで埋め尽くされ,すでに発電が開始されています.

このような変化をどう考えればよいのか悩むところですが,少なくとも景観は台無しです.殺風景この上ありません.また PV パネルは光をよく反射するので,場所によってはパネルで反射された日光がまぶしく感じることがあるかもしれません.

これまで家庭菜園や雑木林だった場所の植生を文字通り根こそぎ剥ぎとって建設されているので,その分,温度や湿度の緩和効果が失われていることは確実ですし,土壌の劣化も確実に進むことでしょう.まあ,中にはやぶ蚊やその他の害虫が住めなくなって良かったと思う向きがあるかもしれませんが.

ソーラー発電所なので,もちろん昼間は電気を生み出し,その分,火力発電所で燃やす化石燃料とそれから発生する CO2 は減るのですから,環境上のメリットは確かにあります.しかし,それによって失われたものとの差引勘定はどうなるかというと,これは一概には言えないでしょう.

特に,雑木林や農地を用途変更して太陽光発電所に転換する場合には,環境上の目に見えない恩恵,いまだ把握・理解されていないがあり得る恩恵をよく考慮に入れる必要があります.このあたりは環境会計が取り組まなければならない課題であり,すでにある程度研究は進んでいるのかもしれませんが,土地の私有制と用途制限との関係が十分に解決されていない現状では,実効性は望めません.

より本質的には,環境倫理学が問うように,その時々の経済合理性によって所有者が意思決定行う共時的意思決定に対して,長期的・社会的な合理性に基づく通時的意思決定が優先されなければならないのですが,これについては問題意識すら稀薄であるし,意思決定技術としても非常に困難であるため,見通しは明るくありません.

まあ,そんな小難しい理屈をこねなくとも,緑地だったところに殺風景なパネルが並んでしまったので,近隣の住民にとって気持ちの良いことではないことは確かだと思います.

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2014/11/24

A350 XWBを目撃しました

11月20日(木),羽田空港に行ったおり,搭乗ゲートからふと外を見ると,何やら見慣れない機体が駐機しています.おぅ!あれは前日日本に飛来したエアバスの最新型 A350-900 XWB ではありませんか.ガラス越しではありますが,撮った写真が以下のものです.胴体にでかでかと XWB (eXtra Wide Body) と書かれているのが目立ちます.

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デモフライトのために世界中を飛び回っているらしいのですが,ちょうどこの時,デモフライトのための離陸準備中でした.しばらくするとタクシーされて滑走路のほうへ消えていきました.

B787 対抗機種ということですが,私の見るところ目玉は低騒音のエンジン.全日空向けの B787 のエンジンは Rolls Royce の新型 Trent 1000 なのですが,これに対して A350-900 XWB に搭載されているのは Trent XWB-84 という機種のはず.試乗後のインタビューで元パイロットで現在は評論家の某氏が “こんな静かなエンジンは初めて„ と語っていたのがとても印象的でした.

B777-300ER や B787 に乗ってみるとわかるのですが,キャビンはさほど静かではありません.また軽量のボディのせいか,エンジンや各種機構が発する振動や騒音がキャビンによく伝わってきます.特に B787 ではこの傾向が強く,フラップの出し入れ時のモータ駆動の振動と音は大変耳障りです.このように航空機の NVH (Noise Vibration Harshness) の課題は山積しており,乗用車に比べると工学的な認識もまだまだこれからという感じがします.従来は空港周辺の騒音をいかに減らすかが航空機エンジン開発の一つの課題だったのですが,これからはキャビンの NVH についても開発が進むことを期待したいと思います.

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2014/09/06

A380に乗りました

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今週の後半は海外出張だったのですが,帰国便は巨大旅客機 A380 でした.私はこの飛行機に乗るのは初めて.搭乗時にいやでも気が付くのは,"Suite" と書かれたキャビンがあること.これはビジネスクラスのさらに上のクラス.通常は "ファーストクラス" と呼ばれていたものから,さらにゆとりのある空間を乗客ごとに確保しているらしい,と推測できます.残念ながら1階建ての前方部にあるらしく,それを覗き見ることはできませんでした.またビジネスクラスは2階部分にあるため,これも見ることはできませんでした.

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この飛行機には最近では一般的になった "Premium Economy" や "Economy Comfort" というクラスは設定されていません.従って,私は従来からの "Economy",いわゆる "難民船区画" で数時間を過ごすことになりました.座席レイアウトは 3-4-3 の10席なので,これは B747B777 と同じです.座席は普通のエコノミーとほぼ同じですが,Video On Demand は最新のものが装備されています.ただしこのフライトでは PA の頻度が高く,その度にビデオが中断されて楽しみが阻害されました.

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窓側の私の座席からは主翼がよく見えたのですが,胴体に近い部分の主翼は非常に長い翼弦 (Chord) を持っていました.こんなに長いコードを持つ飛行機は初めて見ました.B747 の翼胴結合部も長いコードを持っているのですが,おそらくそれよりも長いと思います.このため,主翼上の座席からは下側は全く何も見ることはできません.また翼幅(スパン)が非常に長く,さらに翼端部でもある程度のコード長を持っています.また翼桁の剛性が高いのか,あるいはスパン方向の揚力分布を調整してあるのか,巡航時に翼端がピンと反り返るようなことはありませんでした.

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ほぼ満席に近い状態だったためか,それとも元々こういうものなのか,離陸には案の定長い滑走距離が必要です.離陸直後の上昇速度もゆったりとしており,よっこらしょ,という感じの離陸でした.これが B767 などの中型機とは大きく異なる点でしょう.B767 だと離陸したとたんにぐーーんと一気に高度 500m くらいまで駆け上るので快感なのですが.

巡航時は安定そのものです.しばしば乱気流を経験しましたが,大質量の機体だけあって受ける加速度は小さなものです.これは良いですね.

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着陸時は離陸時と同様です.対地速度 300km/h 以下でタッチダウンするのですが,それからがなかなか減速できない.巨大なスポイラーを立ててもかなり長い距離を高速で滑走します.スラストリバーサーも使っているはずですが,これはやはりつらいですね.B747 と同じくらい滑走距離が必要なようです.

鳴り物入りで導入された機種なのですが,私のようにエコノミークラスの乗客からすると,メリットは巡航時の安定性くらいしか感じられず,乗降時に長い時間がかかるなどのデメリットのほうが目立ちます.民間旅客機の機体企画としてはちょっとやりすぎの感が否めません.今のところ,私が最も乗りやすいと感じている機種は B777-300ER です.現在最も売れている機種であるというのもうなづけます.

使用した写真はすべて Airbus 社のギャラリーからダウンロードしたものをそのまま使用しています.

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2013/03/24

駐機場にいたB787

昨日のお昼頃,九州の某空港から東京まで飛んだのですが,空港のゲートからふと外を見ると,何と全日空B787 が駐機しているではありませんか.エンジンの空気取り入れ口にはカバーがかけられており,メインエンジンを動かすことはしばらく無さそうな雰囲気.運航停止が指示された時点でたままたこの空港にいて,そのまま足止めを食らっているのだと思います.このようにして地方空港や海外の空港に駐機を余儀なくされている B787 はどのくらいの数にのぼるのでしょうか?整備場がある空港は数少ないので,このように大した整備を行うことが出来ずに留め置かれている機体はかなり多いのではないかと思います.

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Wikipedia 日本語版に拠れば,全日空が所有する B787 17 機のうち,羽田に留置されているもの 10 機,成田が 2 機,岡山,熊本,高松,松山,フランクフルトが各 1 機だそうです.日本航空が所有する 7 機のうちでは,成田が 5 機,羽田とボストンが各 1 機ということになっています.

よく観察すると,機体の所々の可動部には薄緑色の粘着テープのようなもので封がされているように見えます.不用意に触らないようにということでしょうか?それでも,地上車によってタクシーしている時には主翼の航空灯と頂部の衝突防止灯は点灯しており,これは地上の GPU から電源をもらっているのでしょうか?あるいはひょっとして APU を動かしているのか?ただし APU からの排気の様なものを確認することはできませんでした.

いずれにせよ,運航許可が出るにはまだかなりの時間がかかるはずなので,整備場の無い空港で必要最低限のメンテナンスを行っていなければなりません.整備部門にとってはかなりの負担になっているものと思われます.もちろん,運航収入が無いことが最も手痛いのは言うまでもありませんが.

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