自然

2023/09/21

鳥といっしょに空を飛ぶ

久しぶりに投稿します.近況報告です.

いまだに真夏の暑さが続いています.草丈も 3m を越えるほどなので調整池の視界が効かず,鳥たちを見ることが難しいので,日々の散歩から遠ざかったままです.タカの渡りも見に行っておらず,今シーズンが終わりそうです.おかげで体が完全に鈍ってしまいました.間もなく健康診断なのに困ったな.何か言われそう.

なおかつ先週買った鳥の飛行に関する学術書を読み始めて,日本語訳の部分サンプルを作る作業にかかりきりになっており,ヒマさえあればキーボードとディスプレイに張り付いています.

ということで何のネタもないのですが,気晴らしに下のような動画を見ています.フランスのモン・サン=ミシェル上空を中・大型の鳥の群れとともにモーターグライダーで飛ぶ動画です.いろいろな種類の鳥たちが出てきますが,ガンの仲間が多いかな?中にはシノリガモ?やツルの仲間も出てきます.これらはいずれも野鳥ではなく飼育され訓練されている鳥たちのようで,グライダーの前席に座った人が手を伸ばして触れるほどの至近距離を飛んでいるのが興味深いです.

鳥の飛行性能を調べるのに,ハトを飼い馴らして風洞実験することが行われてきたのですが,これなら実際に上空での飛行性能を調べられるかもしれません.それにしてもよく馴れていますね.人に触られても平気です.

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2023/09/09

Refsort on Excel v2.50U released

Refsort on Excel は,Refsort/Ruby (直前の記事をご覧ください)を Microsoft Excel 上で使うためのインターフェースを提供するマクロ埋め込みワークシートです.

今日,さまざまなデータを整理分析するのに表計算ソフトウェアは欠かせないものになっていますが,そのワークシート上に書かれたリストに対して,簡便で直感的なインターフェースで Refsort/Ruby の並べ替え機能を提供します.

元来 Excel の内部では UTF-16 という Unicode の符号化が用いられており,多言語の文字を混在して同時に扱うことができます.しかしこれまでは私の知識不足,能力不足から,扱えるエンコーディングを Windows-31J (Shift_JIS) に限定して Refsort on Excel を提供してきました.

今回の改訂ではこの制約を転換し,UTF-8 という Unicode の符号化スキームに切り替えました.これにより Excel 内部の UTF-16 と整合性が取れて,世界中のさまざまな言語の文字を混在させたリストに対して辞書を参照した並べ替えが可能となりました.

例えば IOC List にはアクセント付きの文字や,ウムラウト,トレマなどを含む文字が多用されています.それらが命名者表記や生息域の地名などに出てくるのは当然ですが,標準英名に含まれている場合もあります.標準英名は並べ替えのキーとして使う場合も多いので特に注意が必要です.例えば Seicercus soror Alström's Warbler が代表的です.従来は US-ASCII や Windows-31J でエンコードされた辞書ファイルではウムラウトを直接扱えないため,ウムラウトのない小文字の o で代用していました.しかしこれはある種の近似を行っていることになり,並べ替え結果を再利用する際に支障が出てくる可能性があります.今回の改訂でそのような近似は必要なくなりました.

当然ながら,そのためには UTF-8 でエンコードされた辞書を使う必要があり,従来とは使う辞書の種類が異なることに注意する必要があります.これまで私が作成して提供している辞書は,日本鳥類目録,IOC List,日本種子植物リストの3種類ですが,いずれも UTF-8 でエンコードしたものも提供してきました.エンコーディングはこれらのファイル名の末尾に付けた接尾辞で区別できます.接尾辞が "u" のものが UTF-8 で,"w" のものが Windows-31J でエンコードされたものです.

あらためて UTF-8 でエンコードされた辞書のリストを示すと,

ファイル名 内容
jpblist_v70p5u.ref 日本鳥類目録改訂第7版
ioclist_v132u.ref IOC List v1.32 オリジナル版
ioclist_v132ju.ref IOC List v1.32 和名追加版
jplant056u.ref 日本の種子植物リスト 新エングラー順

となります.いずれも BOM なし,改行コードが LF のテキストファイルです.

今後,Refsort on Excel v2.50U 以降を使う場合には,辞書ファイルにこれら UTF-8 でエンコードされたものを指定するようにしてください.また利用する Refsort は最新の v3.77 以降が望ましいので,こちらもご注意ください.

使用例のスクリーンショットを示します.IOC List から標準英名にウムラウトが使われているものを集めて,標準英名をキーにして並べ替えを行ってみました.辞書ファイルのキーは第 1 フィールド,入力のキーも第 1 フィールドです.正しく並べ替えられていることがわかります.

Refsort_on_excel_v250u

今回の改訂でようやく UTF-8 を使えるようになったので,多様な言語で書かれたリストに対して Refsort を Excel 上で使えるようになったはずです.詳しい説明は,Refsort/Ruby v3.77 と同時にリリースしたユーザーズガイドの付録をご覧ください.

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Refsort/Ruby v3.77 released

辞書参照型ソーティング・フィルタ Refsort/Ruby (新しいほうから *1 *2 *3 *4 *5)の改訂版 v3.77 をリリースしました.今回の改訂内容は軽微なバグ修正と仕様の改善です.ただし同時に Refsort on Excel も改訂し,こちらは仕様を大きく変更しました.詳しくは次の記事をご覧ください.

今回の修正内容は以下の通りです.

  1. 辞書ファイルに埋め込みラベルが書かれていないときに,コマンドラインオプションでラベル出力を指定した場合の例外処理が不備でしたので,警告文を出力するとともにラベル出力をキャンセルするようにしました.
  2. コマンドラインオプションで -x (Excel mode) または -T(出力のフィールド区切り記号をタブにする)を指定すると同時に,ラベルのコメントも出力するよう,例えば M 1c と指定している場合は,ラベル本体とラベルのコメントをタブで区切るよう変更しました.これは Refsort on Excel での使い勝手を考慮したためです.

このスクリプトは最新の Ruby 3.22 で動作することを確認しています.

Refsort_v377_console

Refsort/Ruby とそれに関連するコンテンツのアーカイブを Microsoft One Drive に置いています.画面右側コラムの Archive の中の Refsort/Ruby Archive をクリックしていただくと,私の OneDrive 上に設けたライブラリが開きますので,そこから過去分も含めてファイルをダウンロードすることができます. Refsort 本体の refsort.rb は refsort_v377.rb というファイル名でアップロードされていますので,ダウンロード後に refsort.rb に変更するとよいでしょう.改行コードも CR/LF になっていますので,適宜変更してお使いください.エンコーディングは純粋な US-ASCII ですので,そのままでよいでしょう.

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2023/09/03

汗だくの里山散歩

9月に入ったというのに,南海上を熱帯低気圧が進行中で,その湿った空気が入ってきたので蒸し暑いことこの上ありません.

今日は家人に付き合って近くの里山の森を散歩.すぐに汗だくになってしまいましたが,生き物たちは確実に秋の準備を始めているようです.

今日は渡り途中かもしれないキビタキの成鳥と幼鳥に出くわしました.また森のあちこちでは,夏の終わりを告げるクズの花が咲いていると同時に,ツリガネニンジンセンニンソウなどの秋の花が咲き始めていました.

Ushikuforest_0022m

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早く涼しくなってほしい.

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2023/08/31

大型翼竜は飛べたのか?

暑かった 8 月は今日で終わり,あすからは暑い 9 月が始まります.もういい加減最高気温が 30 度を切ってほしいと思うのですが,今日も容赦なく 35 度を越えるようです.ただし明け方の気温はこのところ低くなりつつあり,25 度を切るようになってきましたので,もう少しの頑張りと信じたいです.

さて突然ですが大型の翼竜は飛べたのでしょうか?大型翼竜とは,プテラノドンケツァルコアトルスという,とてつもなく大きな翼を持った爬虫類たちのことです.

下の論文から引用した,ワタリアホウドリ (A),プテラノドン (B),ケツァルコアトルス (C) の平面形の比較図を示します.右下には縮尺をそろえた比較図 (D) がありますが,現生鳥類最大のワタリアホウドリと比べていかに巨大な動物たちだったかがわかります.

Witton MP, Habib MB (2010) On the Size and Flight Diversity of Giant Pterosaurs, the Use of Birds as Pterosaur Analogues and Comments on Pterosaur Flightlessness. PLoS ONE 5(11): e13982. doi:10.1371/journal.pone.0013982

Planforms_of_soaring_animals

プテラノドンの翼開長は 7-9 m もあるのですが,体重は 20 kg 程度しかなく,羽ばたき飛行するだけの筋肉はなかったので滑翔するだけだったという説が有力のようです.海上であればアホウドリミズナギドリのようにダイナミックソアリングによって長時間効率よく滑翔できたのではないか?という説もあります.

一方ケツァルコアトルスに至っては,論争はあるものの翼開長は 11-12 m はあったと言われています.体重についても論争があり,飛べるためには 70 kg が上限だという説と,いやいや現生鳥類からの類推は正しくなくて, 200 kg 程度はあったはずで,少なくとも滑翔は可能,羽ばたき飛行もできたのではないかという説もあります.

非常に面白いですね.で,このケツァルコアトルスを検索すると,大きな頭を持った巨大な翼竜が首をぴんと伸ばして飛んでいる想像図にたくさん出くわすのですが,これはダウト!

平面形からわかる通り首は非常に長く,その先端に大きな頭骨と嘴(くちばし)が付いています.ということは,この翼竜の重心は翼に働く空気力の中心(風圧中心)よりもだいぶ前に位置することになってしまい,これでは飛行の縦の安定性が取れません.前につんのめってしまいます.

何を言いたいかというと,縦の安定性を取るためには,ケツァルコアトルスは首を縮めて,サギ類のようにして飛んでいたはずなのです.さらにそのような姿勢でダイナミックソアリングができたかはかなり疑問.海面上の接地境界層はせいぜい 30 m 程度だと思うので,この巨体で境界層の外縁から水面すれすれまでの 30 m を頻繁に垂直方向に移動するのは難しかったのではないか?あるいは境界層外縁を超えて上空 100 m くらいまで上昇してから下降していたかも,しかしそれではダイナミックソアリングの効率はかなり低かったのではないか?

などと思っているところです.平面形が載っている論文を読み始めたところなので,何か追加・修正があればポストしたいと思います.

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2023/08/23

暑い雨が来る

酷暑がなかなか収まりません.例年だと 8 月下旬になれば朝晩は涼しくなって過ごし易くなるのですが,今年は連日の熱帯夜で体が休まる間がありません.

昨日あたりから,日本の南海上を移動中の熱帯低気圧から吹き込む暑く湿った空気がにわか雨を降らせています.今日は朝から断続的に雨.湿度が高くて非常に不快です.眼下の田んぼではそろそろ稲刈りが始まる頃なのですが,このように不安定な天気では農作業もままなりませんね.

Summerhome_aug2023_0007m

ときどきこんな感じで真っ黒な雲がやってきます.

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2023/08/10

日本鳥類目録第8版はさらに来年に延期

大変残念なお知らせです.

日本鳥類目録改訂第 8 版の出版は,第 7 版の出版からちょうど 10 年目の 2022 年に予定されていたのですが,コロナ禍による作業の遅れなどを理由に今年 2023 年 9 月に延期されていました.私は 11 年ぶりの改訂を楽しみにしており,新たな目録に基づいた Refsort/Ruby の辞書ファイル作成に向けて手ぐすね引いて待っていました.

しかし昨日 8 月 9 日,日本鳥学会目録編集委員会からのアナウンスがあり,諸作業が遅れていること, 10 月中に暫定リストを示して第 2 回パブリックコメントを募集する予定であることから,出版をさらに 1 年延ばして 2024 年 9 月とするそうです.

待っている身としては気が抜けちゃいましたが,とりあえず暫定リストの入手を試みたいと思います.

作業に携わっているのはそれぞれ自分の仕事を抱えた研究者の方々なので文句は言えませんが,目録の改訂頻度をせめて 3 年に 1 回とか,少なくとも 5 年に 1 回くらいにできないものかと思います.公的な資金や補助金を得て(準)専任者を雇ってもよいくらい重要な仕事だと思うのですが,いかがなものでしょうか?

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2023/08/09

なぜ「ゲリラ」雷雨と言うのか?

今日は長崎原爆の日.小学生のときの修学旅行で長崎の原爆資料館を見学したとき,人の手の骨がガラスと溶け合った遺物を見たのですが,これはその後何年にも渡ってかなり重症のトラウマとして心に残りました.今でもときどき高い空にプロペラ機の爆音を聞くと,原爆が落ちてくるのではないかと怖くなる時があります.

さて二つの台風が日本の近くにあって暑く湿った空気を送り込んでくるものですから,そこここに雲が湧いてときどきザっと雨が降っては止むということを繰り返しています.ちょうどシンガポールにいるようなものです.

Summerhome_aug2023_0006m

メディアではこれを「ゲリラ」雷雨と呼んでいるようですが,なぜ「ゲリラ」などという戦争用語を使うのでしょうか?ウェザーニューズの Web サイトの説明によれば,これは気象用語ではなく,明確な定義づけもないとのことです.予測困難で,積乱雲による突発的,局地的豪雨を指すとされているそうです.今日すでに 10 回以上もテレビのニュースで聞きました.報道部門のライターが好むのは,自分たちがゲリラによって被害を受けているという連想語感が好まれるからでしょう.

ゲリラとは不正規戦闘を行う民兵や反政府組織のことで,スペイン語の guerra(戦争)から派生し,スペイン独立戦争時に使われだした言葉のようです.しかしこの戦術自体は古代から存在していました.強大な正規軍に対抗するための弱者の戦術の一つで,現代ではテロ組織が行う自爆テロなども包含します.

私はこういう戦争用語を日常用語に使うのは好ましくないと思います.せっかく「驟雨(しゅうう)」という美しくかつ気象用語として定義された日本語があるのですからこれを使うか,昔ながらの「にわか雨」で十分だと思います.英語では昔から単純に shower,にわか雪の場合は flurry です.

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2023/08/06

雲が湧いて驟雨

沖縄・奄美地方を長時間痛めつけている台風の影響が関東地方でも出てきました.昨日あたりから湿った南風が吹いて雲が湧くようになり,今日は午前中に北上してきた積乱雲によって激しいにわか雨に見舞われました.30 mm/h 程度の雨が 30 分ほど続いたので,総雨量は 15 mm 程度かな?我が家の前の道路は川のようになっていました.

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ここ 1 週間は雨が降っておらず,毎日の高温で草木が水を欲しがっていたようなので,ちょうどよい水分補給にはなったのですが,雷で停電するようになるのは勘弁してほしいと思います.

北海道では秋雨前線が活発で大雨が降っているようなので,台風通過後にこれが下がってくるようだと,意外に秋の訪れは早いかもしれません.

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2023/08/04

ハヤブサは大気密度で押し返される

今日も酷暑なので朝からエアコンの効いた部屋に引きこもっています.昨日ポストしたハヤブサの降下速度に関する記事を読み返してみて,あらためて粗い近似での推定しか行っていないことに気づき,もう少し精度の良い計算をしようと思い立ちました.ヒマなので.

高空から自由落下する質点の運動方程式を解けばよいのですが,残念ながら空気の抵抗は速度の 2 乗に比例するので非線形の微分方程式になります.かつ昨日の記事では定数としていた重力加速度や空気密度は高度の関数なので,これらの値も降下するにしたがって変化していきます.

解析的に解くことは諦めて数値的に積分することにしました.標準大気表を用いて Excel 上で落下後 0.05 秒ごとの重力加速度と空気の抗力から加速度を求め,それを積分して速度,さらにそれを積分して高度が分かります.循環参照が生じるのを避けて計算は 1 次精度の陽解法としましたが,時間刻みを小さくとっているので誤差は十分に小さいと思います.そして結果をグラフにしてみると意外なことがわかりました.

Falcon_alt_vel

グラフの横軸は降下開始からの時間,高度は灰色の曲線でその目盛は左の縦軸,速度はオレンジの曲線で右の縦軸が目盛です.降下する速度の符号を負にとっています.

ハヤブサは高度 5,200 m から降下しながら速度を増していくのですが,終端速度というものは存在せず,降下開始から 25.9 秒後に高度 3,050 m で最高速度 116.7 m/s に達した後は,むしろ減速しながら降下していくのです.地表に到達したときの速度は 103 m/s にまで減速しています.

こうなるのは降下するにつれて空気の密度がどんどん大きくなっていくからです.横軸を降下時間にとった空気密度のグラフを示しますが,これを見ると地表付近では降下開始時より 7 割も大きくなっているのです.空気抵抗は空気密度に比例するので,これでは減速するのは当然です.

Air_density

空気密度や重力加速度が一定であれば,非線形ながらこの微分方程式には解析解があって,速度は時間に関する双極正接 tanh の形になります.時間を大きくすれば速度は一定値に漸近し,終端速度が求まります.しかし空気密度が上記のように大きく変化するので,これは正しいとは言えなくなります.

ということで,ハヤブサは降下当初は薄い空気の中を勢いよく加速していくのですが,やがて濃くなっていく空気に押し返されて減速を始める,それもまだかなり高い 3,000 m でそうなるということが分かりました.昨日は恐るべしハヤブサと思ったのですが,今日は恐るべし大気という感じです.高空からスカイダイヴする人は経験上知っているのではないかな?

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