大型翼竜は飛べたのか?
暑かった 8 月は今日で終わり,あすからは暑い 9 月が始まります.もういい加減最高気温が 30 度を切ってほしいと思うのですが,今日も容赦なく 35 度を越えるようです.ただし明け方の気温はこのところ低くなりつつあり,25 度を切るようになってきましたので,もう少しの頑張りと信じたいです.
さて突然ですが大型の翼竜は飛べたのでしょうか?大型翼竜とは,プテラノドンやケツァルコアトルスという,とてつもなく大きな翼を持った爬虫類たちのことです.
下の論文から引用した,ワタリアホウドリ (A),プテラノドン (B),ケツァルコアトルス (C) の平面形の比較図を示します.右下には縮尺をそろえた比較図 (D) がありますが,現生鳥類最大のワタリアホウドリと比べていかに巨大な動物たちだったかがわかります.
Witton MP, Habib MB (2010) On the Size and Flight Diversity of Giant Pterosaurs, the Use of Birds as Pterosaur Analogues and Comments on Pterosaur Flightlessness. PLoS ONE 5(11): e13982. doi:10.1371/journal.pone.0013982
プテラノドンの翼開長は 7-9 m もあるのですが,体重は 20 kg 程度しかなく,羽ばたき飛行するだけの筋肉はなかったので滑翔するだけだったという説が有力のようです.海上であればアホウドリやミズナギドリのようにダイナミックソアリングによって長時間効率よく滑翔できたのではないか?という説もあります.
一方ケツァルコアトルスに至っては,論争はあるものの翼開長は 11-12 m はあったと言われています.体重についても論争があり,飛べるためには 70 kg が上限だという説と,いやいや現生鳥類からの類推は正しくなくて, 200 kg 程度はあったはずで,少なくとも滑翔は可能,羽ばたき飛行もできたのではないかという説もあります.
非常に面白いですね.で,このケツァルコアトルスを検索すると,大きな頭を持った巨大な翼竜が首をぴんと伸ばして飛んでいる想像図にたくさん出くわすのですが,これはダウト!
平面形からわかる通り首は非常に長く,その先端に大きな頭骨と嘴(くちばし)が付いています.ということは,この翼竜の重心は翼に働く空気力の中心(風圧中心)よりもだいぶ前に位置することになってしまい,これでは飛行の縦の安定性が取れません.前につんのめってしまいます.
何を言いたいかというと,縦の安定性を取るためには,ケツァルコアトルスは首を縮めて,サギ類のようにして飛んでいたはずなのです.さらにそのような姿勢でダイナミックソアリングができたかはかなり疑問.海面上の接地境界層はせいぜい 30 m 程度だと思うので,この巨体で境界層の外縁から水面すれすれまでの 30 m を頻繁に垂直方向に移動するのは難しかったのではないか?あるいは境界層外縁を超えて上空 100 m くらいまで上昇してから下降していたかも,しかしそれではダイナミックソアリングの効率はかなり低かったのではないか?
などと思っているところです.平面形が載っている論文を読み始めたところなので,何か追加・修正があればポストしたいと思います.
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