工学・エンジニアリング

2023/08/31

大型翼竜は飛べたのか?

暑かった 8 月は今日で終わり,あすからは暑い 9 月が始まります.もういい加減最高気温が 30 度を切ってほしいと思うのですが,今日も容赦なく 35 度を越えるようです.ただし明け方の気温はこのところ低くなりつつあり,25 度を切るようになってきましたので,もう少しの頑張りと信じたいです.

さて突然ですが大型の翼竜は飛べたのでしょうか?大型翼竜とは,プテラノドンケツァルコアトルスという,とてつもなく大きな翼を持った爬虫類たちのことです.

下の論文から引用した,ワタリアホウドリ (A),プテラノドン (B),ケツァルコアトルス (C) の平面形の比較図を示します.右下には縮尺をそろえた比較図 (D) がありますが,現生鳥類最大のワタリアホウドリと比べていかに巨大な動物たちだったかがわかります.

Witton MP, Habib MB (2010) On the Size and Flight Diversity of Giant Pterosaurs, the Use of Birds as Pterosaur Analogues and Comments on Pterosaur Flightlessness. PLoS ONE 5(11): e13982. doi:10.1371/journal.pone.0013982

Planforms_of_soaring_animals

プテラノドンの翼開長は 7-9 m もあるのですが,体重は 20 kg 程度しかなく,羽ばたき飛行するだけの筋肉はなかったので滑翔するだけだったという説が有力のようです.海上であればアホウドリミズナギドリのようにダイナミックソアリングによって長時間効率よく滑翔できたのではないか?という説もあります.

一方ケツァルコアトルスに至っては,論争はあるものの翼開長は 11-12 m はあったと言われています.体重についても論争があり,飛べるためには 70 kg が上限だという説と,いやいや現生鳥類からの類推は正しくなくて, 200 kg 程度はあったはずで,少なくとも滑翔は可能,羽ばたき飛行もできたのではないかという説もあります.

非常に面白いですね.で,このケツァルコアトルスを検索すると,大きな頭を持った巨大な翼竜が首をぴんと伸ばして飛んでいる想像図にたくさん出くわすのですが,これはダウト!

平面形からわかる通り首は非常に長く,その先端に大きな頭骨と嘴(くちばし)が付いています.ということは,この翼竜の重心は翼に働く空気力の中心(風圧中心)よりもだいぶ前に位置することになってしまい,これでは飛行の縦の安定性が取れません.前につんのめってしまいます.

何を言いたいかというと,縦の安定性を取るためには,ケツァルコアトルスは首を縮めて,サギ類のようにして飛んでいたはずなのです.さらにそのような姿勢でダイナミックソアリングができたかはかなり疑問.海面上の接地境界層はせいぜい 30 m 程度だと思うので,この巨体で境界層の外縁から水面すれすれまでの 30 m を頻繁に垂直方向に移動するのは難しかったのではないか?あるいは境界層外縁を超えて上空 100 m くらいまで上昇してから下降していたかも,しかしそれではダイナミックソアリングの効率はかなり低かったのではないか?

などと思っているところです.平面形が載っている論文を読み始めたところなので,何か追加・修正があればポストしたいと思います.

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2023/08/24

ベクレル becquerel とは?

現在,福島第一原子力発電所(通称 1F)では冷却水を多核種除去設備 (ALPS) で処理し,それでも除去しきれないトリチウム(三重水素)を含む水を放出し始めたところです.

トリチウムは宇宙線と大気の相互作用で自然発生するほかに原子力発電所でも生成され,それは希釈したうえで海水に放出されています.これは欧米も中国も韓国も同じ.このトリチウムの量を記述するときに使われるのがベクレル (becquerel) という単位.私は不勉強でよく知らなかったため,この機会に改めて調べてみました.

トリチウムは,陽子 1 個と中性子 2 個が結合した原子核と,電子 1 個から成る原子のこと.普通の水素に比べると中性子 2 個分の質量が加わるため 3 倍の質量を持ちます.外殻電子は 1 個で水素と同じなので化学的性質は水素とほとんど同じ.つまり 3 倍重い水素と思えばよいでしょう.

ところがこの原子は不安定で,半減期 12.32 年で自然崩壊します.つまり 1 kg のトリチウムがあったとすると, 12.32 年後までに 0.5 kg はベータ崩壊して,ヘリウム 3 と電子と反電子ニュートリノになります.このときの電子のエネルギーは 5.7 keV と低いので,人間の皮膚を通過できないほどです.

さて,ベクレルです.ベクレルとは放射能の強さを表す単位ですが,原子核が崩壊して放射線を出すので,それが 1 秒間に何回起きるのかで定義されています.単位はベクレル (Bq) とされていますが,定義により 1/s を言い換えているにすぎません.

毎秒崩壊する原子核の数 = 定数×崩壊していない原子核の数

という法則があり,かつこの定数は

ln(2) / 半減期

と計算できるので,放射能の強さは

( ln(2) / 半減期 ) * 崩壊していない原子核の数

と求まります.

例えば,1 mol (6.02 x 10^23 個) のトリチウムの放射能は,

ln(2) / (12.32 * 365 * 24 * 60 * 60) * (6.02 x 10^23) = 1.07 x 10^15 = 1.07 PBq

ということになります.ペタ (P) などという SI 接頭語が出てくるのがベクレルの特徴です.

Wikipedia のトリチウム水の記事によれば,1F のタンク群に貯められているトリチウムの総量は 8.60 x 10^14 Bq らしいので,これから逆算してトリチウムのモル数を求めると 0.804 mol ということになります.これはトリチウム水という分子量が 20 の水として存在するので,その総質量は約 16 g です.

ようやく数量的な感覚がつかめてきました.この 16 g のトリチウム水を何十年かかけて海に放出するわけです.ごく薄い濃度のトリチウム水をさらに希釈して放出するので,全然大したことはないと考えがちですが,過去に事故で何人か亡くなっているような放射性物質であることに変わりはなく,欧米や日本ではトリチウム水の水質基準が定められています.1F では WHO の飲料水基準 10^4 Bq/L の約 1/7 に希釈して放出することになっているそうです.ちなみに一般的な原子力発電所からは,1.0 から 2.0 x 10^12 Bq / 年程度のトリチウム水を海洋に放出しているそうです.

風評被害が発生しないことを祈りますが,私は福島産の魚をこれからも食べていこうと思っています.

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2023/08/04

ハヤブサは大気密度で押し返される

今日も酷暑なので朝からエアコンの効いた部屋に引きこもっています.昨日ポストしたハヤブサの降下速度に関する記事を読み返してみて,あらためて粗い近似での推定しか行っていないことに気づき,もう少し精度の良い計算をしようと思い立ちました.ヒマなので.

高空から自由落下する質点の運動方程式を解けばよいのですが,残念ながら空気の抵抗は速度の 2 乗に比例するので非線形の微分方程式になります.かつ昨日の記事では定数としていた重力加速度や空気密度は高度の関数なので,これらの値も降下するにしたがって変化していきます.

解析的に解くことは諦めて数値的に積分することにしました.標準大気表を用いて Excel 上で落下後 0.05 秒ごとの重力加速度と空気の抗力から加速度を求め,それを積分して速度,さらにそれを積分して高度が分かります.循環参照が生じるのを避けて計算は 1 次精度の陽解法としましたが,時間刻みを小さくとっているので誤差は十分に小さいと思います.そして結果をグラフにしてみると意外なことがわかりました.

Falcon_alt_vel

グラフの横軸は降下開始からの時間,高度は灰色の曲線でその目盛は左の縦軸,速度はオレンジの曲線で右の縦軸が目盛です.降下する速度の符号を負にとっています.

ハヤブサは高度 5,200 m から降下しながら速度を増していくのですが,終端速度というものは存在せず,降下開始から 25.9 秒後に高度 3,050 m で最高速度 116.7 m/s に達した後は,むしろ減速しながら降下していくのです.地表に到達したときの速度は 103 m/s にまで減速しています.

こうなるのは降下するにつれて空気の密度がどんどん大きくなっていくからです.横軸を降下時間にとった空気密度のグラフを示しますが,これを見ると地表付近では降下開始時より 7 割も大きくなっているのです.空気抵抗は空気密度に比例するので,これでは減速するのは当然です.

Air_density

空気密度や重力加速度が一定であれば,非線形ながらこの微分方程式には解析解があって,速度は時間に関する双極正接 tanh の形になります.時間を大きくすれば速度は一定値に漸近し,終端速度が求まります.しかし空気密度が上記のように大きく変化するので,これは正しいとは言えなくなります.

ということで,ハヤブサは降下当初は薄い空気の中を勢いよく加速していくのですが,やがて濃くなっていく空気に押し返されて減速を始める,それもまだかなり高い 3,000 m でそうなるということが分かりました.昨日は恐るべしハヤブサと思ったのですが,今日は恐るべし大気という感じです.高空からスカイダイヴする人は経験上知っているのではないかな?

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2023/08/03

ハヤブサはマッハ 0.3 で飛べるか?

暑いので冷房の効いた部屋に引きこもる生活を続けているのですが,YouTube を渉猟していたら “ Top 5 Fastest Birds in the World” という子供向けのタイトルがあったので思わず観てしまいました.そしていくつか疑問が・・・

第 2 位はなんとイヌワシだそうです.しかもその最高速度は 320 km/h!これホントかなあ?アマツバメより速い.水平飛行でこの速度を出すのはイヌワシには無理なので,翼をたたんで急降下した場合の話なのでしょうし,体格が大きくて “体重/正面面積” の比が大きいから,終端速度が大きくなるのはわかりますが,落下距離がかなり必要なはず.

第 1 位はハヤブサです.こちらは話に尾ひれが付いていて,これまでに計測された最高速度は 389 km/h !これはギネス記録です.高度 17,000 ft (5,200 m) でセスナ 172 スカイホーク から放たれ,尾羽に取り付けられた高度記録計によって記録されたものです.このとき,ハヤブサが追うべき餌としてルアーを落とし,飼い主とカメラマンも同時にダイヴしたそうです.これは National Geographic のドキュメンタリー “Terminal Velocity(終端速度)” として 1999 年に撮られ,2002年に放映されました.こちらをご覧ください.

ちょっと疑問なのは,これは飛行速度というよりは番組のタイトル通り落下の「終端速度」というべきものです.さらに,高空なので大気密度は低いため,終端速度は大きくなりやすい.ちょっと簡単に見積もってみましょう.

このハヤブサ,Frightful という名の 6 歳のメス.難しいのは代表面積の取りかたです.彼女の頭胴長は 41 cm,翼開長は 104 cm なのですが,翼をたたんで急降下している状況なので正面面積が欲しいです.翼をたたんだときの正面面積として,まず直径 15 ㎝ の円の面積を使うことにします.これは 0.0177 m^2 です.次に彼女の抗力計数 CD を小さめに見積もって 0.1 としましょう.終端速度に近づいたであろう高度として 2,000 m をとると,その高度での大気密度は 1.007 kg/m^3 です.そこを 389 km/h = 108 m/s で飛んだ場合の抗力は,

(1/2) * ρ * v^2 * S * CD = (1/2) * 1.007 * 108^2 * 0.0177 * 0.1 = 10.4 N

一方彼女の体重は 0.998 kg ですが,高度記録計が 0.113 kg 加わるので,合計の重力は 10.9 N となり,ほぼ完全に釣り合います.うーむ我ながら見事な見積りです.

この高度での音速はだいたい 332 m/s なのでマッハ数は 0.33 程度となり,空気の圧縮性をそろそろ考慮しなければならない領域に到達していますが,体の周囲のどこをとっても衝撃波が発生することはないので,さほどの支障はないでしょう.支障があるとすれば自由落下から回復するときの空気力.これは抗力係数で言えば 1.0 のオーダーになるので,最大で 100 N 程度になりえます.これを翼の筋肉で支えられるか?まあ羽ばたきのことを考えると大丈夫なのでしょう.

ということで,ハヤブサがマッハ 0.3 程度で飛べることはほぼ確実です.素晴らしいですね.

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2023/07/16

BOP付けずに掘ったのかよ?

北海道蘭越町地熱発電用の試掘井を掘削中に熱水が暴噴.まずいことに濃度の高いヒ素が含まれていたので近隣の土壌や水系を汚染中です.

やらかしたのは三井石油開発というれっきとした石油開発企業なので,数千メートルの試掘井も掘れる試掘のプロのはず.それが地熱地帯を甘く見たのか,浅いうちは大丈夫だろうとBOP (Blowout Preventor) 防噴装置を付けずに掘っちゃったらしいのです.これは業務上の過失ですね.地元への補償が必要でしょう.

地熱地帯でのドリリングでは岩盤の割れ目が多く逸泥のリスクが高いので,そちらにばかり気が行っちゃったのか?いやいやプロなんだからそんなはずはない,地熱地帯での水蒸気暴噴のリスクはよく分かっていたはず.逸泥すると静水圧が低下して沸点が下がるから暴噴しやすくなるのです.それなのにBOPなしで掘ったのはなぜ?坑内冷却はしていたのかな?硫化水素対策は?

水蒸気暴噴の一例

暴噴を止めるのに数週間もかかるらしいのですが,その間にヒ素の汚染は進行します.社外のプロの手は借りないのかな?暴噴を止めるプロは世界中にいるはずですが.

ヒ素が出てきたのは不運でした.まあ日本では少ないですが,世界的には地下水にヒ素が含まれているところはあり,例えばバングラデシュでは井戸水はそのままでは飲めないそうです.しかし,まあヒ素についても予備調査はしなかったのでしょうかね?

これで地熱発電に対する社会の認識が低下するのが残念.もっとプロらしい仕事をしてほしかった.

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2023/07/08

ITシステムは例外処理が9割

マイナンバーに関する誤登録やシステムの不具合に関して,システムを作る側の視点から面白い記事を見つけました.

「愚かなのはマイナカード関連だけじゃない、企業でも「バカヨケ」なきシステムの恐怖」 (木村岳史,日経ビジネス)

要は,ユーザーが様々なミスをすることを前提にシステムは設計・構築されなければならない,というエンジニアリングでは当たり前のことを述べています.工学の言葉で言うと,定格外使用に対するフェイルセーフの作り込みということになります.今日では身の回りのほとんどすべての電気製品はマイコンで制御されていますが,マイコンのプログラムにはこのフェイルセーフのためのプログラムが書き込まれているはずです.

実際自分で簡単なプログラムを書いてみるとわかりますが,実用的にしようとすればするほど,自分以外の他人にも使ってもらおうとすればするほど,誤入力や操作ミスをしたときに安全に元の状態に戻す,間違いを表示して再入力を促す,などのためのプログラム量が増大していきます.

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ElchinatorによるPixabayからの画像

私がこのサイトで公開しているソーティング・フィルター Refsort/Ruby でも,ソースコードの 7 割から 8 割程度は例外処理のためのものです.マイナンバーのようなシステムだと,ソースコードのおそらく9割以上が例外処理に割かれていると容易に想像できます.つまり SE やプログラマーは,めったに遭遇することはないどんな誤入力や誤操作があっても,システムが間違いを犯さないようにシステム全体を設計し実装することが求められます.

これは現実には大変なことで,100% の完璧さを求めることは無理なのですが,完璧に近づく努力を怠ることは犯罪に近いことです.自動車や航空機,医療機器などのことを考えれば容易に納得いくでしょう.

一方,ユーザーの入力ミスを防げなかったマイナンバーのシステムですが,ユーザーがどれほど間違っていたかというと,健康保険組合が 7,500 万人の被保険者の情報を登録して,誤入力があったのはわずか 1,000 件のオーダー.誤り率は 0.001% という驚異的な正確さだったのです.このような高い正確度で作業をしたにも関わらずメディアや野党はそれを騒ぎ立てるのですが,この程度の誤り率で制度自体の存続を議論するようでは,定量的思考能力が欠けているのでしょう.

ただし,誤入力を誤入力と見抜き,そういう入力をさせないようにシステムが作り込まれていなかったことは当然責められるべきです.日経ビジネスの記事もそこに論点を置いています.健康保険組合がこのような正確さで仕事をしていなかった場合を想像すると,背筋がぞっとしますね.

しかし日本では,一つの申請を行うのに住所や氏名などの基本情報を異なる書類に何度も(しかも手書きで)記入させるやり方が今でも健在です.そのあたりの発想自体から変えていかなければ,バカヨケできるシステムの構築は難しいでしょう.

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2023/06/04

五月雨を集めて速し

当地でも大雨が降ったようです.他人事のように言うのは,ちょうど雨が降っている間は長時間船の上にいて,関東地方を遠く離れていたからです.昨夜帰宅してみても自宅のある住宅団地には異変はなかったので大したことはないと思っていたのですが,朝になって窓から遠くを見渡してみると,田んぼがかなり広い面積冠水していました.

お昼ごろ散歩に出たときに,それを確かめるべく冠水しているあたりに立ち寄ってみると,用水路が満水状態で川に排水できておらず,そのために田んぼが冠水しているのだということがわかりました.さっそくカルガモたちが遊びに来ていました.田んぼの中を通る道路では乗用車が水没していましたので,それなりの水深はあるようです.

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用水路が注ぎ込む川はすぐ近くの大きな沼に注いでいるのですが,この沼からはポンプ機場を経てより大きな川に排水されるようになっています.しかしこのポンプ機場の能力は大きくありません. 2 台あるポンプの合計の排水能力は 30 m^3/s なのですが,この 2 台を 48 時間フル稼働させても沼の水位は 1m しか下げることができません.実際には上流から水が流入し続けるので,水位の低下はより少ない値になります.

Earlysummeraroundhome_jun2023_0010m

こうなる理由は,この沼に注ぎ込む水系に対して 50 年に一度という大雨を想定すると,排水能力は 130 m^3/s 必要なのに,その 23% の能力しか与えられていない暫定的なものだからです.特に今の時期は周囲の水田の取水を考慮して沼の水位を高めに保持していたはずで,大雨に備えて予防的に水位を下げておくということはできなかったのだろうと思います.

この周辺の田んぼは田植えが終わって間もないところが多かったので,背の低い苗は完全に水没しています.沼がどの程度速やかに排水されるのかわかりませんが,一刻も早く排水が進むことを祈っています.

参考文献 牛久沼の氾濫 水谷武司

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2023/05/26

深夜の漏電

昨夜ちょうど寝入ったころのこと,何かピッピッと音がして,ドアフォン子機の液晶画面が点灯したことに気づきました.同時に寝室の常夜灯が消えています.これは停電だなとすぐに判断し,復旧するのを待っていたのですが,いつまでたっても復旧しません.

仕方なく布団から出て家の周囲を見回してみると,他家では灯りがついているではありませんか.停電しているのはうちだけのようです.となるとこれはトラブルです.非常照明を持ち出して分電盤をチェック.案の定漏電ブレーカーが落ちています.

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漏電ブレーカーのスイッチを入れてみると,再びすぐに落ちてしまいました.これはどこかで漏電が発生しているということです.家の中のどの回路で漏電が発生しているのか,それを見るには回路ごとにスイッチを切ってどの回路で漏電が発生しているのか確かめるしかありません.20 個ほどある回路スイッチをしらみつぶしに調べていくと,どうやら一階の照明回路に問題があるということがわかりました.

え?照明?なんでそういうところで漏電が発生するのか見当がつかず途方に暮れてしまいました.仕方なく電力会社の停電コールセンターに電話.状況を説明し,駆けつけてもらうことにしました.ここは 24 時間対応.ただし有償です.

近場の営業所からやってくるはずですが,それを待つ間にもがいてみようと思い,冷静になって考えてみました.そういえば玄関の庭園灯が数年前から内部の腐食のためにスイッチを入れても点灯しなくなっていました.漏電するとすればこれが一番怪しい.これは一階の照明回路の一部です.

外に出て,庭園灯専用の屋外ボックスの中のブレーカーを切り,改めて漏電ブレーカーを入れてみると,ビンゴ!漏電ブレーカーはいつまで経っても落ちません.こいつだ!

ほどなく電力会社のサービスカーが到着.経過を説明し,原因絞り込みのためにやったことを説明すると,間違いなくそれだろうと同意してくれました.彼が客先の分電盤をチェックすると料金が発生するのですが,私の説明を聞いたうえで,大変親切にも,無償の範囲で簡単な点検だけで済ませてくれました.そのおかげで費用はゼロで済みました.

すでに零時を回っていたのですが,ようやく停電から解放されて再び寝床に入ることができました.外に出ているときに見た星がきれいで,遠くでフクロウが鳴いていました.やれやれ.

庭園灯の修理はどうしようかな?

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2023/01/08

サーマルソアリング

強い冬型の気圧配置が緩み,明け方は冷え込んだものの日中は 12 度くらいまで気温が上がりました.風も弱いため,強い日射で窪地や住宅地の上には上昇気流が発生.もしも人間の目で見ることが出来たらあちこちにサーマルプルームがキノコのように立ち上がっていたはずです.

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そんな中を一羽のノスリ滑翔していました.全く羽ばたかず,翼と尾羽の微妙なひねりだけで長時間飛び続けています.

ノスリの体型から推定できる揚抗比 L/D(揚力と抗力の比)は 5 から 8 程度だと思うのですが,仮に 8 だとして,秒速 10 m/s の対気速度の滑空で高度を維持するためには,上昇気流の速度は 1.25 m/s 以上なければなりません.この程度のサーマルが発生することはごく普通のことで,グライダーでサーマルソアリングを行う場合は数 m/s の上昇速度を持つプルームを探すようです.

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2022/09/18

ACアダプターを撲滅せよ

私の机の周りにはいくつもの AC アダプターがあります.無線 LAN ルーターの電源,NAS の電源,LED ライトの電源,などなど.これらの AC アダプターは相互に互換性がないのが普通で,電気製品が増えるたびに AC アダプターも増える,そして電源タップの周りは AC アダプターだらけになって,黒い四角い箱がごろごろ.

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こうなることを避けるために,私は出来るだけ電源内蔵の機器を買うようにしているのですが,なかなか希望通りにはいきません.例えば,現在使用中のネットワーク・ハブは,あれこれ探し回ってようやく電源内蔵・金属筐体のものが見つかったので良かったのですが,無線 LAN ルーターは業務用でもない限りそのようなものは全くありません.

どうして AC アダプターが世にはびこるのか,想像を巡らせてみました.

  1. 製品メーカーに電源を設計できるエンジニアがいない.電源回路は製品を底辺で支える大変重要な部分のはずだが,広告に書ける性能とは無関係のために重視されず,優秀なエンジニアを雇わない,エンジニアが育たない.
  2. 電源を内蔵すると国ごとに異なる電圧や規格に対応して認証を得るのが大変面倒.
  3. 自社で不慣れな設計をして製品事故(特に経年劣化)を起こすくらいだったら,電源専業の台湾デルタ電子から認証付きの AC アダプターの供給を受けたほうがよほど安上がりだし品質も安心.
  4. 電源内蔵でなくてもユーザーは気にしない・・・だろう.

しかし,私は大変気にするのですよ.床や机上に埃まみれになった AC アダプターがごろごろ転がっているのは許せません.そもそもまともな電源を作れないメーカーの製品はいまいち信用できない.技術の底力を疑いたくなるのです.特にチョークコイル電解コンデンサの選択や使いこなしは製品の信頼性に大きく関係します.パソコンに内蔵させる10万円もするグラフィックスカードですら,その電源回路のチョークコイルが振動して騒音(いわゆるチョーク鳴き)を発生させる不良設計がまかり通っているので全く呆れます.

しかし AC アダプターは無くなりませんねぇ.ますますはびこっています.私にできることは電源を内蔵した製品を探して買い求めることですが,年々選択肢が狭まっているのを感じて悲しくなります.

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