オピニオン

2021/08/06

日本のスポーツ報道の異常

オリンピックもそろそろ終わり.どのチャネルも連日オリンピック報道で忙しそうなのですが,もともとスポーツ観戦に興味のない私は,疎外感を味わいながら,録り溜めたドキュメンタリー番組などを観ております.

ただメディアがちょっと異常ではないかと思ったのは,どのチャネルでも日本人選手が出ていない競技は無視されていること.出場していても入賞の見込みがない競技は中継はおろか報道すらされていないことです.例えば,陸上競技のほとんどのフィールド競技,カヌー,自転車ロードレース,馬術,ホッケー,近代五種,ボート,射撃,水球,テコンドー,などなど.

1964 年の東京オリンピックの際には,国民の啓蒙の意味合いもあったのでしょうが,もう少しまんべんなく各競技が中継,報道されていたと思います.それに比べると今回のメディアは非常に偏った扱いをしていると感じます.

一方,オリンピックよりも格上の大会があって,毎シーズン超一流選手どうしのプレイを観戦できるサッカー,ラグビー,テニス,野球,ゴルフなどを,日本人選手が出ているという理由で長時間中継するのは退屈で時間と電波の無駄.そもそも超一流選手がほとんど出場していないので,競技に華がありません.

私はセイリングのレースが中継されることに興味があったのですが,ちらっとニュースに出た程度でした.有料のスポーツチャネルでは中継されていたのでしょうか?ヨットレースの中継は技術的に難しいのですが,アメリカズカップの中継を見ると,血沸き肉躍る格闘技の趣があります.今回の大会ではセイリングは 10 種目もあるので,そのすべてを中継することは期待しませんが,ウィンドサーフィンくらいは中継してもよかったのでは?

日本人選手不在のプレイを無視するこの傾向が日本のメディアで始まったのは,松井秀喜ヤンキーズに入団したころに遡ります.メディアが視聴率稼ぎで易きに流れたのです.私の知人が「日本のスポーツ報道のスタイルが変わってしまった」と嘆いていたことを思い出します.野茂英雄の時代には,野茂自身の活躍だけではなく,チーム全体,あるいはリーグ全体の報道が行われていました.それを通じてアメリカのプロ野球全体を知る良い機会だったのです.

この傾向がさらにひどくなったのは大谷翔平の活躍が目覚ましくなったここ 1 年ほど.彼の一挙手一投足を詳細に報じる割には,チームメイトや対戦相手のプレイなどはほぼ無視されています.そもそも現在では日本人選手が出ていない MLB の試合が中継されることはありません.昔はそうでもなかったし,今でも有料のスポーツチャネルを契約すれば別なのでしょうが.

スポーツ観戦の楽しみは,自国の選手だけに興味があって観るものではないはずです.世界の超一流クラスの選手たちのプレイを観ることは,日本人選手がいるいないに関係なく,興奮させられ,感嘆させられ,味わい深く,意味あるものです.もう少し幅のあるスポーツ報道をしてもらいたいものだと思います.

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2021/04/23

ワクチン接種クーポンが来た

やっと私にも COVID-19 ワクチン接種クーポンが来ました.ワクチンはファイザー社製です.封筒の中には何種類かの書類や説明書が入っていて,それによれば予約開始が5月17日,接種開始が5月24日からとのことですが,ワクチンの入荷量によっては大幅に遅れる場合がある云々.私は少し間をおいてから予約しようと思います.

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hakan germanによるPixabayからの画像

現在の日本の感染状況では,まずは医療や福祉に従事する人(医師や看護師だけでなく,調理や清掃や事務などに携わる人もすべて)に優先的に接種するのがよいと思うので,行政にはそのような方針で取り組んでもらい,それが完了したら高齢者への接種を始めればよいと思います.このあたりは選挙時の老人票目当ての政治介入で優先順位がおかしくなってしまうリスクがありますが,それに対しては専門家が声を大にして,職を賭して言うべきでしょう.ここで科学が政治に負けてはいけません.

ちなみに...新型インフルエンザパンデミックが予想されたころ,アメリカでは重症者に対する人工呼吸器の優先順位が議論され,当初は高齢者を優先すると決められたそうですが,高齢者自身が異議を唱え,サイトカインストームで重症化しやすい子供を優先するよう変更されたそうです.

実はこの優先順位は大変重く難しい課題で,日本でも専門家の間では議論が活発に行われており,その一端は例えばこの記事に見ることができます.また感染状況が変われば,医療従事者を優先すべきという結論も変わる可能性があります.例えばこの記事

状況によっては,日本でも高齢者自身が声を上げるべきだと思いますが,接種会場に押し寄せている一部の人たちには期待できないでしょうね.

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2020/12/29

あの時は 8 週間籠城しろと言われた

この年末年始は世界中で COVID-19 とどう向き合うかの各種実験が行われているといってよいのではないでしょうか?国や地域によって,政治制度や文化,習慣によってさまざまな議論が行われ,献身と努力と軋轢と憤怒と絶望が入り混じっています.

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TumisuによるPixabayからの画像

さて思い出してみましょう.そう,2003 年の SARS コロナウィルス (SARS-CoV) のときのことを.あの時,日本は幸いにもパンデミックを免れ,世界的にも感染者の絶対数や重症事例は多くありませんでした.しかし SARS の次にはインフルエンザ H5N1 亜型の変異種や H7N9 亜型の変異種,いわゆる新型インフルエンザ・ウィルスがやって来る,それは時間の問題だと言われていたのです.その数年後,当時の私の職場では事業継続 (BCP) の観点から感染症の専門家を招いて講演会を行い,驚くべき警告を受け,事前の準備をするように言われたのでした.

最もショックを受けたことは

パンデミックになったら自宅で 8 週間籠城しなさい.そのために事前に食料などを備蓄しなさい.最も恐ろしいことは餓死者が出ること.

と警告を受けたことです.つまりこういう事です.

新型インフルは強毒性で感染力も強いと想定されるので,社会全体の動きを止めるしかパンデミックを終息させる手立てはない.感染症の専門家としては 8 週間の自宅籠城が必要と考える.会社や学校などはすべて閉鎖.交通機関は停止.事前に食料や生活必需品の備蓄が必要.社会インフラについては機能維持のための特別の体制が必要.物流は大幅に滞るので,最も危惧されるのは餓死者が出ること.

警告の中で「籠城」や「餓死」という言葉が使われたことに,私は強い衝撃を受けました.これは戦時よりもひどい.今の社会ではとうてい対応できない手段だと思ったからです.そういう言葉を持ち出さなければならないほど,当時の専門家の危機感は強かったのでした.また 10 代の若年層にサイトカインストームが発生する,人工呼吸器が足りない,トリアージュに対する合意がないなど,絶望的な予測も述べられていました.

その後あるガス会社で新型インフル対策を聞く機会があったのですが,交通機関がすべて止まることを想定し,必要最低限の社員がローテーションを組んで自家用車で仕事の現場に通勤する計画を立てている云々.ほほう,さすがはガス会社.事前の計画ができていることに感心しました.

全国民が 8 週間自宅に籠城するといったい何が起こるのか?当時も政府内部では議論が行われたはずです.そしてその議論は今も公表されないまま,今の事態に行き当たっています.当時の議論が現在に生かされているかどうかも検証できません.社会的なショックを恐れて公表しないのかもしれませんが,それはあまりに国民を舐めているのではないでしょうか?多少の騒ぎは起こるでしょうが,それを乗り越えて国民と国家を守るのが政治と行政の仕事です.政治も行政も疫病に対する覚悟が無さすぎる,その覚悟の無さが国民にも伝染していると感じます.

新型インフルのときの専門家による強い警告に比べると,今の SARS-CoV-2 に対する対策はいかにもおざなりで,疫病を食い止めるという覚悟が感じられません.唯一覚悟を示したのは中国でしょう.その強権的手法は嫌悪されていますが,成果は目を見張るものがあります.多少は参考にすべきでしょう.

今回皮肉なことは,想定されていた新型インフルではなく,SARS-CoV の変異種がパンデミックを引き起こしたことです.しかし,やるべきことはそう変わりありません.ちなみに,私があの時に買った 8 週間分のマスクが今になって大変役立っています.

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2020/11/29

いよいよ冬

週が明けたらもう12月.いよいよ冬の到来です.気圧配置も典型的な冬型が多く現れるようになり,北西の季節風が地表を乾かすようになってきました.

当地には蓮田が多いのですが,初冬は年末需要のための収穫作業が盛ん.寒いなか水に浸かりながらの大変過酷な労働ですが,水田よりは実入りがいいらしく,蓮田への転作が徐々に進んでいるように見えます.

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通りすがりの者の勝手な感想ですが,肥料の過剰投入による富栄養化が心配なのと,防鳥網への野鳥の羅網を防ぐ工夫が必要だと思います.カモ類やオオバンがよく羅網して死んでいますが,千葉県野田市で飼育・放鳥されたコウノトリが霞ヶ浦で羅網して死亡したり(2018年8月),佐賀県では世界的な希少種クロツラヘラサギがやはり蓮田で羅網して死んでいます(2016年2月).

佐賀県の蓮田では NPO や JA が対策を検討し,防鳥網を直置きすることによって羅網を防げているらしいので,工夫のしがいはあると思います.

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2020/11/27

学び直しで思ったこと

仕事を引退してから,学生の頃挫折した学問の分野の学び直しを2年ほどやっています.最初はブルーバックスなどの手軽に読める本から始めたのですが,それでは学んだことにも理解したことにもならないと感じたので,完全に独習なのですが,本格的な教科書を買ってはノートを取りながら読むことを続けています.

最初に成果があがったのは,学生時代からもやもやした感じが何十年も付きまとっていた熱力学.これは良い教科書に巡り合えて,頭が大変すっきりしました.長年のつかえが取れた感じです.

気をよくして次に挑戦したのは一般相対性理論.これは手鳥足取りで数式展開を行う教科書を読んでもまだ消化不良だったので,その後解析力学とテンソル解析の教科書を読み足して,ようやく7割くらいわかった気になりました.しかし重力方程式の導出はいまだ納得できていません.

現在は量子力学のオーソドックスな教科書に取りついたところですが,相対論以上に概念の革新が求められるために,毎回頭の中を洗い替えしながら,えっちらおっちら進んでいます.コペンハーゲン解釈が現実に成り立っているなんて本当に不思議です.電子波の干渉の実験結果など,おぞましくすら感じることがあります.

これら独習の経験を通して感じたことは,

  1. リアルタイムでなくてよいので質問できる場が欲しい
  2. 共に学びながら疑問点を教えっこできる仲間がほしい

ということです.独習しているとたくさんの疑問点が現れてくるのですが,それを誰にも質問できない辛さが付きまといます.また,この部分はどうしても理解できないが別の説明の仕方はないのか?これは誤植じゃないのか?という部分も多々出てきます.こういう時に上記のような機会があればいいのになぁと常々思います.

新型コロナウィルスの影響で,日本でもようやくリモート学習が盛んになってきましたが,まだまだ一方向の授業が多いのではないでしょうか?私も YouTube で数学や物理学の講義の動画を見ました(よびノリはお勧めです)が,質問できないもどかしさは教科書の独習と同じです.私は,別に動画で教えてくれなくてもよいので,上記のような欲求を満たしてくれる SNS のような Web サービスがあってもよいのにと思います.それなりに需要はあるのでは?と思うのですが,いかがでしょうか?

サービスとは例えばこんな具合です.まず分野ごとにテーマ,あるいは具体的な教科書が提示され,この指とまれ方式で参加者を募ります.ある程度人数が集まった時点で開始するのですが,途中参加も okay.なぜならば,過去のログはいつでも参照可能なので,遅れて参加しても不利にならないからです.

教科書の章ごと,あるいは項ごとにスレッドを立てて,質問や意見を書き込んでもらい,それに対して他の参加者が回答や関連する質問を書き込むという感じです.その分野をよくわかった人がチューター兼ファシリテーターを務めるのが理想的です.また遅れて参加してきた人のために,いったん閉じたスレッドでも蒸し返し可能とします.

技術的な課題の一つは,数式をどうやってやり取りするかですが,これは TeX のソースでやり取りするしかないかも.ただし複雑な積分や行列などは TeX のユーザーであっても難しいことには変わりがないので,ここは要検討のポイントです.

また,落ちこぼれをできるだけ救済するにはどうすればよいか?落ちこぼれをゼロにするのは至難の業だと思うのですが,切り捨てて先へ進むのもあまりに不憫.レベル別のコース編成にするとか,アメリカの大学のチューター制度のような仕組みを作れないかとも思います.ここはコストとの兼ね合いでなかなか難しいところです.

掲示板につきものの荒らしや爆撃をどうやって防ぐか?ファシリテータに権限を与える必要があると思います.かつ有料の会員制にするのが良いでしょうか?ただし低廉な料金で.月 1,000 円程度.既存の掲示板システムがあれば直ちに開始できそうなので,どこかの会社がやってくれないかなぁ?人気がありそうなのは,線形代数,相対性理論,電磁気学,量子力学などかなぁ?さらにリーマン予想とかあってもよさそうな気がします.

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2020/10/03

親しき仲にもマスクあり

昨日は年に一度の健康診断で,近隣の総合病院に併設されている健診センターで午前中を過ごしました.以前と異なっているのは,まずマスクをしていない人は病院内立ち入り禁止になっていること,さらに入口にサーモカメラが設置されており,それで入館者の体温を測っていること.

まあ当然の措置とは思いますが,日本では今回のコロナ騒ぎによって初めてこのような本格的な入退管理が始まったといってよいでしょう.ところが台湾や香港では,2003年の SARS 騒ぎのときには空港でもホテルでもデパートですらこのようにやっていたので,現地では「またか」という程度の感覚だと思います.

あの時面白いと思ったのは,香港から瞬く間にカナダのトロントに SARS が飛び火したのに比べると,日本にはほとんど感染が広がらなかったことです.当時の中華圏の人の行き来の濃淡と,トロントがいかにコスモポリタンな街であり魅力的な移住先だったかがよくわかる出来事でした.

さて,米国のドナルド・トランプ大統領が新型コロナウィルスに感染したそうです.マッチョを気取る保守未開派(これは私の造語です)の傾向として,彼とその周辺もマスクを着けることが少なかったと思いますが,その影響があったのかなかったのか?

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Juraj VargaによるPixabayからの画像

欧米文化圏では,マスクをするのは医療関係者など限られた人たちのもので,顔の大半を隠すというのは自分の表情,特に笑顔を見せられなくなり,敵意や攻撃性がないことを示す社交的手段がないのは嫌だと考える傾向があります.イスラム教のブルカチャードルなどのヒジャーブが忌避されるのも同じ理由だと思います.

ところが,欧米圏では逆にサングラスは常用されますし誰も咎めたりはしません.目こそ感情を最もよく表す顔のパーツだと思いますし,人間は白目が見えるので視線の向きもよくわかり,これを見せないことはよほど自分の感情を隠したい場合だと思うのですが,これはまあ文化の違いと言うしかないのでしょう.

いずれにせよ今日は

下着を着けるようにマスクを着けよう,親しき仲にもマスクあり

と言うべき状況だと思います.人々の意識も徐々に変わっていくと期待したいところです.

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2016/05/28

個人番号カードで印鑑証明

以前このブログで個人番号カードを取得したことをお伝えしましたが,ようやくカードの出番がやってきました.ある手続きのために印鑑証明を取得する必要が出てきたのですが,このカードがあれば,従来のように居住地の市役所などに出かける必要はなく,全国のコンビニで取得することができます.

私は,居住地とは異なる市の駅前のローソンでやってみました.まず店内のコピー機のところに行きます.画面のメニューに “行政手続き書類” などというメニューがあるので,それをタッチ.さらに “印鑑証明” を選択し,それからコピー機の所定の場所に個人番号カードを置きます.非接触通信で情報のやり取りをするようです.暗証番号の入力を求められるので入力.印刷前には料金を入れるよう指示されます.印鑑証明は一通150円.安いです.お金を入れると,印鑑証明書がコピー機から出てきます.さらに領収書が出てきて一連の操作は終わりです.

画面をタッチしてから次の操作の画面に移るまでが間延びしており,これは通信や認証に時間がかかっているためと思われますが,あまりサクサクと動く感じではありません.コピー機が混んでいるときにはちょっとやりにくい感じです.しかしどこのコンビニでも証明書を引き出せる利便性は非常に高く,料金が低廉であることもあって,もう市役所に行くことはないのではないか,と思えるほどです.

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2016/03/27

個人番号カードの貧相さに驚く

昨年11月に申し込み,先週ようやく受け取り案内が来ていたので,昨日遠くにある市役所にはるばる出かけて個人番号カードを受け取ってきました.

渡されたカードを見てびっくり.なんと貧相なカードなのでしょう!まず何と言っても,文字が小さく非常に読みにくい.そもそも文字色が純黒ではなくグレイであるうえに,カード全体に偽造を防止するためか多色刷りのテクスチャが濃い目に印刷されているので,文字やQRコードのコントラストが低い.特に,最も肝心な個人情報の部分は,わざわざ濃いグレイの背景色になっているので,なおさら読みにくい.実際のカードの画像は上のリンクから見ることができます.

必要な情報や証明書は全て電子化されてデータセンターやカード内部に保存されているのですよ,したがってカード表面の情報やデザインは単なる飾りでしかないのですよ,と言われるような気がするのですが,それでも,このカードは身分証明書として使用できるという触れ込みなので,それならもうちょっと見栄えのするカードデザインにできなかったのかと,行政当局やこの仕事を受注した企業のセンスを無さを嘆かざるをえません.そのへんの会社の社員証よりもずっとダサいです.

このカードの有効期限は10年,内部の電子証明書の有効期限は5年です.私のような感想を持つ人は多いと思うので,10年後を目途にもっとましなデザインのカードに置き換えられていくことを希望しますが,それには巨額の費用が掛かると言われて話が進まなくなりがちだなぁ.

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2015/08/23

FIT賦課金の不公平

今月の電気料金の請求書をよく見ていたら,これまで見落としていた項目を発見し驚いてしまいました.それは “再エネ発電賦課金” というわかりにくい略語で,要するに FIT 制度によって電力会社が再生可能エネルギーを買い取る費用を最終需要者にそのまま転嫁するものです.

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我が家の場合,賦課金は 437 円なので,請求金額に占める割合は 5.9% になります.我が家は家族数も少なく節電にも努めているので,真夏でもこの程度の電気料金で済んでいるのですが,これが育ち盛りの子供が二人いるような家庭だと,ひと月の電気料金はゆうに1万円を超えるはずで,それに 6% もの賦課金が加わることは決して無視できる金額ではありません.

日本で FIT が始まった時に,そのあまりに高額な買取料金に業界が色めき立つと同時に,太陽光パネルを設置して売電できる金持ちが得をして,パネルを持てない貧乏人に賦課金を払わせることの不公平を非難する意見がありましたが,こうやって毎月賦課金を払っている身になってみるとこれは確かに理不尽な制度だと感じます.何より電力会社が買い取り価格を最終需要者にパススルーして自分は痛くもかゆくもない,という事業者寄りの制度には納得ができません.地域独占と総括原価方式によってぬるま湯経営に浸かってきた電力会社こそ,二酸化炭素の排出を減らす負担を需要者と分かち合うべきです.

FIT そのものは,そのままでは導入のインセンティブが働きにくい再生可能エネルギーを社会に導入するために考え出された優れたアイデアであることは間違いありません.90年代のデンマークではこれで風力発電が非常に急速に導入されました.しかし,社会各層の負担の重みは一様ではなく,従来方式の発電事業者,送配電事業者,最終需要者のそれぞれが異なる形で負担を分かち合って再生可能エネルギーへの移行を促す制度であるべきではないかと思います.発電事業者には大規模な再生可能エネルギーの導入を促し,送配電事業者には不安定な再生可能エネルギーを受け入れられる電力網の整備を促すことも必要だからです.最終需要者だけに負担を強いても,再生可能エネルギーが経済的に持続可能なエネルギー源になるとは思われません.

ドイツではこの賦課金がすでに一世帯当たり 1,000 円を超えており,これ以上の負担は世論が受け入れないそうです.そこで太陽光発電の電気は電力網に戻して買い取るのではなく,自家消費するほうが得になる料金体系を導入しつつあるとのことですが,このような小規模の発電と蓄電への設備投資が社会全体にとって効率の良いことなのか,疑問ではあります.

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2015/01/01

新年のご挨拶(喪中版)

昨年母親を亡くしましたので,今年は年賀状を出しておりません.Web 上の新年のご挨拶も例年に比べて簡素に済ませたいと思います.ご了解いただければ幸いです.

さて,母親を亡くした件です.母親はここ数年間がんを患い闘病を続けていました.発見が遅れたために,すでにがん組織が臓器の広い範囲に広がっており,また高齢であることもあって,手術や放射線による治療は断念せざるを得ませんでした.残るのは化学療法,すなわち抗がん剤です.しかし,抗がん剤には強い副作用があります.これによって髪の毛が抜けたり吐き気がしたり,ろくでもない体調の変化に見舞われます.

理想的には,その人の遺伝子の変異型に合わせた抗がん剤を調製出来ればよく,長年研究が続けられていますがまだ実用には至っておらず,結局は大多数に効くと想定して調製されたものを使わざるを得ません.しかし,これが個々の人に効くかどうかはくじを引くようなものです.

母の場合,3種類の抗がん剤を順番に試していったのですが,残念ながら結局どの抗がん剤にも効果は認められませんでした.1年ほどをかけたのですが,入退院や通院の手間,多額の抗がん剤費用を負っただけに終わりました.結局,医師との話し合いの末に抗がん剤治療は打ち切り,“緩和ケア„,すなわち根本治療は諦めて残された生存期間をいかに有意義に過ごすか,という方向を選択せざるを得ませんでした.

幸いなことに現代の緩和ケア技術は素晴らしく,亡くなる6か月前まではほぼ健常者並みの生活を送ることができました.この間は帰省するたびにドライブなどに連れ出し,行きたいところに連れていくようにしました.痛みが目立ってきて専門医が常駐するホスピスに入院した後でも,亡くなる1か月前まではステロイドの効果で食欲も旺盛で,普通に帰宅したり外食したりできたことがせめてもの慰みでした.

最後の1週間は急速に症状が進み,医療用麻薬の量も増やさざるを得ず,不安障害のようなものも出てきましたので,亡くなる前日からは鎮静剤を継続投与して鎮静状態に入り,静かに臨終を迎えました.

私はベッドサイドで最後の一呼吸まで看取ったのですが,こういう最期も悪くないなと思ったものです.なぜならば,亡くなる1週間までは普通に起きて歩き回り,食事や排せつも行うことができる,最後は急激に症状が進むものの,準備と覚悟さえできていれば短期間で一気にあの世行きです.長患いにまつわる様々な面倒事に苦しまずに済みます.皆さんはどのようにお考えになりますか?


昨年は仕事の面では多くの海外出張に出かけて忙しく,体にも負担をかけた年でした.特に時差のあるアメリカや欧州への出張が多く,それはそれで面白くはあるのですが,体に対する負担は相当のものです.負担としては,直接的には長時間のフライト,間接的には食事や睡眠のリズムの乱れがあります.

長時間のフライトに耐えることはすなわちエコノミークラス症候群の予防に尽きます.従って座席は必ず通路側,やむなく窓際になった場合は乗り込んだ後で通路側の空席を探して移動するなど,神経を使いました.10時間以上のフライトになるので,何度も席を立ってキャビンの最後尾に行っては柔軟体操や足踏み,下肢部のマッサージを行って血栓ができるのを防ぎます.

海外出張に行った際の気晴らしや楽しみについてですが,アメリカは中西部の農業地帯に行くことが多く,広々とはしているのですが,歴史や文化に触れることは難しく,日本ではなかなか食べられない美味しい熟成肉にありつけるくらいしか楽しみがありません.一方欧州は歴史ある都市に滞在できる機会が多く,これは写真好きにとっては絶好の機会を提供してもらったようなもので,わずかな空き時間を利用して,どんなお天気であっても街を彷徨することを繰り返しました.古い街の狭い路地には特に興味を惹かれます.

今年も海外出張が多くなりそうなので,体調を整えておきたいと思います.


海外出張の陰に隠れてしまいましたが,長時間通勤を相変わらず続けています.もう慣れてしまったと言いたいところですが,加齢とともにだんだんきつさを感じることが多くなりました.もう定年も近いのですが,定年と同時に年金をもらえるわけでもないため,しばらくは継続して働き続けなければならないと思います.年とともに通勤のきつさが増すことは確実なので,どうしたものかと思案しています.

以前は通勤中は座っていても立っていても本を読むことが多かったのですが,ここ数年はそれをやらなくなりました.というのも老眼乱視が急速に進行し,しっかりと眼鏡をかけなければ本を読むことができなくなってしまったのです.それで電車の中での読書は中止していたのですが,つい最近電子ブックリーダーを手に入れて読書を復活させました.買ったまま積読(つんどく)になっていた文庫本などの電子版を改めて買い直し,電子ブックリーダーで読み始めています.代表選手は塩野七生ローマ人の物語” です.

これが良いところは,調節可能なフロントライトがついているため,暗めの車内でも楽に字が読めること,字の大きさを自分で好きなように調節できること,その場で複数の辞書を引けること,電子的なしおりやアンダーラインを引けること,そして購入が瞬時に終わることです.私が買った最新機種のディスプレイの解像度はモノクロで 300 dpi あるので,初期のレーザープリンタと同じ細かさです.普通に印刷物を読む感覚で電子インクディスプレイ上で印刷物を読むことができます.液晶と異なって電子インクは消費電力が非常に少ないので,充電の頻度も非常に少なくて済みます.

また,著作権が切れた作品は,青空文庫などの活動によって非常に安価に購入することができますので,たとえば与謝野晶子訳の源氏物語や,吉川栄治訳の三国志などのように,著名な古典を非常に安価に電子書籍として取り込むことができます.

欠点は,電子版の書籍はまだ少量しか出版されていないこと.出版社や著者によっては電子出版に後ろ向きな方々もいます.従って必ずしも自分の読みたい本が電子版で読めるわけではありません.また,文庫や新書は電子ブックリーダーで読むのみちょうど良いのですが,大判の書籍は現在の電子ブックリーダーでは一頁を一画面に収めることはできないため,何らかの工夫が必要となります.もちろん画面を上下左右にスクロールすればよいのですが,その手間はばかになりません.

まだ使い始めたばかりですが,少し経験を積みたいと思います.


さて,簡素に済ませるなどと言って結構長文になってしまいました.昨年も天変地異や国際的な事件など,大きな出来事が続きました.世の中はなかなか平安という具合にはいきませんが,どうにかこうにかやっていこうと思っています.皆様も健康第一で一年をお過ごしください.

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